十五話:肉弾戦、そして芽生えゆく新たなる淡い恋心(それとも恋慕?)
オードリーの視点:
「へいーーっ!やー!せいー!はいやーー!それー!」
ズシャーーーーーーーー!!ズシュウウウーーーーーーーーーー!!
タターー!!!
もう~!一体なんなの、あいつ!
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!ズシャーーーーーーーー!!
タタ―!タタタ――!
やだ!またあの炎と雷の混じった一線の切り込み衝撃波が私を両断しようと翔けてきた!これで何度目になって避けてきたか数えきれないわよー!
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!ズシャーーーーーーーー!!
タタタターーー!!タターー!!
ど、どうしてなのーー!?
ズシャーーーーーーーー!!
タターー!タ!
私がさっき、あんなに猛攻をしかけていた【災乱弾五円陣撃(ファイブサークルズ・オブ・カラメィーティシャース・ブーレット)】でちょこまかと逃げ回っていた彼はそろそろ疲れてきて足元も覚束なくなってもいい頃合いなのに、どうしてーー!?
ズシャーーーーーーーー!!ズシュウウウーーーーーーーーーー!!!
タタターー!
み、見誤ったわ!さっきは【災乱弾五円陣撃】を使う前にも彼の事を侮りすぎて【中型氷弾】だけで百発以上か撃ってて彼の反応とか苦戦して苦しいところをみて遊び過ぎた!
その所為で今はあまり【空中浮遊】を発動する際の【聖魔力】が惜しくて温存する必要があって、空も飛びかけての回避のバリエーションを発揮できないわ!
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!!
タターー!
「ちぇーー!」
私の判断ミスと驕りに、今はただただ彼の精練魔剣から放たれてきたあの切り裂きの衝撃波をここの舞台上の床で駆けまわったり、軽く跳躍していったり程度の回避行動しか出来なくなっちゃった!
それにーー!
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!!ズシャーーーーーーーー!!
タタ!
どうしてー!?
どうしてあれほどの凄い【第3階梯の火炎魔術】を使ったばかりなのに、今はピンピンとあの【魔剣技】を……20回以上も連発して放てるのーー?
【炎霧の柱】を使用したばかりの彼の【聖魔力】が底をつきかけていても不思議じゃないのに、どうして未だに止めどなく【魔剣技】を打ちまくっていられるのーー!?あ、明らかに異常よ、あいつー!
ズシャアーーーーー!!
タタ!
「もうー!」
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!ズシャアーーーーー!!
タタタタ!
「~~もう!」
ズシャアーーーーー!!ズシュウウウーーーーーーーーーー!!
タタタタ!タタ―!
「~~もう!!これくらいにしてよ、オケウェーーーーーー!!」
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!
「なーーー!?」
こうなったら、避けることをせずに攻撃すべてを潜る抜き、【至近距離】での【肉弾戦】に持っていくだけのことよーー!
ベネには悪いかもしれないけれど、今は私の意地を彼に見せつける瞬間よーー!
この決闘にもしもベネに最後で頼ることがあったら、そう!『これくらいよ』ーー!
「やああああーーーーーー!!」
「ーー!?」
私が彼の剣から放たれてきた【魔剣技】の数々をを潜り抜けながら真っ直ぐに彼のいる位置へ走っていくと、オケウェーの驚いた顔を確認。それもそのはずよ!だってー!
ビキー!ビキー!ビキキキーー!!
私のベネの銃口から、さっきのと違う文様がつけられている魔法陣が出来上がった次に、
頑丈な氷の円形型の盾が形成されてるからよー!
………………………………
………………
オケウェーの視点:
「そ、それはーー!」
ちょっと面食らった俺!
避けるばかりじゃ状況を打破できないと判断しただろうオードリーが俺の方へ接近してくるのはそこまで驚くべきことじゃない。
もっとびっくりしたと言うのは、
ビキー!ビキー!ビキキキーー!!
そう!彼女の銃口から氷の盾ができあがったことに、だ!
「やああーーー!【氷盾魔滅防】!!」
こちらに走りかけてきながら銃口を向けられたままのそっちからは頑丈そうな円形型の【氷盾】が発生し、盾全体の表面からは刺々しい【氷性の磔】と【凍っている茨】がついていて、彼女への敵対攻撃を阻んでいる様子だ。
ズシュウウウーーーーカチーーン!ズシャアーーーカチャーーン!
「くー!」
どうやら、俺がそちらに向けて【炎撃斬雷波】を依然として放ち続けていてもあの【氷盾】が盾としての役割を果たしたようで、俺の【魔剣技】による何線の切り裂き衝撃波すべてを悉く消滅させているようだ。
やっぱり、ただの精練魔剣による【魔剣技】だけじゃあの【精霊魔術】の類であろう【氷盾】を上回れるような威力は出せないかぁー!
「これでも受けなさい、黒色変態オケウェーー!」
もう既に懐にまで到達してきたオードリーだけどー
「うかつだったなー!確かに【魔剣技】だけじゃあんたの【氷盾】を破れないだろう!だが、俺の【聖魔力】が直接のせられてるこの【精練魔剣】の刀身直々に切りつけられては流石に剣身自体は折れさせることはできないはず!よってーーー」
あの【氷盾】の頑丈そうな表面が弱まるまで何度かの剣戟でじわじわと削り破って切り刻んでいくだけのことだ!
「いいえ、オケウェー?うかつなのはあんたの方なのよー?」
「なにー?」
シュウウウーーーーーーーーー!!
「わおーーお!?」
一瞬のことだった。
俺のすぐ横側へと移動したオードリーは、銃口から張り付いたままに展開していた【氷盾】を何の前触れもなく解除したかと思うと、【氷の拳銃】そのものを手元から消して(おそらくその【武器化した精霊】を仕舞いこんだ)それからいきなり鋭くて素早い上段蹴りを喰らわせようとしてきたんだ!
「あぶなー!」
咄嗟の事に危険を感じた俺はすぐさま後ろへと飛び退った。続いて、俺の元居た位置じゃ既に空を切った彼女の切り上げのような鋭利そうな蹴りが見えて、そして息つく暇もなくまたもこっちに向かって敏捷性抜群の走行を完成し、またも目と鼻の先に近づいてきたオードリーにーーー!
シュウウウーーーーーーーーー!!
「ーーーくそ!」
ぎりぎりで頭を後方へとずらして回避できたけど、髪の毛の何本かが飛び散ってった!
早すぎて、脚を上げたり下げたりする際の彼女の下半身に見えるはずのパンツもまったく見えない!ってなに戦いの最中に不埒なこと考えんだ、俺ー!
「こーこの!舐めるな―――!」
反撃とばかりに、今度は俺からこの【精練魔剣】を使っての迎撃を決断した!
ズッシャーーーーーーーーー!!
「ちぇーーっ!」
俺からの容赦ない切り込みに、流石のオードリーも半歩後ろへとバックフリップして回避したんだが、
「あんたこそ私の方を甘く見ないでーー!」
着地したと同時に、直ぐにその有り余る瞬発力で以って、またもバネ仕掛けのように近くまで接近された俺が彼女からの蹴りを迎え撃つべく剣を叩く上げるけどーー
「お生憎様のことに、狙いはこっちよー!」
ゴドー――!!
「なーー!」
そう。
彼女が今回放ってきたのはまたもの上段蹴りじゃなくて、全身を地面に伏せたままに下段の横薙ぎ蹴りをかましてきて、俺の身体の軸に当たる両脚を切断するかのごとく転倒させて、俺をここの舞台の地面にまで落としやがったーーー!
「まずい!」
「終わりよー!」
直ぐに起き上がろうとするが、一歩のところ遅れて地面から瞬発力を活かしてのバネ仕掛けっぽい軽い跳躍を決め込んだオードリーがその片脚だけを持ち上げ地面に伏したままの俺めがけて振り下ろしてきたーーーーーー!!
「―ーーーーぬっ!」
バコーーーーーーーー!!
「えー!?」
いきなり、目を見開くオードリー。
それもそのはず!
「肉弾戦による戦い方だけがそっちの専売特許じゃないってことをー!俺が教えてやる!」
最初はまさかオードリーまで俺みたいに身体能力までそんなに高くないと侮ってしまったけど、蹴られようとした最初の時はちょっとびっくりしたけど、どうやら彼女も俺みたいに素手だけの白兵戦もできると分かったから、こちらも手加減してやる必要がなくなった!
彼女の振り下ろしてきた右脚を俺が一本の腕だけで受けて止めて、不敵な表情を彼女に見せながら、
「どりゃーーー!」
ゴドーーーーーー!!
力づくで受けて止めてる方の曲がったままの腕をそのまま【聖魔力】の集積で以って、振り上げたーー!
「きゃーー!……く!こ、この~~!調子に乗るな、チョコ南人オケウェーーーーー!!」
はじかれたままにして前方へと吹っ飛ばされたオードリーが憤怒を露わにしたまま向かってきたー!
今度は俺がなんとしても彼女の放ってくるであろう蹴りの正確な起動を捉える瞬間になるまで剣を動かせるつもりはない。
だが、戦いの行く末はいつも正確に予測できるものじゃなく、後手に回ることもあるー!
ターー!
すぐ目の前に、しゃがみ込んできたオードリーの姿がいる。またも先みたいな下段横薙ぎ蹴りかーー!?
ター!
後ろへと飛び下がると、それが起きたーー!
「それー!」
「ーーワーッダーッ!?」
フシュ――!
そう。
後ろへと飛び退ってる最中の宙にいる今の俺に、彼女からの信じられないような『しゃがみ込んだ体勢からの難しそうな俊敏性の発揮で、常識外れな動きでバネ仕掛けみたく素早さで飛び蹴り』をかまそうとしてくるーーー!
「それならー」
構わずに、宙にいるまま【精練魔剣】の振り下ろしにて迎え撃とうとした俺だったけど、
ガチャ――――――ン!!
「ファーーーッ!?」
ガチャ―!ドカーーーーー!
なんてことだ!
オードリーの蹴りの威力が凄すぎて、あの難しい体勢で放ってきたと思えないような力で以って、俺の手元から精練魔剣【轟炎雷刃(ロアーリングフレームズ・オブ・ライトニングブレイド)】を手放させるほどの衝撃で吹き飛ばしたんだ!
「これでお終いよーーー!」
宙で身体を一回転したオードリーが今度は着地したばかりの俺へ空中からの【顔面】を狙ってくるような脚ストレートをぶちかまそうとしてきたーーー!
「だから舐めるなって言ってんだろうがーー!」
これで終わるなんて思うなよ、自信過剰なオードリーよ!
ガシ――!
「くーッ!何してるのよ――!?放しなさいよーーー!!」
そう、俺の顔に当たる寸前で、無事で彼女の足を右手で摑まえることができた!それでも重力に従い落ちてないのはきっと彼女が 【空中浮遊】を発動したからに違いない!
「いいえ、放さないよ?俺は絶対に勝ってみせるから、オードリーの気が済むまでいくらでも戦い続けるだけの話だよー!そーれッ!」
「放し―!?きゃあーーーー!」
フシュウウーーーーーーー!
そう。
彼女からの声を無視して、俺はオードリーの足を掴んだままあそこへと投げ出していったのである。
足を掴んだま地面に叩きつけることも出来たが、相手が女の子なので、彼女の綺麗な顔に傷がついたことを良く思わない俺はそれをせずに彼女が自力に着地できるような行動を取ってしまったのだ。
まったく!傍から見ればきっと不公平極まりない状況だろう!
俺が男だから女であるオードリーから顔面を攻撃されてもいいが、彼女は女だから俺からの顔面への攻撃ができないっていうことをなー!
ター!
「し、信じられないよー!女の子の足を掴んだまま投げ出すとかー!紳士の風上にもおけないわよー!?」
「はっ!『足』で男である俺を攻撃してきた時点で、紳士でも返り討ちにしてやったぜ!そこの足癖悪い少女ちゃ~~んっ」
「むき~~!もう怒ったわ、私!そこで直りなさい絞め殺しにしていくからよー!」
「できるものならやってみ~~?足癖悪い少女ちゃん~っ」
「もうー!くたばりなさいよこの南黒人少年ーーー!」
ズシュウウウーーーーーーーーーー!!
またも向かってきたーー!既に精練魔剣が手元のない俺だったが、構わずに【この両拳】だけで戦う!
「せやーーーー!」
ゴドー―!ドゴー―!
「やはあーーー!」
ゲドーーー!バコ―!
「はーーーっ!」
ドゴー―!ゴドー――――!!
「はいやーーー!」
ドゴードゴーー!
彼女からの蹴りに、俺は拳を使ってパンチすることで起動を逸らさせた!
それに反撃した形に、次は脚も痛むだろうオードリーがその苦痛を無視するようにまたも自分からも俺と同じように【拳】で襲い掛かり、それに対して俺が手のひらで受けて逆側の手で彼女の肩にチョップをぶちかまし、痛みに呻いたオードリーが後ろへと下がった。
こんなふうに、俺達は魔術も精霊も精練魔剣も関係なく使わないようにして、ただ己の信念を通して肉弾戦だけでこんな狂ってるような戦いに興じることになった。
もちろん、オードリーは女の子だから手加減はするつもりだ。
何故なら、彼女の端正で美麗すぎる顔に傷でもついたら、人類の損失になると感じた俺はそれが許せない。だからなのか、オードリーからは何箇所かでの攻撃を受けていても構わないけれど、俺が彼女に攻撃をしかけていく時は必ず肩か、お腹か、両腕や両脚(足も)しか狙わないようにした。
我ながらいいハンディも用意したもんだーー!
まあ、俺達のどちらも【聖魔力】をたくさん使ったから消耗したって感じはあるが、彼女の方はまだ余裕があるはず。
だから、一体何があっていきなりこんな肉弾戦を挑んでくるか意図がまったく掴めずにいるが、戦いの最中に余計な考えはするもんじゃないからこの思考をシャットダウンすることにした、うん!
俺達は、拳と脚を交えながら、真剣勝負を続行させていったのである!
舞台上の二人が決闘の最終段階に入ってる中、観戦席にて、オケウェーとオードリーのどっちからも一歩引けない熱い戦いが展開されるのを熱心に見てる3人がいる、
「すごいですね!ふ、二人とも、【武器化した精霊】も【魔術】も使わなくなって素手だけで戦ってるんですけど、どちらも引かないように相手の攻撃を猛烈に迎え撃って激しい動きしてますねーー!」
「ええー!まさか、あの淑女たるオードリーにまで脚で攻撃するとか、とんだ我が儘な脚持ってるお嬢様だことっす!」
「ふふふ……ドレンフィールド家は【実力主義上等】な家系だからよ?勝つためなら【精霊】や【魔術】だけに飽き足らず、時には拳も蹴りも平然と訓練のメニューに叩き込まれるはずだわ、小さな子供の頃から」
「オケウェー……(本当にすごい!まさか、あの王国の【希望の才女】とまで言われてるオードリーさんをあんなにも互角に戦えるなんて……疑ってた私が馬鹿に思えてきましたよ~!)」
「ん?どうしたのジュディ?ぼっとしちゃってー?」
「…………っぽ~」
ジェームズが見てるのは、視線が舞台上にいるオケウェーに釘付けになったまま、感動したような表情を浮かべならうっとりとした目を向け頬にも朱が差している少女がそこの席にいる。
その時のジュディの脳内には、果たし状を投げかけられた教室の2時限目の終了後に用意された30分の休憩時間にいたオケウェーの時を思い出しているものだった:
「オケウェーさん!さっきの子はよくよく思い出してみると、確かに入学案内書で顔も載せられてるあの【オードリー・フォン・ドレンフィールド】っていう公爵家のお嬢様でしたよねー!?何をしたらいきなり決闘を申し込まれたんですか!?」
心配と驚愕の表情を私が彼に向けながら訪ねると、
「別に何でもないことだったんだよ?ちょっとぶつかってしまったからそれで彼女が怒ってこっちの胸倉を掴もうとしたのを手で止める時、事故で片方の手だけで彼女の、その……胸部という…か?に触ってしまったからそれで激怒して今になって引きずってー」
「なんですーって?そんなことまでやらかしちゃったんですかオケウェーさん!?」
「まあ、じ、事故だし……なあー?」
「『事故だし』ー!じゃないですよオケウェーさん!いい~?私も顔を見るのは初めてですけど、平民な私でも耳にしたことありますよ。なんでも、昔に【ニールマリエー大聖霊術師】っていう2体までの【伝説級の世界獣】をも討伐したことある凄腕の精霊術師がいたのを中等学院に学んだことがありましたよー!確かに、記憶が間違いでなければ、その人の苗字って ドレンフィールドってはずです!」
「ほうー?つまり、オードリーはー」
興味が湧いた顔してるオケウェーの事が如何にも余裕ありすぎるのを見て苛立った私が、
「そうですよ~~!オケウェーさん!別の中等学院だった頃に彼女の昔から契約してる【氷性精霊】を上手く使いこなせるようになったから【希望の才女】とまで呼ばれるようになったオードリーさんですが、実は オードリーさんこそニールマリエー大聖霊術師の妹さんだという事なんですよ~~!」
私の真剣極まりない声色に、
「それで?」
「え?」
「だから訊いてるんだよ、ジュディ。オードリーの家柄や血筋がどうであれ、それで俺にどうしてほしいっていうんだよ?」
「で、ですからー!そ、そのう……つまり、彼女からの決闘を受けないようにしたらいいんじゃないですかーー!だって、彼女が中等学生の頃でも強いんだって聞きましたし、いくら貴方が入学試験でいい成績を記録したからといって、今の彼女ならきっとオケウェーさんなんて容易く半死状態にか、もしくは殺しちゃうこともー」
最後は躊躇したけど、私のありったけの気持ちを表明すると、
「いいや、これは俺の問題だ。ジュディはつっ込んでこなくていいよ、どうせ断ってもほっといてくれなさそうだしさー」
「……で、でもぉ………」
「…俺を信じてくれ、ジュディ。友達同士になったばかりの俺達だけど、友人になってくれたからにはあんたを心配させるようなことはしないつもりだ。友達だからな!」
「オケウェーさん……でも、もし万が一のことに……やっぱり受けないべきですよ!」
「頼む、ジュディ。信じろ!それだけしか、俺からは何も言うつもりはないよ、この件だけに関して………」
「オケウェーさん…………もう!もう知らないですからね!何になっても!」
「まあ、怒るなよジュディ。勝ったら奢るからさ、今はただただ信じるのみ!いいな!」
「そう言うなら仕方ないですね、この頑固系フェクモ少年は~~!」
ぐりぐりと、彼の腕を抓ってみた私。
くすぐったそうにした彼はただ微笑んで、私の手を優しくどけるだけ。
確かに、余計なこと言っちゃったかも。
多分、私はただ、学院にて数少ない非貴族の彼に共感したり頼りたいと思っちゃったりするから、なるべく彼の身に何があっては今度の私の学院生活に支障が出ると思ったから、あんな自分身勝手な言葉で彼の覚悟を踏みにじるような事言ってしまったんでしょう…………。
でも、実際にはオケウェーさんにはオケウェーさんなりの考えと流儀があり、彼の好きにさせた方がいいっていう選択を思考から除外してた。
出会って一週間も経ってないのに、確かに図図しかったんですよね、私………。
多分、過去に何度か『あいつら』に酷い目に会ったから、そして家族までもがお店の経営がままならない程に追い詰められたから、それで【貴族】に差別されてる者同士として【呪われた大地】が出身地な彼にはどうしても死んで欲しくなかっただけ。
そうなれば、彼と同じ平民な子の私が頼れる味方を失ってしまうかもって…………
。
私はただ、自分の利益のために、特殊な立場にいる彼を利用したいがためにはどうしても死んで欲しくなかっただけでした!
だからオードリーさんとの決闘を断るべきだって勧めてしまったに違いなかったんですっ!
でも、結局、そんな心配は要らなかったですよねー!
だって、今、目の前には実際に、『私の』オケウェーさんがああも勇猛果敢にオードリーさんといい勝負をして、同じ土俵に互角で戦えてるんですから!
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