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御神本舞華と神尾拓　二人の攻防

　その日から御神本舞華の神尾拓へのアタックが苛烈になった。

「今日はお弁当を作ってみました。どうぞお食べください」

　神尾拓、御神本舞華、従者の少女の三人になった空間で御神本舞華が弁当箱らしき包みを神尾拓に差し出した。

「えっと……それじゃあ、いただきます」

　包みから弁当箱を取り出し箸を手に取る。

　御神本舞華が神尾拓に期待の眼差しを続ける。

「こ……これは……」

　弁当箱の蓋を開ける。

　普通の弁当に見える。

　ただ御神本舞華は普段料理などしないのだろう、ところどころ焦げてしまった料理が見受けられた。

　それでも自分のために一生懸命作ってくれたのは理解できる。それに見た感じ漫画のように食べられない代物ではなさそうだ。

　だから、それほどの警戒感もなく神尾拓は、最初に目についたからあげを箸にとった。

　従者の少女はそれをハラハラした様子で伺っていた。

「もぐ……んんっ！？」

　一口食べると何とも言えない甘ったるさが神尾拓の口に広がった。

　甘さのあとに焦げの苦みがやってくる。

　端的に言って非常にまずかった。

「うん。……まずい」

「そ、そんな！？」

　素直な感想が口から出てきてしまった神尾拓に御神本舞華が驚愕する。

「――ブフッ」

　従者の少女が噴き出した。

　御神本舞華がそれに対してキッと睨み付ける。

「そ、そんなはずがないわ！　ちゃんと料理の先生に教わった通りに作ったもの」

　焦ったように弁明する。

「はい……あ～ん」

　そんな彼女に神尾拓は新たな唐揚げを掴み、口元に差し出した。

「ふえっ！？　あ、あのっ！？」

　急な出来事に彼女が焦り、耳まで真っ赤の染めた。

　従者の少女も口に手を当て「まぁっ……」なんて漏らしていた。

「食べてみて。ほら……あ～ん」

「あ、あ～……ん。………………まずいです」

　それを食べ、飲み込み…………御神本舞華は落ち込んだ。

「な、なぜなの？　……ちゃんと教わった通りに作ったのに」

　床に手をつき落ち込み続ける。

「ま、まあまあお嬢様。この世にはどれだけ真面目に作っても不味いものしか作れない人っているものですよ」

　従者の少女が笑うのを我慢しながら慰めにもならない慰めを行っていた。

「こ、今度は美味しいと言わせてみせますから……！」

「う、うん……がんばって？」

　それを見て従者の少女は「無理でしょうけど」と呟いた。

　御神本舞華の神尾拓へのアタックはこれからも続くのだろう。

　神尾拓は彼女が二次元の存在だったらなぁ、なんて考えながら残りの弁当を平らげるのだった。　

　二人の攻防は終わらない。

これにて完結です。