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54.「某国の姫君」

「失礼します。姫様、今日はすごく楽しそうにしていますね」


「もちろんよ。だって一日でも早く恋麗学園へ通いたくてわたしワクワクしているのだもの。こんなに楽しいのは随分と久しぶりだわ」


「うふふ。姫様が嬉しいとこっちまで同じ気持ちになれますね、ですがー。学園へ通う目的を考えて下さい、向こうでは目立つ行為はくれぐれもご注意を」


「もーわかってるわ。は心配性ね、お父様たちはわたしの留学が目的なんでしょう? 王族なら他国の情勢を知っておく必要があるっていつも耳にタコができるくらいに言われてるんだもん。こっちの学校が嫌だと言う訳ではないわ。だけど、生まれ育ったこの地を離れるというのはわたしも不安なことはあるのよ? それでもあなたがいてくれるからまだ何とかなっているから」


「姫様をお守りすることは私の使命でもありますから当然です」


「真面目ね。これからもよろしくお願いするわ。っとその前にこの間お願いしていた事はどう? 進展はあったかしら」


「【小鳥遊勇人】の件ですか、それなら問題ないです。恋麗女子学園から彼に関する情報をこちらに送って貰いました」


「そう、あとで見せてちょうだい。未来の結婚相手になるかもしれない人だししっかりと自分の目で確認しておきたいの。わたしが住む寮の手配や制服まで準備して貰って本当に頭が下がるわ」


「姫様なのですから当然の事です。異国の地で暮らしていく為に最大限の誠意を見せるのは大事ですからね。恋麗女子学園は全寮制の学校になっています。姫様と私は同じ部屋に住むようですね。最もその方が護衛役としてはありがたいことですが」


「向こうでお友達はできるかしら。通っている子はみんな由緒正しい家系の子ばかりなのでしょ?」


「そうですね、ただ、一部の者は一般家系の方もいらっしゃるようですよ。姫様の格は学園内でも数段上なのではないかと」


「やっと今でまで学んできた礼節とかが役に立ちそうね。日本ってどんなところなのかしら」


「私も行った事がないので聞いた情報によりますが四季の移り変わりがあり、その際の自然がとても美しいと聞いています。後は文化が進んでいて我が国にないものが多く存在していると」


「楽しみだわ! 早く行ってみたい。その前に彼の事をもっと知っておかなくちゃね」


 わたしの生まれ育った国は豊な自然と御伽の国みたいな雰囲気が漂う大きいとは言えないけど小さくもない国。


 とある王国の王女として生まれたわたしは両親の愛情を目一杯に注がれてちょっと過保護すぎな王宮で育った。

 わたしの近衛警護してくれているこの子との付き合いは長いの、今回彼女と何人かの護衛と一緒に日本で暮らすことになるの。

 詳しい事は向こうについてからになりそうね、初めての異国の地できちんとやっていけるかしら? なんていう不満もあるのだけれど、信頼できる相手も来てくれてるのだし、わたしが心配するような事は何もないと感じるわ。

 日本へ向かう飛行機の中でわたしはこれから会うだろう一人の男性の情報に目を通す。


「うふふ、早くあなたに会えるのを楽しみにしてるわ、【小鳥遊勇人】君」


 雲の上を飛行する自家用ジェットの座敷でゆったりと寛ぎながら窓の外に広がる光景を眺める、これからどんな生活が待っているのかしら? 

 今から待ち遠しいわ!

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