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獄中の叫び

作者: 月永 時雨

他人の視線に怯える「僕」を描きました。

誰かのレンズからでしか自分を肯定できない。いわゆる「他人軸」というものですね。「他人」という名の牢獄の中で、「僕」は闇の中を足掻き、光へと手を伸ばす。全ての罪を洗い流してくれるような空と天使の羽に見まごうような白い羽。どん底の中で「僕」が見つけたのは——。

静止画像みたいな、リアリティのない世界。



全部、全部、カメラの中の出来事だから。

全部、全部、レンズ越しの僕の世界だから。



カメラを(かま)えられることを恐れる僕は、どうしたらいい?

レンズで捕らえられることに(おび)える僕は、どうしたらいい?



この世界には、

僕の存在を映し出してくれる

姿見(すがたみ)なんてない。


この世界では、

他人のレンズしか、僕の存在を

証明してはくれない。



ああ、

もし僕のレンズを僕自身に向けられたなら、

この世界を必要以上に恐れなくても済むのかな。



ああ、

もし君のレンズを(こぶし)で割ってやるような勇気が僕にあったなら、この世界で怯える必要なんて無くなるのかな。





視線が、激しく燃え上がっていく。



パパラッチに追われる僕は、国民的スターかよ。

(まばゆ)い視線が、僕の存在を消してしまうよ。

無数の視線が、僕の存在を(ほうむ)ってしまうよ。

――いや、全て幻影(げんえい)だったのかもしれない。



銃を(かま)えるかのように

レンズを向けられた僕は、

震える体を抱きしめて、空を見上げた。



弓矢のように向けられた視線に、

撃ち抜かれた僕は、

崩れ落ちそうな体を抱きしめて、

(ゆが)んだ視界を(ただよ)う鳥を見届けた。





僕は、(とら)われの身だから。



どれだけ足掻(あが)いても抜け出せない闇。

――両足にはめられた足枷(あしかせ)のせいだろう。


どれだけ伸ばしても届かない光。

――両手にくくられた手錠のせいだろう。


鎖を()ち切ろうとする(たび)に、僕の体には、

無数の傷跡が残る。



()びついた感情が、

僕の体を(むしば)んでいく。


埃かぶった記憶が、

確かに、僕の奥底で眠っている。



もがいている僕を嘲笑うかのように、

世界は容赦なく、(とど)めを刺す。



全部、全部、食いちぎってやれよ。

全部、全部、歯向かってやれよ。

この世界に(そむ)いた先にあるのは――。





指先に刺さったトゲを抜くように、

自らに向けられた視線を解き放っていく。



僕の体を離れた瞬間、

この胸を刺したはずのトゲは、綿毛のように宙を舞う。

その様子が流れる雲のようで、僕は不意に、空が恋しくなった。





ひんやりと冷たいコンクリートから、

数センチだけ(かかと)を浮かせて、小さな空を見上げた。



鉄格子に切りとられた空は、 

涙が流れるほど美しくて、

いつかの自由を想ったよ。



天使の羽に見まごうような

真っ白な羽に、

いつかの世界を願ったよ。

——「レンズ越しの僕の世界に、鮮やかな色

   彩を。」




薄暗い闇の中で、僕は静かに慟哭(どうこく)した。

僕しかいない静寂の中で、僕の嗚咽(おえつ)は、

罪状を響かせる。







犯した罪の名も知らずに。






分かりにくい部分がありましたら、感想やコメント欄、メールでお気軽にお尋ねください。

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