45.「決意を胸に抱いて」
(なるほど、これは面白い)
モニターに映し出された小鳥遊美鈴女史の情報を見ながら微量のカフェインを摂取する。
明日彼女が学園を訪問する予定となっているらしい、私は理事長から仕事のメールを受けてPCと睨めっこ。
小鳥遊女史は小鳥遊勇人君の母親で学園を上げて遂行ているとあるきかく「ハーレム・プロジェクト──正式名称は自然繁殖推奨プロジェクト」の立案者でもある。
自分の息子をプロジェクトの根幹に据えるとは一体どんなつもりなんだろうか? 彼女自身の経歴やこれまでの行ってきた輝かしい研究や実績の数々が目に留まる。
こんな有名な母親がいるのに小鳥遊君はそのことを全く私たちには話さなかった。彼自身言いたくない理由があるのだろう。
理事長から貰った仕事をこなしていく最中、LIMEにメッセージが届く、最近ではこのアプリをよく使うようになって来たなぁ。私が小鳥遊君とやりとりする事を可能とした──スマホは通話とメールのみを使っていたのだが、グループでトークをするのは案外悪くない。
前持っていっておくが私は別に社交性が欠如しているわけじゃないぞ?
仕事の為に一人でいることが多かった手前あまり人と直接やりとりをする機会が少なかっただけだ、事実大体の要件はメールや電話で済ましているし。
しかしそんな私自身も彼と関わるようになってから部屋を出る回数が増えたんだ。
彼には面白い友人ばかりだ、もちろん彼女たちとはこれからも仲良くやっ栄光と思うよ。
プロジェクトの期間は決められている、小鳥遊君が選ぶ事だが、私たちの中から彼の恋人となり得る女の子を選択するだろう。
私自身、これからの将来のことなんて考えてもいないが、もしも彼が私を選んでくれたら素直に嬉しい。
まあ、一人だけ選ぶなんていうのはプロジェクトの目的に反しているから数人の女の子が恋人になるのだろうけれど──
小鳥遊美鈴女史がどういった人物なのか一度は接触してみたいと考えている、理事長に間を取り持ってもらえばいいか。
この間、みんなで街まで出かけたのは私にとってはすごく新鮮な体験でもあった、基本的に必要なものは業者に頼めば用意してもらえるし、この生活に不便さは感じていないのだから無理に変える必要もない。
それでも、同じ歳くらいの子と一緒に遊ぶというのは実に気分がいい、女子の話題に疎い私に相倉さんや御崎さんはよくしてくれている、彼女たちと友情関係を育みながら新しい発見ができると尚更いいね。
キーボードを叩きながら仕事をこなしていく、学生の身分だがきちんとした報酬は貰っているし、労働した分の対価は得るべきだろう? そうでないと割りに合わない。
ゆったりと流れる時間の中で私は少しずつ“変化”していくのを感じながら午後の時間を過ごした。
*
学園内の雰囲気は相変わらずでみんなそわそわとしている。僕はというと自分の母親と何とか顔を合わせない方法を考えていた、明日は通常通り授業があるしもしも校舎内で母さんに出くわした場合はどうしよう?
昨日の放課後小鳥遊班で集まって遊んだ、彼女たちは気を遣っているのか僕に母さんの話題は振って来ないでいつもと同じように接してくれた。
僕自身も聞かれなかったから母さんについて特に何も言っていない、だけど、いつかはちゃんと話すべきなんだろう。
それは僕が恋人を選んでその子たちとの将来を考えた時に避けては通れない道だ。
もしも結婚することになるとしたら無論母さんとも顔を合わせる事になるのだから。
あの人のことだから僕の結婚相手に対してもあれこれと口を出してきそうだ、自分の息子を仕事の為に女子校へ入学させるような人だし。
親子関係を修復するだけの時間はない、仮に僕にそれが可能だとしても向こうがきちんと対応してくれるかは別問題だからね。
自分が選んだ相手が悪く言われたら流石に頭に来る、ずっと母さんに世話にならない、あっちだって仕事が第一で息子のことなんて無関心を通してきた、だから僕も今更母親らしい事をしてほしいなんて思っちゃいない。
この感じも母さんが帰ったら落ち着くだろうな、そんなことを思いながら廊下を歩いと話し声が聞こえてきた。
「ねえねえ? 明日ってあの【小鳥遊美鈴】さんが学園に来るって話本当なの?」
「本当だよ。もうそこら中その話題で持ちきりだし間違い無いんじゃないかなー」
「そうなんだ! 実はね、私あの人のことずっと良いなぁって思ってたんだよねーほらなんかカリスマ性あるでしょ? 同じ女として憧れるもん」
「それは言えてるー実際に女性人気高いみたいだよ? うちらと同じ目線で世の中を見てるっていうのが共感されてみたい」
「だよねー。ねえどうする? 授業サボって見に行っちゃおうか?」
「面白そう! ああでも、確か理事長室で大事な話をするとか言ってたからうちらじゃそもそも会えないんじゃね?」
「それは何とかするしかないでしょ!」
「けどさ、アンタそんな浮かれてて良いの?」
「えー何が?」
「何がって、ほら、理事長がこの前に説明した何たらプロジェクトの事よあれが分かってからクラスの子たち目の色変わったじゃん。うちらも真剣にやらないと学園にいられなくなるよ」
「大丈夫だって! 男と付き合うなんて正直ごめんだし……。三年間も期間はあるんでしょう? その間に自分で進路とか決めるわよ」
「近いうちに全校生徒にヒアリングするみたいね。そこでダメだったら学園を去らないといけないらしいわよ」
「えっ……? 嘘、その話マジなの?」
「マジマジ、だからみんな必死になってるんじゃん。まあ、別の学校への転入とかは学園側が進めてくれるらしいんだけどね」
「どうしよう……。私、成績危なくて何とギリギリでこの学園に受かったから親に顔向けできないのよ。結果残さないと実家に何言われるか」
「うちら大分遅れてるからねーここから巻き返すのは結構大変だと思うわ」
「とにかくそのヒアリングがあるまでに何とかしておかないと!」
偶然にも話をしている女の子達と目が合った。さっきあの子が言っていたことが本当なら少なくとも学園内に僕と付き合いのは拒否したいと考えている子もいるみたいだ。
嫌がっている相手に無理強いするつもりは無いし、僕は自分が選べる立場でもあるのだからああいう子は恋人として選んじゃいけない気がする。
プロジェクトに対してみんながどの程度真剣に向き合っているのかは一度神崎さんに聞く必要があるな。僕はプロジェクトの目標を達成する為に真面目に取り組んでいこうと決意したのだから。
バツの悪そうな顔を見せる彼女達の脇を抜けて僕は教室に戻った。
男子寮の自分のパソコンからメールを出す──宛先はもちろん理事長の神崎さん宛だ、明日母さんが帰ったら会う約束を提案する。
すぐに返信が届き時間の指定を受ける、明日会った時に僕の決意を改めて伝えるつもりだ。
小鳥遊班の子達には僕の気持ちは伝えた──最終的には恋人関係になってその後の事、重婚する場合は様々なハードルがあるけれど、乗り越えていきたい。
学園に通う女の子達がプロジェクトに真摯に取り組んでくれた良いなと感じる、その為に僕は自分ができる事はやり抜こうと思うんだ。
こうやって何かに対して真剣に考えるのは今までやってこなかった、だからこそ成功させたい。
女の子達の幸せを願って強い信念を持ってやろう。初めは乗り気じゃなかったプロジェクト遂行に関して僕は改めて決意を胸に抱いて明日を待つのでした。




