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23.「亜理紗の見上げる空の色は」

 最近というもの学園内には前とは変わった雰囲気が漂っています。

 そのきっかけはやっぱりと思える人物でした。


 彼が学園に入学して理事長から私達がこの学園に通っている本当の意味を聞かされた時は耳を疑いましたわ。

 私は幼い頃から母に憧れていてあんな女性になりたいと日々努力してきました、私の家は有名な家系で昔から跡取りは格式のある女性が継ぐ事が定められていました。

 母は娘である私を生むために国が管理している精子バンクから提供を受けて人口受精を選んだと聞きました。

 だからは私は父親の顔は知らないですし——何より男なんてものが存在する意味も分かりません。

 だけど、何の因果か子どもを産むには男性が必要だということ。

 ここ数十年で男女の人口比率は大きく逆転し、全人口の八割以上が女性中心になりましたわ。

 何で女性だけで子どもを生む事が出来ないんでしょう? 

 母に誘われて参加したパーティは女性ばかりで男性はほとんどいませんでした。

 私に相応しい相手なんてそうそういないと思いますし、何より私自身が男性を必要にしていない事です。


「それにしても本当に失礼ですわ!」

 学園に入学したたった一人の男子生徒【小鳥遊勇人】

 そもそも女子校に男子がいる事自体場違いなのに! 私をはじめとする他の女子達も彼の存在に疑問を持っていました。

 入学してそんなに日も経っていない頃急に全校集会が行われました。

 女子生徒全員が集められた会場の中で理事長による衝撃の事実を知る事に——私達は学園に通う三年間の間、小鳥遊君と恋人関係にならなくてはいけないというのです。

 家柄も今までの地位や名声は関係無く、学園に通う全ての女子生徒に平等に機会が与えられているということ。

 もちろんそれを望まない選択肢もあると理事長は言ってましたわ。

 とんでもない計画の成功が私達にかかっているなんて言われてもすぐに納得なんて出来ません。

 私は母みたいな素敵な女性になることに憧れてこの学園を選んだのにそんな裏があったなんて……。


 全校集会の後、教室に戻った私達に担任の香月先生から改めて自然繁殖推奨プロジェクト通称【ハーレム・プロジェクト】ついての説明を受けました。

 それぞれがどういう選択をするのかはこれから学園側がヒアリングを実施して決めるそうです。

 プロジェクトに参加する意思がない生徒は手続きを進めて新たな編入先の学校へ転校するとのこと。

 女子寮は退寮しなくてはいけませんし、恋麗学園に通っていたという事実さえも無くなってしまいます。

 入学当初から女子の派閥が出来、その中で順位の低い生徒は半ば強制的に従わされていました。

 まさに今までの地位や名声を武器に我が物顔で傍若無人の限りを尽くしてきた子が多くいました。

 けれど、もうそれらは何の意味も持たないという事が分かりました。


 例えどんなに家柄が優れていようと過去に素晴らしい栄誉を与えられていても学園に通っているうちはそれがゼロになる。

 今まで従者のような扱いを受けていた生徒と同じ立場となる。

 それに納得できない子は学園を去らなくてはいけないのです。


 生徒達がプロジェクトの真意を理解して学園内の雰囲気はガラリと変わりました。

 まずは今まで日の当たらない生き方をしていた子達が積極的にプロジェクトに関わっていくという強い意志を示し始めました。

 小鳥遊君に選んで貰えたら今までの生活を変えられる。自分を奴隷のように扱ってきたお嬢様達を見返すことができると張り切っています。

 みんな同じ立場——生徒達それぞれが考えて行動をするように変わりました。

 Aクラスの中でも変化が生まれましたわ。あれだけ身勝手に振舞ってきたお嬢様達が顔色に焦りを見せているという事。

 地位や名声などが関係無く、女の子としての魅力だけで勝負しなくちゃいけないのは彼女達の生き方を大きく変えるような出来事でもあるのです。


 私も入学した時に仲良くなっておこうとすり寄ってくるお嬢様は何人もいましたわ、ですがそう言う方々は私の方からお断りしました。

 損得勘定で人付き合いを続けるのは私には合わないからです。


 今日は小鳥遊君はお休みで男子寮で待機との事でしたが寮まで押しかけようと考えている子と少なからずいるみたいで教師達から注意を受けていました。


 私達の学園生活には避ける事のできない大きな課題があります。

 女子生徒それぞれが様々な想いと中には思惑を張り巡らせる子もいるみたいですが。

 この学園に通う意義を感じて毎日を過ごさなくてはならないということ。

 私も自分がどうするべきなのか考える必要がありますね。

 男性と恋愛関係になるのなんて想像できませんが卒業までには私が学園に通った証を残す事ができたなら、周りの変化に敏感になりつつも私の心の奥にある信念だけは曲げずにいようと思います。

 それがどんな結果を招こうとしても後悔はありません。


 茜色に染まった空はいつもと変わらずにそこにありました。

 これからどんな学園生活が待っているのかと思うとちょっとだけワクワクします。

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