69.「ミスコン開催へ向けて」
学園が主催するミスコンの開催が近いからか園内はいつにも増して賑わいでいる。
廊下で話すお嬢様方の会話の内容に耳を傾けるとミスコンの話題で持ちきりだ。
僕は彼女達に「ご機嫌よう」と挨拶をしてAクラスまで移動する。
なんでもミスコンは多くの生徒に参加できる権利があるみたいでルックスはもちろんのこと、一人一人の個性も評価されるポイントのようだ。
実際どう言う風になるのかはイメージがつきにくいけど各クラスから参加者を募るらしい。
僕がその審査員に選ばれているということは他言無用らしく、学園側からも口止めされている。
ミスコンも僕のお嫁さんを選ぶ為のイベントの一つに過ぎないらしくプロジェクトを進行するのに欠かせない行事だから責任重大。
たくさんの参加者の中からトップを選ばなくちゃいけない。
選ばれた子は歓喜し、そうじゃない子は落胆するだろう。
それでも、学園に通う子が真剣に取り組んでくれるのはみんな僕に選ばれたいと言う真っ直ぐな想いがあるのだろう。
ミスコンの詳しい詳細が記されたメールを受信する。部屋のパソコンはメルには触らないように注意はしてあるけど……。
そもそもカーテンで仕切られた絶対領域に僕が侵攻する事は無いし、メルやアイリスさんに用事がある時はカーテン越しに声をかけている。
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「ねえ、アイリス。さっき麻奈実に聞いたんだけど近く学年が主催するミスコンがあるらしい」
「ミスコンですか? 私はそういったものに関心はないのですが。日本の学校ではそのようなイベントが催されているのですね」
「多分恋麗学園だけだと思うわ。麻奈実に聞いても他の学校で開催された例は聞いたことがないというし、なんでもプロジェクトの一環のらしいわ」
「あのプロジェクトですか……。姫様はプロジェクトを成功させる為に日本まで来ましたが、本当に良いのですか?」
「何がかしら?」
「ご自身の結婚相手をそんなに簡単に決めて良いものかと? 小鳥遊殿がどういう男性なのかまだ情報が少ないですし。正直メルア様に相応しい方なのかという疑問もあります」
「アイリスは心配性ね。でも、わたし自身彼の事はもっと知りたいと思っているわ。その為にこうして一緒の部屋で暮らすのを理事長にも許可してもらっているわけだし」
わたしは彼のことをルークランシェ王国にいた時から知っている。与えられ情報が全てとは言えないけれど、日本で勇人と会えるのをとても楽しみにしていたの。
わたしが、彼と知り合うよりも先に魅力的な子が既に仲良くしていたLIMEのグループ小鳥遊班に入れてもらって新しい友達とも知り合えた。
ライバルといえばそうなんだろうけど、彼のお嫁さん候補は一人だけじゃない、この学園に通っている子みんなが対象。
だからこそ、もしも結果として自分が選ばれなかったという現実を受け止めるにはかなりの時間が必要だと思うの。
学園外ではルークランシェ王国のお姫様という身分を最大限に活かすことができるのだろうけど、ここにいるうちは身分差はあったとしてもそれが大きな武器になるとは言えないわ。
むしろわたしはみんなよりもちょっと遅れているから限られた時間の中で成果を残さないと。
小鳥遊班のトークルームではミスコンの話題で賑わいでいた。1クラスで参加者に制限はないから出たいと思う女の子はいるらしい。
まだ躊躇している子も少なからずいるらしいけど、迷っている暇はない、ミスコン開催の意義は生徒達にもきちんと伝えられている。
ルックスに自信があるお嬢様方はその美貌を武器にアピールするつもりだ。
相倉さんを始めとする小鳥遊班の子達も参加を考えている女の子がいるみたいだ。
玲さんは参加者の管理を学園側と分散してやるらしくて自分は参加している場合ではないと言っていたけれど、相倉さんが説得して彼女を参加させる為に小鳥遊班が一致団結。
僕は自分が審査員に選ばれていると言うことは伏せておいてたくさんの参加者がいるというのは嬉しいことだと言うのを素直に伝える。
学園側から大々的にミスコンの内容が掲載されると女子達は歓喜の声をあげて、自分磨きに精を出す。
高級な化粧品でメイクしたお嬢様も目立つ中、自然なお化粧で自分に自信をつける子もいる。
彼女達にとってメイクは新しい自分へ変身する為のアイテムなんだろう。
女の子はああ言うふうに気分も養子も変えられると言うのは羨ましく感じる、独特な雰囲気が漂う学園内で僕はミスコンにどんな女の子が出場するのかワクワクした。
学園側がもうプッシュするイベントが成功を収めるのは容易い事だ。ミスコンに出る女の子から僕のお嫁さん候補選びに一歩リードするひとが現れる。
部屋で詳細のメールに目を通しながら冷蔵庫に入れてあるスポーツドリンクを飲み干す。
お風呂上がりで汗をかいた体に水分とミネラルが染み渡るドライヤーで髪を乾きしながらふとカーテンへ視線を向ける。
メルとアイリスさんはどんな会話をしているのだろう? そんなことが気になったけれど、僕は絶対領域に侵攻することはせず自分の机に向かって明日の学園生活をイメージしていた。




