88.「新しい刺激がもたらす空気を直に感じながら」
気持ちがいい風が吹いている庭で僕は昼寝をしていた──目が覚めるとまだモヤモヤとする意識を現実まで戻して軽く伸びをする。
青く晴れ渡る空にはお日様が今日も変わらない日差しを送り続けている。
「どれくらい寝てたんだろう……?」
十三時前か、どうやら二時間くらい寝ていたみたいだ、疲れていたんだろうか? 昼寝なんて子どもの頃以来だ。ここ最近は充実した日々を送れているのかもしれないけど些細な出来事で疲労感を抱いていたのかな。
「さてと、寮に戻ろうかな」
芝生の上から立ち上がってパンパンとズボンを叩いてゴミを落とす。緩やかなに過ぎていく時間がちょっとだけもったいないなあと感じながら踵を返して「聖蘭寮」に戻った。
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「向こうから誰か歩いてきてませんか?」
牧野さんが指差す方向を見るとこっちに向かって歩いてくる人影が見える。
「ちょっと待ってみましょうか、多分小鳥遊君だと思いますし」
「そうですね」
私たちが足を止めて待っていると近づいてくる人の顔が見える位置まで来るとそれが彼だと私たちは確信した。
「あれ? 牧野さん? どうしてこんなところにいるの」
彼は真っ先に牧野さんに声をかけるとキョトンとした顔をして私たちに視線を向けていた。
「それに君は一体?」
「あのっ……私はー」
私が言い淀んでいると隣にいる牧野さんが代わりに説明してくれた。
「彼女は『聖蘭寮』で暮らすことになる【姫城】さんです。私もついさっきと知り合ったのですよ」
「初めまして! 『姫城芳乃』です」
私は、はっとして頭を下げて小鳥遊君に挨拶をする──数秒沈黙が刻まれると「よろしく。姫城さん」という声が聞こえて顔を上げた。
来た道を引き返して寮へ戻る途中に「聖蘭寮」で暮らすことになった経緯を牧野さんと小鳥遊君に語りました。
内心では緊張していたけど、小鳥遊君が落ち着いてお話ししてくれたから焦らずに穏やかに気持ちでおしゃべりができた。牧野さんの第一印象は好意的に思える。
寮へ戻った私は改めて一緒に暮らす他の女の子達に自己紹介──理事長から聞いていた以上に広くて新しめの棟に感動してキョロキョロと周りを見回す。
皆は私の歓迎会をやろうと言ってくれて相倉さん? っていう子のお部屋にお邪魔することになっちゃった。
そして、ここでは本当にあのルークランシェさんが暮らしていた。テレビで見るよりもすごく綺麗で手入れされた金色の長くて美しい髪が羨ましい。
これから仲良くなれたら良いなぁ。お姫様って言うのには憧れを持っている、私の実家も地元では有名な名家だけど、一国のお姫様と比べたら小さなものだと感じる。
(大丈夫、ここでならきっとやっていける)
素直にそう感じてガールズトークを楽しむために相倉さんのお部屋に向かう。途中で小鳥遊君とすれ違うと彼は「ようこそ。姫城さん、この寮は女の子ばかりだから気を遣わずに過ごせると思うよ。何か困った事があれば僕で力になれるなら声をかけてね」そう伝えると自然な笑顔を見せてくれた。
はじめは寮で暮らしている子たちと仲良くやっているのかな? っていう不安な気持ちで苦しかったけど、大丈夫そう。
自己紹介を終えると藤森さんが“小鳥遊班”の存在を私におしえてくれた、LIMEの連絡先も交換してグループチャットにも入れてもらう。
新しく始まる人間関係にワクワクとした気持ちとちょっぴりの幸福感を抱いて私の新しい生活が始まるのでした。




