表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/113

39.「陽だまりが運んでくる出逢い」

「さてと、今日はどうやって過ごそうかな?」

 今日は学園も休みで部活に所属していない僕は一日中暇な時間を過ごすことになりそうだ。

 実家にいた時はいつも部屋に閉じ籠って外に出た試しがない──友達のいない僕は誰かと遊びに出かけるなんていうのは経験したことがないからね。

 そんな事を考えてぼんやりとスマホを眺める、最近だとスマホを見ている時間が長くなっている気がする。

 前まではただ、連絡する為だけに使っていたものなのに今ではLIMEとかのアプリを使う機会が増えてきた。


 学園に通い始めてからの僕の生活は充実している。可愛い女の子達に囲まれているのは嬉しく思うかもしれないけれど、意外と苦労が絶えない……。

 女子だけの花園に男である僕が迷い込んでいるのは場違いのように感じるし、学園自体は今後男子生徒を迎え入れるつもりは無いらしい。

 つまり僕が最初で最後のケースになる、自分の役割をきちんと理解しなくちゃいけないし、学園に通う女の子達の将来も僕が背負っているという責任感も湧いてくる。

 だからこそ、この三年間という短い時間でしっかりと実績を残さないと。

 これから先の未来がどうなるかなんていうのは今の僕にはわからない。

 一度母さんと話さないとね。自分の母親がどういう考えを持っているのか? 最低限それくらいは知っても良いと思う。


 プロジェクトの進捗状況を神崎さんに提出する為にパソコンで書類を作成する──まだ慣れないこともあるけれど、何とか上手くやれている。

 僕の部屋には最新型のノートパソコンが一台設置されていて、これは入学当日に理事長から預かったものだ。

 生徒達にはそれぞれタブレット端末が支給されているけど、僕は特別に自分のパソコンを準備された。

 データの管理から報告書の作成、家でパソコンは使っていたから操作自体に悩む必要はない。

 ちなみにこのPCはネットにも繋がっているので調べ物で検索エンジンを使うこともできる。

 管理サーバーは一括されてるらしいけど、僕が調べた事は本人が許可しない限りは他者に閲覧できない仕様となっている。


 つまりだ、僕がこのパソコンを使っていかがわしいワードを検索したとしても自分が許可しない限りそれが知られるというのはない。

 ま、そんな事は調べたりはしないんだけどね。


 ネット上には様々な情報があって、その中から自分が必要としているものを探し出すのはそんなに難しい事じゃない。

 それでもかなりの情報が無関係のやつだったり、一定のキーワードが含まれているもので検索結果にヒットするだけだという。

 ネットを使う上で重要なのは情報の取捨選択だと思う。

 自分にとって何が必要なのかしっかりと見極めてから使わないと数多くの情報に惑わされて目的のものを見つけることができない。


 専門業者に用意してもらったクリーナーを使ってキーボードの周りを掃除する──使った後はちゃんと掃除しておかないとね、実はPCのキーボードって思っている以上に汚れていることが多いんだ。

 僕はいつも使う時は手袋を使っているけどそれでも、パソコンを触る時は慎重にならざる得ない。


 PCのデスクトップ上には数個のアイコンが並ぶ──本当に必要最低限なものしか使わないからスッキリとしている。


 さっき入れてきたココアを机に置いて一息つく。こういうのんびりとした時間も悪くない気がする。ここ最近はちょっと慌ただしい日が続いていたけど本来僕は穏やかな日常を好む。


 生活に必要なものは揃っているし今のこの部屋に不満はない。そう言えば女子の部屋にはお風呂は付いていないらしくてみんなは大浴場を使っているらしい。

 それに比べたら自分の部屋にシャワーとお風呂がある僕は恵まれているのかもしれない。

 まあ、男の僕が女湯を使う事になるなんてありえないとは思うけど……。



 僕は学園で知り合った女の子達の事を考えていた。

 ──まずはFクラスに所属する相倉麻奈実さん。積極的な性格で僕が初めて仲良くなった子、いつも明るい彼女を見ていると何だかこっちまで明るくなれる。


 それから同じクラスの御崎智佳さん。僕の隣の席に座っている子で、最初は仲良くやれるか心配していたけど、話してみるとすごく良い子でいつも努力している彼女の姿は僕にも良い影響を与えている。


 次に知り合ったのは藤森 玲さん。ミステリアスな雰囲気の漂う女の子でなかなかに掴みどころのない相手でもある。今のところ僕が名前で呼ぶ唯一の女子、学園のセキュリティの管理を任されているなどネット関連には強い子。

 あまり授業に出る機会がないから、校舎で見かける機会は少ない。

 話し方にクセがある子だけどね。


 そして牧野 栞さん。

 僕の中学時代のクラスメートで彼女と話した回数なんて数えるほどもないのに僕の事を知っていた。

 おっとりとした雰囲気の女の子だけど、かなりグラマーな体型をしている。中学時代とはちょっぴり感じが変わっていたけどそれでもすぐに牧野さんだと分かった。

 昔の僕を知る相手だからこれからは気兼ねなく話せそうだ。

 牧野さんとはこれから仲良くやっていこうかなと思っている。


 あとは僕への当たりはきついけどAクラスに所属している小阪亜理紗さんがいる。典型的なお嬢様な彼女はプロジェクトの内容が明らかになっても僕と仲良くする気はないらしい。

 それは彼女が選んだ事だから僕からは何も言えないけれど同じクラスなんだだからできるだけは上手くやっていきたい。


 今のところはこんなことろだろうか? これから知り合いになる子もいるだろう。そう言えばこの間夜僕が出逢った不思議な女の子──彼女は一体誰なんだろう? 

 近いうちにまた逢えるような予感がしていた。


 新しい出会いが待ち遠しく感じるようになっていた。僕は彼女達に好きになって貰えるように、恋人だと認めて貰えるように頑張らないといけない。


 普段からたくさんの人から見られているという認識を持って節度ある学生生活を送りたいと思う。


 春の風は心地よさを運んでくる──僕は部屋の窓を開けてその空気を中に入れる。季節を感じるなんて風情のある事は今までやらなかったけど、温かな陽だまりが運んでくる出逢いにワクワクとした気持ちを持ちながら午後の時間をゆっくりと過ごした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ