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二話:おじちゃんに見透かされる

俺の手元に骨の形に近い外見の剣を召喚してから、4年が経過した。


どうやら、その時から俺は【死霊魔術】の使い手となったらしい。


ここ、フェクモという名の南の大陸では北大陸と違って、【魔術】の使用が一切出来ないようになっているとおじちゃんから聞いた。なんでか超偉~~い神様、【天頂神アーズリア=イロイン】の力により、ここではそういう枷が施されているらしい。


もちろん、魔術すべてを南大陸に生きたり、住んだりしている住民がまったく出来ないようになっているのと引き換えに、天頂神はこの大陸内でさっきみたいなバケモノ、えっと...【世界獣】って呼ばれてるんだっけ?がまったく入ってこれたり、出現したりすることが出来ないように【世界獣】の出現方法である【樹界脈】が一切この大地へ入れないように結界を張り巡らせてくれたみたいなんだが……


それはどういう訳か、紅色の大型狼の形をした【世界獣】が4年前の俺を襲ってきた。

やっぱり、俺が【死霊魔術使い】として力を目覚めてしまったのと関連性があるなぁ、どう考えても。


でも、なんで【樹界脈】が一切届いてないこの南大陸で【世界獣】が現れたのかという謎が深まると同時に、なんで『魔術全般において全ての使用が不可能となっているこの大陸』で。俺だけが死霊魔術を使えるようになるのかという事実の方がもっと重要な疑問だと思うけどなぁ。


だが、原因がどうであれ、こうして俺は死霊魔術使いとなって、今日も毎日欠かさずにおじちゃんに隠れて、食料調達のための狩りへと単独で赴いたついでに、【死霊魔術】の練習をしている最中だ。


「さあ………【狩りの時間】だ」


それも、食料を調達するための狩りではなく、ただ魔術の練習をするための……


「まずは熊か虎かを探してあれをー」


「ぐらおおおおおーーーーーー!!」

きた!


いつも通りに、アイツらの沢山いそうな【丘の向こう】へ赴いてきたから当然と言えば当然なんだがな。


「ぐらおおーーーーひやうーーん!?」

俺に飛び掛かってきた虎の噛みを寸前のところでかわして、横から鋭い飛び蹴りを喰らわせた。


実は、【死の壁】を発動させたら一瞬で襲い掛かってきた虎を跡形もなく消滅させられたけど、蹴ってやったのはただ自分の身体能力をトレーニングするためだった。


ゴドー―!

「ひゅ~ん……グルル...」


遠くへ吹き飛ばされた虎は痛みからか、呻きながらも体勢を整えながら歯向かうつもりでいるけど、それに対して、俺はただ、


ビュー―ン!


【死の霧】にて、虎のすぐ後ろで瞬間移動した俺は手元に【ボーヌソード】を顕現させると、


グチャーーーーー!!

【死霊魔術】の基本的能力というだけあって、骨の剣の攻撃力が凄まじいので容赦なく両断した。


やっぱり、4年前で初めてこの力を手に入れた日で使ったこの最初の魔技マジック・アーツである【ボーヌソード】は死霊魔術使いとしての手前の武器みたいなものなのだな。


「よし!」


それから、俺は虎の残骸を見下ろし、手のひらを虎のいる下方に向けて無詠唱で真っ黒い【死の雫】を指先と手のひらの中心から滴らせた。


「グル!グルル――グラオウーーー!!」

すると、たちまち、切断された身体の断面からブクブクと泡立った肉の塊が生え出てきて、両断した断面を接続していく。漆黒な色に姿を変えた虎は起き上がり、俺の方を見て確認すると、


「ひゃう~~んひゅ~~~ん……」


すぐさま俺に甘えてくるように、頭をぐりぐりさせてきた懐いてきた。


【死体蘇生(ゾンビー化)】の魔技マジック・アーツだ。


「いい子ね。じゃ、あんたが必要な時にまたも呼び寄せるから今はここへ入ってくれ」

そう言ってやると、大型の【異空間収納】を召喚し、こいつを中へ入るよう命令した。


「ひゅ~~ん!ぐる~~」

渋々といったふうに入っていったゾンビー化した虎。


「じゃ、次に練習する予定の魔技マジック・アーツは……」


よし!決めた!


「よっとー」


これもまた無詠唱だ。

小さな魔法陣が右手のひらに一瞬だけで発現したかと思うと、すぐさま消えた。

それと引き換えに、俺の右手には元々ダークチョコな色だった俺の肌を更に漆黒までに染め上げた極黒の指先が出来上がった。


その漆黒の5本の指先には小さく燃えるような赤黒くて淡い光に包まれている。触れたら絶対に死ぬというような恐ろしい光景を見る者に感じさせる程の物だ。


「うん、これもばっちりだな!」


これで200回目か?いつもやってたヤツだから数えるのを忘れってきた。今回も【呪いの指突】をまたも一瞬のタイムラグもせずに苦も無く無詠唱で発動出来たという実感を確かめると、すぐさま魔技マジック・アーツを解除した。


今日になってからもう4年間も死霊魔術を習ってきた経験はあるが、実はさっきの【死体蘇生(ゾンビー化)】と【呪いの指突】の2種類の【魔技マジック・アーツ】は本当に経験と訓練をたくさん積んだものにしか習得できない上級のものらしい。


それを知るようになっても、この【死の魔道書】があるからだ。

「はーーあっ!」

シューーン!


【死の魔道書】を【異空間収納】から召喚し、手元に持つ。

【あの声】がある日、これを俺にくれというようなことを言っていたので、即刻これをあの日でどこからともなく現れてきて俺の所有物になった。


「この書のお陰で、色んな死霊魔術の情報と詠唱法が載せられていてたくさん習得できたし、本当に便利なものだ」

まあ、でも今は練習のし過ぎで殆どを無詠唱で使用できるようになったけどね。


で、あれっきりで【世界獣】が二度とまた俺の前へ現れて来たりはしないので、実力の底までを測れる強力な相手もないまま、動物を狩ることでで様々な魔術を発動させ練習と訓練を繰り返してきた。


「さあ、次はまたも基本の【ボーヌソード】と行くかー!」


こうしてまたも練習に励んでいく俺だった。


【聖神】の独りである【天頂神】の力の影響をまったく受けてないこの【死霊魔術】だから使えるようになったんだな、俺。普通の【四元素魔術】だったら絶対に使えないはずだ、ここの南大陸で。


………………


……


もう夕方になった。


家にて、俺とおじちゃんは静かに黙々と晩飯を取っている。


リビングの木製テーブルで席についた俺とおじちゃんはやっと最後の一口で【デジラス】(熊の肉)を呑み込むと、いきなり何の前触れもなく、俺に向かってこう切り出してきた、


「で、今日の練習も順調だったなぁ~!【死霊魔術】の」


「...え?」


背筋が凍り付いた。


鏡があれば、きっと今の俺の顔は引きつったようになり、顔面蒼白なのだろう。


「ごくっ」

冷や汗を全身に滲み出せながら、緊張で心臓が鷲掴みされるような感覚を覚えながらも、俺は慎重にこう答えた、


「何の事だ、おじちゃん?」

白を切り通すつもりでいる俺はそれだけ言って誤魔化そうとする。


「誤魔化したって無駄だ、オケウェー。一体何年もお前と一緒に住んできたと思ってんだー?今は引退してんだけど、昔からこのオレは【オールグリン王国】きっての一流の捜査官だったんだぞ?人を見る目がある」


「くーっ!」


失念していた!

いくら森の奥まで行って練習を4年間も重ねてきたとはいえ、帰る時の俺の表情、仕草と一からどこまでに振る舞いにおけるすべての微細な変化を感じ取ったんだろう!


それで、俺が死霊魔術使いになったという事実を察することができたということなんだろう……


歴史書で、【死霊魔術】の歴史とそれが禁じられるようになった理由も書かれていたから、誰に聞いてもこれが忌避とされることぐらい何百年も前から知れ渡ってきた常識だ。


なんでも、【邪神ヴェルグニール】の肺臓から直結な関連性が濃いとされてる【死の息吹】を【力のに源】としていることから【邪なる魔術】とか【諸悪の根源】としてのレッテルを貼られた過去があるとかなんとか。


くそ!こうなったらもっと自然に振る舞って、気を付けて無知を装うような顔色を取り繕うべきだった!


「なんで知ってるのかって顔してんだな、お前。そりゃ、ここは南大陸で魔術全般が使用できないところなのだぞ?でもお前の態度をずっと見てきたらなにか魔術に関連する練習でもしていたのかって顔してたんだから、もしそうでなった場合で、聖神である天頂神の影響をまったく受けてない【死霊魔術】の使い手になったって推測した方が早いかと思うぜー?」


くっ!お、おしゃる通りでぐうの音でない……。


「大丈夫だよ、オケウェー。オレらは家族だろうー?誰にもお前の事を報告するつもりもないし、考えたこともないんだ」


耳を疑いそうな言葉をおじちゃんが言ってくれた。


「で、でも!俺はもう昔の俺じゃないはずだよ、おじちゃん!【あの日】から俺はこんな気味の悪いバケモノみたいな力を手に入れたんだよー!それも気持ち悪いってだけで個人的に済まされていいものではなくて、よりによって使い手が重罪扱いになっている【死霊魔術】でー!」


「もういい!」

「!」


もう耐えられないとばかりに、俺の手の上に自分の手を重ねてきた伯父ちゃん、


「お前が忌避とされる【死霊魔術】使いになっても、結局のところお前はお前だろう?てめえの在り方や心と性根がそんなもんで変えられたり腐ったりするはずはねえし、例えそうなってもばっしと叩いて厚生させるまでのこと」


「おじちゃん……」


「まあ、万が一にもお前がその力を使って、大陸一の極悪人になったら話が変わるが今はそういうことをするつもりはねえだろう?あぁー!?」


「も、もちろんだ!この力を手に入れられても何かの手違いがあっただけかもしれないし、それに天頂神や他の神々様も尊敬したり畏怖を感じたりしてるし、たとえ俺がおじちゃんとしか人生を過ごしてこなかったからといって、別に倫理観が全くないわけじゃないし、そんなことは絶対にしないよ!ただ、こういう力を与えられたからには使いこなすために練習していくしかないって思っただけでー」


こればかりは本心なんだ。実際に誰か人を殺してそいつをゾンビー化させたこともないしなぁ。邪悪なる死霊魔術使いになるつもりもないし。


しかし、今までは狩りの一環で動物を何十匹かゾンビー化させ、使役したことがあるんだけども(但し、すべてを異空間収納へ仕舞ったがな)。


「よかろう、はっはっはあ!そうこなくちゃーな!お前はそういう堂々としてればいいんだよ、堂々とー!それに……あの、なんだっけ...」


「うん?『それに』、とは?」


「例え、お前にその力を悪い方向で使ったりはしないって姿勢を見せていても、それをよく思わない者もいるだろう。だから、俺に隠してきたように、これからも引き続き他人に対しても隠すつもりでいろ!いいよな...?」


「そのつもりだよ、おじちゃん!でも今はどこへも行つもりはないよ?俺はただここでおじちゃんと静かに二人だけの暮らしをしていきたいだけだ」

こればかりは本心だ。


今年は49歳となったばかりのおじちゃんがなんで昔に王国きっての優れた【治安維持隊】の捜査官って職務を引退してここの森へと隠居生活を始めたのか詳細のことを聞いたことはなかった。


だけど、いくらここの南大陸で【世界獣】が殆ど(というのは4年前にいきなり俺の前に現れやがったからなんだけど)出現しないという保障があって護衛が必要ないといっても、俺は自分を今日まで教育を施してくれたり、育ててくれたりしてきた恩人であるおじちゃんのことを独りには絶対にしないと誓おう。


だって、おじちゃんがこの世で生きれる期間もそうそう長く残ってはいないんだ。


せめて、『その時になるまでに』、側にいてやってもいいんじゃないか!


でも、その甘い考えも夜遅くで捨てなければならない程の絶望的な事態が発展した!


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