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15.「登録No.2御崎さん」

 午後は何もなくいつも通りの時間が過ぎて行った。

 ホームルームで香月先生から女子達に注意する連絡があった、この間僕の身に起こった出来事は学園中には知られているようだ。

 どうやらこのクラスにも心当たりがある生徒がいるみたいで何人かの子は自分達のやった事の重大さがわかって反省してるってところかな。

 無理矢理自分を結婚相手に選ばせるなんていう行為は許される事じゃない。

 第一にそれで結婚したとしてもうまくいく保証なんてどこにもないんだから。

 僕に選ぶ権利があるけれど、彼女達の気持ちを考えないで恋人になることなんてできない。

 放課後、それぞれが自分達の時間を迎えて活動を始める。

 僕は帰る支度をする前に隣に座っているクラスメートに声をかけた。

「御崎さん、今話せるかな?」

 連絡先を教えてもらうだけなのになんだか緊張する…………。

「何?」

「ああ、いや、その…………」

 自分から用があると言っておきながら口ごもってしまうのは本当に情けない。

 女の子と話すのは慣れてきたと思ってたんだけどなあ。

 なかなか言い出し切れない僕を御崎さんがじっと見てくる。

 一旦深呼吸して落ち着いてから意を決して言葉を発する。

「あのさ、僕は御崎さんと仲良くなりたいと思っているんだ。だから、良かったら連絡先を教えてくれないかな?」

 変に気取ることの無いように僕の素直な気持ちを彼女に伝えてみた。

「…………いいよ」

 そう言うまでに少しだけ間があって不安になったけど、御崎さんは嫌とは言わなかった。

「今携帯出すから」

 カバンにしまっている携帯を取り出して画面をタッチする。

「あたし、携帯に友達の番号登録するの初めてなんだ」

「えっ…………そうなんだ」

「なによ、悪い?」

「いや、別に悪くはないけど…………。僕も最近まではそうだったし、親以外だとお手伝いのメイドさんくらいしか連絡取ってなかったから」

 なんてちょっと自分の事を話してみたけど御崎さんには興味のないことかもしれない。

 僕はスマホのロック画面の解除をしてアドレス帳を開いた。

「御崎さんはLIMEってやってる? 僕は最近やるようになったんだ。良かったらそっちの方も教えておくよ」

「アプリはダウンロードしてるけど使ったことない」

「そうなんだ、メッセージのやりとりとかできて色々便利だよーって言っても僕も使い方は最近覚えたばかりなんだけどね」

 御崎さんのLIMEを登録する——今のところは相倉さんと彼女の二人だけしかいない僕の“友達”ページ。

「あのさ、登録したのはいいんだけど、知り合いかも知れないってとこにあの子の名前出てくるんだけど」

「もしかして相倉さんのことかな? あの子が一番最初に登録した相手なんだ」

「あの子と仲良さそうだもんね。いつもお昼にわざわざうちのクラスまで小鳥遊君を迎えに来てるし」

「一緒にお昼ご飯を食べてる約束した時だけだよ。それに今日は相倉さんから朝にLIMEにメッセージがあったから一人でご飯食べようと思ってたわけだしね」

「そうだったんだ」

 僕達はお互いの連絡先を交換し終えた。

 家族以外で登録された二人目のひと、嬉しくてずっと携帯の画面から目を離せなかった。


「あたし、LIMEとかメールはあまり使わないからメッセージ来ても返事遅くなっちゃうかもしれないから」

「大丈夫だよ。返事ができるときにしてくれたからいいから」

「ありがとう。そうするね」

「それじゃあ、これからどうする? 僕は寮に戻るつもりだけど」

「あたしも、女子寮の部屋に帰るわ。今日も疲れたから早く休みたいし」

「うん、わかった。ちゃんと寮まで送るよ」

 荷物をまとめて教室の鍵を職員室に返した後、御崎さんを女子寮まで送った、帰る途中は特に会話をしなかったけどそれでもいいんだ。

 男子寮に戻って制服から私服に着替えていると携帯が鳴る——僕はすぐにスマホを確認するとLIMEにメッセージが届いていた。


『さっきは寮まで送ってくれてありがとう。本当は寮に戻る前に言うべきだったんだけどタイミング逃しちゃって言えなかったの、今は部屋に戻ってゆっくりしてるんだけど、小鳥遊君にお礼を言わなきゃと思ってメッセージしてます。あたし、こうやってやりとりするの初めてだからまだ慣れなくてメッセージちゃんと届いてる?』


 文章を読み終えて返信するためにキーボードを表示する。

 慣れない彼女が一生懸命にメッセージをしているシーンが思い浮かんでくるなあ。

 僕はすぐに『どういたしまして、メッセージはちゃんと届いているよ。これからよろしくね』と返事をしてから着替えて脱いだままの制服を仕舞ってベッドに寝転んだ。

 さっき届いたメッセージを何度も読み返しながらその日はいつもより遅い時間に眠りについた。



 *Tomoka point of view*


『どういたしまして、メッセージちゃんと届いているよ。これからよろしくね』


 小鳥遊君からの返事はかなり早くあたしの元へ届いた。

 誰かとこうやってやりとりする事に慣れていなかったあたしはそのメッセージに返信をしようかなと考える。

 だけど、彼はできる時に返事をすればいいと言ってくれたし今日はまだ初日だからあまりメッセージ送ったらしつこい女の子だと思われちゃうかもしれない。

 仲がいい男友達なんて今まで一人もいなかった、男なんてって思う事があったけど、彼はあたしと仲良くなりたいと言ってくれた。

 学園に通う女の子全員に小鳥遊君の恋人になるチャンスがある。

 Fクラスの相倉さんみたいに積極的な子もいるかもしれない。

 自分が恋愛をしてるとこなんてイメージ湧かない。

 今のままのあたしなら小鳥遊君は恋人に選んでくれない。

 他の子みたいにやれる自信もない、第一に彼がどういうひとなのかも知らないわけだし。

 けど、学園に通っている間は何もしないのは選べない。

 理事長はあたし達の意思を尊重するって言っていた。

 小鳥遊君と恋愛関係になりたくない子は別の学校へ転校する事だってできる。

 将来のことなんて今はっきりしてるわけじゃないけど選択肢があるだけあたしらは恵まれているのかもしれない。

 これから彼と仲良くなっていけば変わっていくことができるのかな? あたしにも自分のやりたいことが見つかるのかな?

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