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65.「リマインド」

 麻奈実は新しい刺激にワクワクとした高揚感を抱きながらお弁当を作ている──LIMEで仲良くなった小鳥遊班の皆の為に昼食を準備することは彼女にとってはとても大切な用になっていた。

 クラスは違っていても周りの人と仲良くやれるのが麻奈実の長所でもある、その中でも智佳とはお互いに気を遣う事がなく自然体で接することができる相手、表向きの彼女は天真爛漫な印象を与えている。

 けれど、彼女にも悩み事がないわけではない。大手の家電メーカーの令嬢として生まれて幼き頃より厳しい躾を受け、自由な時間は殆どなかった。両親は将来的に麻奈実に会社を継がせようと考えており、早い段階から縁談の話も上がっていた。

 両親に決められた道を進むのは将来が約束され、安定した生活を送ることができる、けれどそれが麻奈実が本当に望んだ人生なのか? 日々自問自答しながら生きていた。彼女がこの恋麗学園を選んだもの親元を離れて生活して自分の考えをまとめておきたかったからだ。

 自分で選択して高校を選び通う──両親には反対されたが、それでも決意は揺らがなかった。

 お嬢様ではあるが、麻奈実自身、自分から実家の事を話さなかった。ありのままの姿で評価をされたかったからだ。

 一部のお嬢様たちは家柄や身分を自慢して、周囲はとるに足らないものだという価値観を持っていた。

 麻奈実も最初、どこの名家出身なのか? とクラスメイトに散々聞かれてうんざしつつ何とか上手いこと誤魔化していた。

 すると自分よりも身分が下だと思われてクラスで何かと雑用を押し付けられる事になった。

 彼女がそれをきっぱりと断ると今度周りはありもしない噂を広め始めた。自分で望んで選んだ高校だというのに想像していた以上に窮屈さを感じていた……。


 昼休みは一人で過ごす──社交的な麻奈実でもクラスには馴染めないでいた。


「どうすればいいんだろう?」


 独り言のように呟いて考える。もっとクラスメイトと仲良くする必要があるのかな? 実家の事を話すべきだろうか? けれど、大抵の人は麻奈実の実家の事を知ると友達になろうと近づいてくる。人ってそんなもの、立場でしか判断できない相手と付き合う気はない……。

 本当の友達と言える相手がいない、それが麻奈実の悩みだった。


 そんな彼女が変わったのはとある生徒が学園に入学してから。そう、【小鳥遊勇人】だ。

 自分と同じで女子校に通う男子生徒という事で皆からは否定的な目を向けられる。

 それでも彼は文句一つ言わずに笑顔でいた。どうして辛いのに笑っていられるんだろう? 麻奈実は勇人興味を持った──最初は好奇心で彼に近づいた。

 きっと勇人も今までの人と同じで自分のことをフィルター越しでしか判断できないと相手だと思っていた。

 麻奈実と初対面の相手は殆ど彼女の身の上の質問をする、慣れたとはいえいまだに不快感を覚える……。


 でも。勇人は麻奈実に対してもごく普通の態度で接する。これまでになかったできごとに戸惑いつつ、【小鳥遊勇人】という人物に更に興味が湧いた。

 そして、学園から発表された例のプロジェクト──それが周知されてから学園内の雰囲気が変わった。

 今まで勇人に対して否定的な目を向けていたお嬢様方の態度が急に変わる。

 廊下では彼の話題を耳にするようになり、なんとしても知り合いになろうと動いている、学園では彼女達の家柄や身分は関係ない、アピールできるポイントを失って必死にもがいている様子を見る。

 麻奈実は勇人と知りあいそれからLIMEでやりとりをする親しい友人ができた。皆優しくて大事な人たち──だからみんなに喜んでもらえるのが嬉しかった。

 学園に通って得したと感じるようになっていた──そして智佳や玲たちと夜の遅くまで女子トークを楽しむ。

 空気を読んで勇人は参加しないが、彼女達の話題のどこかに必ず彼が出てくる。新しく加わったルークランシェのお姫様もキラキラな表情で会話を楽しんでいた。


(ここに来て本当に良かった)


 いつもように小鳥遊班でランチを楽しみつつ自分の周りの人の笑顔を見ながら幸せを感じる麻奈実でした。

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