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30.「きっかけはいつだって細やかな日々が運んでくる」

「ここが僕の部屋だよ」

「うむ、特に変わった所は無いようだね」

 玲さんは顎に手を当てて部屋の扉を見ると横にいる御崎さんと相倉さんもお互いに顔を見合わせる。

 僕はドアノブに手をかけて「ふぅ」と深呼吸してからゆっくりとドアを開ける。

 部屋の中は僕が出て行ったままの状態でベッドには私服が着替えた時のまま残っている。


「お邪魔します」

 相倉さんが最初に僕の部屋の足を踏み入れると御崎さんと玲さんも後に続く。


「私たちの部屋と違ってかなり広いね」

 女子寮の御崎さんの部屋に入った時は病気の彼女の様子を見に行っていたから女子の部屋の広さなんて気にならなかったけれど、言われてみたら一人で使うのに広すぎるくらいの部屋だと思う。


「ごめん。床に直接座る形になるかな、クッションでもあれば良かったんだけど」

「大丈夫だよ。私、そういうのは気にしないし。ね? 御崎さん」

「そうね。あたしも相倉さんと同じ考えだよ」

「私はクッションがあった方が嬉しいのだがね」

 玲さんは自分の考えている事をストレートに言葉にする。

 まさか女の子が自分の部屋に来るなんて思ってもみなかったからやっぱり緊張する。

 神崎さんに頼んだら色々な物を用意してくれるから次の機会があればお願いしておこう。


 丸テーブルの周りを囲んで全員が座る。玲さんの勉強道具のタブレット端末を出して操作を始める。彼女曰く「書いて覚えるというアナログな事は好きじゃないんだ」だそうだ。


 うちの学園は生徒に一台タブレット端末が配られ、それを授業に使う教科もある。

 ノートを取るのはあくまでも手段の一つであって学園側は教師の負担を考えて出来るだけ筆記する授業の個数を減らしたい考えのようだ。

 デジタルな方法なら大きな黒板も必要じゃ無いしパソコンを使って情報を共有すれば楽になる事もある。

 テスト範囲を記録しておけば忘れる事はないだろうし。

 テストの問題をコンピュータで採点する方式も一部の教科で採用していて僕が考えている以上にこの学園は技術の最先端を進んでいるのかもしれ無い。

 将来的には一人一台共有のパソコンを用意して本格的に授業のカリキュラムに組み込む計画らしい。


 御崎さんと相倉さんも一応準備していた端末を取り出す。二人とも慣れた手つきでタブレットを操作する。


 進学クラスのHクラス以外はテストで出題される問題に違いはないらしい。A組の僕とF組の相倉さんが同じ科目を勉強するのは問題無い。

 学力テストは生徒の判断基準の一つだけど全体で見ても判断材料として占める割合は少ないらしい。


 玲さんは僕たちに学園側が考えている事を話してくれた。

 学力や教養は基本的な部分であるがゆえに学園側はそこまで重要視していないようだ。

 僕が卒業するまでの間に学園に通う女子生徒たちはしっかりとした意思表示が必要らしい。


 プロジェクトを進行する為に必要な活動は生徒たちそれぞれが選択する事になる。優秀な遺伝子を未来に残す為に──


 ──僕に出来る事は彼女たちの将来を背負っていると認識して自分が選ばれた理由を理解して行動する事だと思う。


 今は彼女たちとこうやってやり取りをしているけれど、本音を言うと僕は女性にはどこか苦手意識がある。母さんに厳しくされたのがその理由の一つでもあるのだけど、今まで僕から周りの女の子と関わって来なかった。

 女子高生に編入されると分かった時は息苦しさを感じた。

 けれど、僕が女性が苦手と言うのを彼女たちに知られる訳にはいかない。

 だって彼女たちは自分の将来を考えてこれから僕と過ごす事になるのだから。

 だからこそ僕は彼女たちの想いに応えないとならない。

 勿論、僕を好きになってくれる子がいればいいんだけどね……。

 この学園で過ごす間に僕はちゃんと結果を残さないといけない。母さんが期待してくれているんだから。

 気持ちを改めて学園に通う女の子たちと向き合っていこうと決意をした。


「テスト範囲はこんなところだろうか。御崎さんは苦手な教科ってある?」


 あまり勉強が得意じゃない御崎さんに声をかけた、彼女は端末を操作してテスト範囲のメモを残す。

 相倉さんが勉強を教えているようだけど僕からできる事があれば手を貸してあげたい。

 でも、自分の部屋に女の子が三人も来てるのは何だか変な感じだ。

 子どもの頃から仲がいいなんて言える友達すらいなかった僕がこうやって誰かと一緒に勉強するなんて言う機会はなかった。

 御崎さんが苦手な教科を教えて貰い、僕はテスト対策用のデータを彼女の為に準備しようと思った。

 勉強で苦労するのは学生の悩みの一つでもあるから少しでも御崎さんがテストの問題を解けるようになれば良い。

 学園サーバーを使って勉強に必要なアプリケーションはダウンロードできるようだ。中学生の頃にそういうデジタルな教材は使った事が無かったから、学園は一歩先の未来へ進んでいるんだなって感じる。

 玲さんは「自分で作った方が早い」と言っていた。


 僕たちは静かにテスト勉強を進める。LIMEで彼女らとやり取りをする様になってちょっとだけ充実した学園生活を過ごしている気がするんだ。


 勇人は改めて自分を変えていこうと決意して。学園に通う女子達にしっかりと向き合っていこうと思うのだった。

 彼が彼女に"再会"するのはもうすぐ後の出来事。

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