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19.「自分の必要とされる理由」

「熱はまだあるかな?」

 体温計で熱を測る智佳、昨日の事はぼんやりとしか思い出せない。

 女子寮の自分の部屋に勇人が来てくれた事、起きたらベッドに寝ていた事、最初はその理由がわからなかったけれど、冷静になって考えたら顔から火が出るほど恥ずかしい…………。

 そっと置かれていたメモには二枚ある。メモの一枚目には今日の授業内容と必要な道具、学園からの連絡事項が書き込まれている。

 もう一枚目には「早く元気になってね」とだけ書かれている。

 智佳は勇人が部屋に持ってきたフルーツとお菓子に目が行く、誰かにお見舞いに来てもらったのなんていつ頃だろう? 

 お母さんはいつも仕事が忙しくて私が体調悪くなっても家に帰ってくる事なんてなかった。

 あたしには病気になった時に看病をしてくれる人なんていなかったから。


 勇人に昨日のお礼を言う為にLIMEアプリを起動する、直接言うのがいいんだろうけどなんか照れくさい。

 どんなメッセージを送るのか悩んだあげくシンプルに『昨日はありがとう』と書いて送信した。

 すぐに勇人から返事が来る、まだ智佳の事を心配しているようだった。

 学園で会えたら改めてお礼を言わなくちゃね。

 熱で辛かったあたしにとって小鳥遊君が来てくれたのは本当にありがたかった。

 学園では隣の席で、最近はよく話すようにもなった、男友達なんて今までいたことがないからなんだか新鮮。

 でも、それだけなの? あたしは小鳥遊勇人君の事をどう思ってるんだろう? 

 何度考えても答えはわからない。今楽しいからそれでいいのかも、フルーツの入れてある紙袋から苺を数粒口の中に入れて部屋を出る。



 *


「御崎さんが元気になってよかった」

 たった今自分の元へ届いたLIMEメッセージを読み終えてスマホをポケットに入れた。

 誰かのお見舞いに行くなんてことは僕も今まで経験が無かったらから緊張した、ましてや相手が女の子なんだから尚更だ。

 まっさらだった僕のスマホには女の子の連絡先が登録されている、これからもっと増えるんだろうか? 

 学園で迎える朝は悪くないと思えてきた、早く起きた日は校内を歩いて朝の風を感じる。

 御崎さんとは最初の頃と比べたら仲良くなれた気がする、なんて僕がそう思っていても彼女がどう考えてるのかはわからない。

 “ハーレム・プロジェクト”を成功させるにはもっとたくさんの女の子と関わっていかなくちゃいけない。

 だけど、僕は未だに自分から積極的に異性にアプローチをかけたことがない、それはわかってはいるんだけどなかなか難しい……。

 彼女達の将来も背負っているわけだからいい加減な気持ちで恋愛はできない、僕の事を好きだと思ってくれる子がもしもいたのなら——彼女達に必要とされる存在にならないと、卒業する時に学園生活が楽しかったと振り返れるように。

 それが僕がこれからやらないとならない事。

 プロジェクトの現在の進捗度も含めて母さんに中間報告をしないといけない、僕があの学園に通う意味をもう一度考えてみよう。

 相倉さんからLIMEメッセージが届く——今日のお昼を一緒に食べようという内容だった。

 僕は返事を返してから学園に向かう、一体どんな一日が待っているんだろう、楽しみだな。

 この時、勇人はこれからまた新しい出会いが訪れるのを知らなかった。



 *Someone's point of view*


「小鳥遊勇人。実に面白い存在だね」

 理事長から聞かされたとある計画——“ハーレム・プロジェクト”(正式名称自然繁殖推奨プロジェクト)が行われている。

 学園に通う一人の男子生徒【小鳥遊勇人】彼がプロジェクトの中枢を担ってれ。

 私はモニターに映っているアプリケーションを操作しながら彼の情報を入手する為に学園のサーバにアクセスした。

 だけど彼の情報はトップシークレットみたいでいくらアクセスしてもプロテクトがかかっていて見ることができない。

「直接会うしか無さそうだ」

 コーヒーを啜りながら作業を続ける。“ハーレム・プロジェクト”が遂行されている意味を私は知りたい。

 女子校にたった一人だけいる男子生徒に俄然興味がある。

 プロジェクトが始まって数日が経っているのだけどその間学園の生徒たちには変化があった。

 まずは女子生徒たちみんなが外見を気にし始めた、元々あまり派手なメイクをする子は限られていたけど、今ではほとんどの女の子が自分をよく見せそうと努力している。

 積極的に小鳥遊君に話しかける子もいるみたいだけどそれができない人もいる、男性に対して免疫がない生徒ばかりだから、中には一部彼の事を快く思っていないグループもあるみたいね。

 三年間しかない学園生活を平凡に過ごすのか? それとも……。

 上級生にはあまり時間は残されていない、卒業までの間に小鳥遊君と恋人関係にならなくちゃいけないのだから。


 名門な家柄のお嬢様が多く通うこの学園で誇れるものを残せるかどうか。

 ちょっと調べたらわかったんだけど上級生はかなりギスギスとした関係みたい。

 元々プライドが高い人ばかりが多くて自分の家と他人の家を比較して周りの人間を貶めていたけれど、プロジェクトが始まって全校生徒にチャンスがあること、たとえ家柄が優れていたとしても小鳥遊君に選んでもらえないのなら学園にいる意味も無くなる。

 今まで他人を見下してきた子らには焦りの表情が見えた、逆に今までそんな彼女達に嫌味を言われていた子たちはやる気になっていた。

 どこの名家の娘であろうと関係ないのだから、小鳥遊勇人に恋人に選ばれたら将来は約束されたものになる。

 彼が気づかない場所で女子達の戦いは始まっていた。


 こんな私でも唯一覗けない場所があった——それは男子寮、一応理事長からは学園のセキリュティ管理を任されている、学園に設置されている監視カメラの映像を検証したり、不審者が侵入していないか調べたり学園のサーバがハッキングされないようにソフトをインストールしたりやる事はたくさんある。

 私は一日中この部屋にいる、幸いトイレやお風呂も設置されていて生活するのは困らない。理事長が特別に作らせた部屋でここの鍵の管理も私がしている。

 女子生徒である私がこの作業をやっているのも外部から人を入れたら映像を悪用される可能性があるから。

 入学前に私のスキルを理事長に見せるとこの役目を任された、授業を受けることができないんだけど特別な試験を受ける事で進級できる。

 普通に授業を受けている子たちじゃ絶対にわからないような内容の問題がズラリと並ぶ。

 食べ物や作業に必要なものは学園側が用意してくれる、元々あまり人前に出るのが好きじゃない私には今のこの空間は居心地がいい。

 映像の管理を任されているから女子生徒達のうふふな映像だって手に入れようと思えばすぐにやれる。

 まあ、私はそんなものに興味はないんだけどねー。

 閑話休題。

 男子寮は学園の一部セキリュティシステムが適用されていない、と言っても監視カメラでの映像解析ができないだけなんだよね。

 だから私が男子寮で何が起こっているのかを知る術はない。

 男子寮の場所は知らない生徒がほとんどだから何か問題が起こるとは思えない、もちろん小鳥遊君が女子寮に行って騒ぎになる場合もある。

 けれど、この学園の女子は自分の部屋から出ることがあまりないからトラブルが起こる可能性は低い。


 問題が起こらないようにするのが私の仕事なんだけどね。ちょっとだけ眠ろうと思って横になる。

 理事長が用意してくれたシングルベッドに倒れこんで仮眠をとる。

 ここ最近は割と忙しくて睡眠時間がかなり削れていた、そろそろちゃんと寝ないと体に支障をきたすかもしれない。

 何かあった時は自動的にわかるようになっているから大丈夫。

 目を閉じるとあっという間に眠りにつけた。

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