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一話:力の覚醒

俺の名はオケウェー・ガランクレッドだ。

11歳になったばかりの俺は実質的に育ての親とも呼べるおじちゃんと一緒にここの森の奥に住んでいる者。


正確にいうと、【シンドレム森林地帯】の中心部に。


詳しく話すと、【シンドレム森林地帯】というここは、南大陸…らしい(というのは実際にそれ以外の大陸へとまだ行ったことがないから本当かどうか分からないけど)ところに位置する大規模な森のこと。


おじちゃんの家に地図があって、この森の位置から近くにある【オールグリン王国】の領土が乗っている地域にしか描かれてないが、確かにここの森から上の北方は険しい山岳地帯が示されていて、それから上へ行くと、【カラーン海】と書かれている海域のことが地図で載せられている。


あそこから更に上へ行けば、おじちゃんに教えてもらった【北大陸】の海岸沿いがあるだろう。


【ギャラールホルーツ】とも呼ばれているその北大陸のことなんだけど、どうやらおじちゃんから地政学、地理学、歴史や人類学をちょっとだけ学んできた際に、どうやら北大陸には俺達と違って、肌が白いもしくは薄い色素してる人ばかりが住んでいる大地らしい。


自分の手元に視線を下げると、


「確かに黒いなぁ、俺……」

まるで焼け焦げた肉かのようだ。


おじちゃんも俺と同じで髪がチリチリの形をしているけれど、肌色は褐色止まりで俺より薄いしな。

まあ、実際に俺のはそこまで漆黒と言わずにダークチョコ?なる食べ物にそっくりだと言ったおじちゃんだけど。


それに、おじちゃんによると俺よりもっと漆黒な肌の人は他にも南大陸にいるし、ここでは普通らしい。


「でも、今まではおじちゃんとしか過ごしてこなかったけど、俺達よりも肌が真っ白い人のことが本当にいるとか、まったく想像できないな」


仮にいるとしても、きっと幽霊みたいな不気味な顔して気持ち悪い病気っぽい人ばかりだろうな……

実際に【そういう幽霊】も見たことあるしな。


まあ、偏見なんだろうけど……


なにせ、実際に見てみないとどんなものに見えるか分かんないしなぁ。


『此処へ……』


「ー!?」


さっき頭の中に聞こえてきた声がまたも脳内で響いてきたので、歩きながらでしていた考え事を中断された。


「ここは?」

ふと目を凝らしてみると、前方には周りにある木々と別格に大きな大樹があり、それが神秘的な黄金色で光っているようだ。


カチャ―カチャ―

足元の葉っぱと落下した小枝を踏んで音を鳴らしながら、そこへと近づいていく。

すると、


ビョオオオオオオオーーーーーーーーーーンンン!!!

「なにっ!?」


一体何が起こったんだー!?

いきなり耳鳴りな爆音が炸裂したかと思うと、今度は、


シュルシュッルルルルーーー!

「!?おいおいおい~!これって何なんだよーー!?」


どういうわけか、突如として触手みたいな動きしている大樹の枝が急速に延ばされてきて、俺の四肢すべてを捉えにきた!


ぎぎぎぎぎ……

「くーっ!」


きつく縛り付けられている俺の四肢。


「痛ってぇなーこのっ!」

辛くて耐えられないほどの痛みを感じ始めたのでどうにか抵抗して振りほどこうとしたけど、無理だった。


ぎしぎしぎしぎしぎしぎし……

逆に、自分の抵抗に反抗してくるようにもっときつく縛り付けてきたー!


「この野郎ーー!」


くそ!せめて魔術さえ使えれば一瞬で燃やし尽くせたというのにーー!

で、でも仕方ないよねーー!

だって!


「ここはーっぐっ!……南大陸であるフェクモでーっん!【魔力】が宿ってもぉーお!それを行使できる【魔術】として使用できないんだっけーっ?」


くそ、何故か自分を奮い立たせようとして声に出して事実を述べようとしたら、今度はあろうことかいきなり首元へ別の枝が延ばされてきて締め付けに来やがった!


『もうすぐだ。耐え忍べ』

またも謎な声が頭に響いてくると、次にはーーーー!?


「ううううおおおおおおおおーーーーーーーー!!」


なんだなんだなんだー!!今度は何何故か全身の血と生命力が放出されていくかのように宙の遠くへと打ち上げられていくような感覚を覚える。


否ー!


実際には俺の身体は未だにここで四肢を縛り付けられていて身動きが取れないままなのだから、正確言いうとー!


「うおおおおおおおおおおおぉーーーーー!!」


そう!身体の血流全体が信じられない程な循環速度で身体中を巡っていて、俺を恐ろしいほどに高揚した感覚にさせるからだ。


「ぎっ!」


なんでか身体中が爆発しちゃいそうな感覚を覚えると同時に、目を向けてみると俺を縛っている最中の枝たちもなんでか黄金色で光っていて俺から何かを吸収するがごとく、別の色の漆黒の液体を俺の身体を拘束している先端の枝から抜き出していったようにここから遠ざかっていく様子だ。


「ぐっ!もう意識がっ……」


それから凄い倦怠感を覚える俺は成す術もなく、意識を失うのであった。


「お…おじ………ちゃ…」


……………


……



ん?


「うぅぅぅ……」

それからどれほどの時間が経つか分からなかったが、さっきいた場所で目を覚ました。


「え?」

今度、どこを見回していてもさっきあった大樹はどこにもなかった。


「一体何だったんだ、さっきのあれは...?」

もしかしてただの悪い夢か?


なんか、まるでここにいると何かの毒っぽい空気を吸っちまっていて、それで気絶させられ悪夢を見せられたってことだったのかな?


考えれば考えるほどますます訳が分からない出来事だったので、まあ、今は無事だと確認できただけでありがたいと思うべきだよね、うん!


というか、【あの声】が俺をここまで呼び寄せてきた理由って、ただ俺をあんな気持ち悪い樹のバケモノで拷問してくる悪夢を見せるためだったのかー!?


だとしたら、なんか損した感じだなぁ、くそ!

てっきり森で発見される前の俺の過去について何か明かしてくれるのかと思ってたのに、とんだ無駄足をさせてくれたものだ!


……


不満、怒りと疑問を頭で浮かべるばかりいても仕方ないので、ずっと頭に響いてきた【あの声】も聞こえてこなくなったために、家へ帰ることを決めた俺。


もう沢山だ!


次にまたも【あの声】が頭ん中にうるさく入り込んでも絶対無視するからなっ!

さすがにあんな最悪な体験をさせられたからにはもう懲り懲りだ、こん畜生!


ターッ!ターッ!


うん?


あれ?なんかさっきより脚の動きが何倍か軽くなってきたような気がしないでもー?


「なに?」


そう。改めて自分の身体の体内全ての感覚と器官の働きに意識を集中してみると、なんでか……息吹?というような存在を全身に駆け巡っているかのような不思議な気分を感じる。


「ふーはアぁ~~!」

息を吸い込んで吐き出してみると、


!?

微弱ながら、確かに何かが口元から漏れ出ていくのが見えた。


「漆黒の気球みたいだ……」


それに、よくよく身体に感じ取った違和感が強くなっていくのを自覚すると、


「はあーーーーー!」

試しに、空気を長い間で吸い込んでから吐き出してみると、


フシュウウウウウウウウウゥゥーーーーーーー!


「ーー!?」


何だあれーーー!?


まるで黒い霧でも吐き出されたかのように、周囲へと浮上してきたは早い速度で消えて霧散していく。


『口に出さずで、心の中だけでこう唱えよ、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】』


ーー!?なっ!?また【あの声】だ!


「おいー!悪夢を見せてきやがったばかりなのに、今度はどの顔下げて俺にまたもちょっかい出してきたんだー!?」


さっきのことにまだ根に持って怒っている俺へ、


「唱えよ、そうすれば、汝の中に真の力が発現したり、【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸は、腕なりえぬ剣となりて我が手元に形作られよー!】」


「何言ってるか分かんないけど、最後に口走ったあれを俺に唱えさせようとしたいんなら断る」

今度、またもいう事聞いたら何かされるか分かったものじゃないからね。


さっきので懲りたし……


「グルルルルーー!グルローーーー!!」

「ーーなに!?」


何だと唸り声と動物っぽい吠えが聞こえてきたら、音のする方向へと視線を移動させると、


「グルルローーロオオオオオーーー!」

小走りでこちらへと襲い掛かってきた通常よりも格段と大きな狼2二匹が見えた!


おいおいおい、何だったんだよ―畜生!

狼は確かにここが生息地ではなく、もっと海岸沿いにたむろしているものだとおじちゃんが言ってくれた。


たとえ南下してきてもあそこまで大きくて紅色はしてないだろう!

つまり、あれは本で読んだことのある【世界獣】だ!


『だから唱えよ。【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我が知るよ白の骸はー】』

「ああ、もう!分かったよ、唱えればいいだろう、唱えれば!」


恐らくそうしないとあの魔物2匹を撃退できないだろう。

なら!やることは一つしかない!


【我の元に死の息吹よ、集え、汝の亡骸を目する我ー】

くー!間に合わない!


心の中だけでさっき言われた通りの詠唱を最後まで済ませようとしたけど、もう至近距離まで近づいてきた2匹の狼...いや【世界獣】がいるんだ!


だったらーー!


「やあああぁぁーーー!」


一か八か、俺はさっき感じ取れるようになった体内に宿ったばかりの【黒い霧】を手のひらに集束していく想像を集中しながら思い浮かべてみると、


バシャー―――!!


「グーーラオオ――オ!!グルギギギギ………ひゅぐっ~」


手元に何かが握られているのを感じならも、集中して一匹目を上段切りで振り下ろし、頭部から深々と切りつけた! それで堅い皮膚という手ごたえを感じならもそれなりに深い傷を負わせたみたいで、

俺の得物がこいつの脳みそにまで深く刃を届かせた感じがした。


「ギギ………ギュク…………」

こめかみに【刃】を深くまで潜り込ませた俺は抜き取ると、


「一匹を撃滅!次!」

「グラオオオォーーーー!」


仲間が頭部から深々と切りつけられても臆することなく、またも俺に飛び掛かってくるが、

「それー!」


つられて、俺も跳躍して空中でヤツをこの【刃】で横切りに3回も連続して切り刻み、そのたびにヤツの身体中に出血がとめどなく溢れてきた。


「しまいだー!これを喰らいやがれーー!」

バッシャーーーーーーーー!!

グチューー!


………

今度は本当に終わった。


その場で、息をしているものがいるとすれば、俺一人だろう。

二匹の大きな紅色の狼の残骸を見下ろしていると、なんか戦いの最中で血流が盛んになって無我夢中で我を失っていたっぽいんだけどちゃんと倒せたみたいで良かった……


改めてみると、2匹の【世界獣】を初めて見てしまった俺が討伐できたかという信じられない光景を目にすると、なんでか気分が高揚する感じ。


そう。それが出来ても、すべてはこれがあったからだ。


見下ろしていると、俺の右手には白い骨の形に近い剣が握られているからだ。


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