表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

113/115

110.「Wave Form」

 寮の個人の部屋にそれぞれPCが設置され、共有のオンラインチャットサーバーが開設される話が出て──近いうちに業者が最新型のパソコン設置と導入工事をやる事に決まった。

 きっかけは玲さんの一言だった。


「そう言えば君たちの部屋にはPCはあるのかい? 私はこの聖蘭寮に転居してくる際に学園側に要望を出したのさ」

「そうなの? 私の部屋にはパソコンはないよ。インターネットを見るならスマホがあれば十分じゃない?」

「……あたしもそう思う。パソコンって便利だとは思うけど実家にいる時もそんなに使ってたわけじゃないよ」

「ほほう、では君たちはもしかしてPCの操作には慣れていないということになるね」

 不敵な笑みを浮かべる玲さん──何を企んでいるんだろう? 僕は共有の冷蔵庫に入れておいたお茶を取り出してコップに注ぎながら彼女たちの会話を聞いていた。


「小鳥遊君はどうだい? 君の部屋にPCは設置されているのかな?」

「うん。僕の部屋にはノートパソコンがあるよ。あくまでも学園側から借りている端末だけどね、レポートの作成とかもしなくちゃしけないから、あとはネットで色々調べ物をする時にも使っているよ」

「へえー、小鳥遊君は藤森さんみたいに希望を出したんですか?」

「ううん、この寮に移ってきた日にはもうノートパソコンは部屋に置かれていたらから多分事前に準備してくれていたんだと思うよ」

「今の時代確かにスマホが主流かもしれないが、あれはあくまでも通信がメインの機器だろう? やはりパソコンくらべると性能に差がありすぎるのさ」

「……学園側では授業では専用のタブレット端末を生徒に支給してますよね。『授業の内容をすぐにまとめられて便利だし、提出物を忘れる心配がない』っていう声があるみたいですから皆さん満足しているのではないのでしょうか

 」

「ああ、そうだろうね、だが、あの端末はいかんせん機能性がね、あれなら私のマシンを使用したほうが効率的さ。まあ、タブレット端末とパソコンを比較するというのはナンセンスかもしれないが」

「けれど、みんなが藤森さんみたいにパソコンを持っているわけじゃないよ? パソコンってかなり高くない? 学生の私たちが簡単に帰るようなものではないし……」

「性能のいいものから低スペックのものまで様々なタイプがあるけれど、使用用途で決めたらいいんじゃないかな? 僕ら学生は最低限な機能があれば十分だからね」

 僕は飲み終えたコップを食洗器においてからエントランスのチェアに座って彼女たちの会話に加わる。

「小鳥遊君、君が話に加わってくれるとはありがたい! 君の部屋の端末はどういうものだい?」

「スペックは至って普通かなあ。ネットには繋がるし、無駄なソフトはインストールされていなから動作は快適かな。動きが鈍いとレポート作成にも影響が出るから困るから最新型のモデルを利用したいとは考えているけど」

 みんなは玲さんのパソコンに関する知識をたまに質問も交えながらトークをしていく。

 玲さんは一人一人の質問に的確な回答を出してあくまでも相手の考えに寄り添いながら自分の見解を述べていく。

 まるで授業をしているような雰囲気が寮内漂っていると玲さんは何かを思いついたかのように目を輝かせた。


「そうだ、この際学園に要請してこの寮の個人の部屋にPCを設置してもらおう。実は今“小鳥遊班”共有のオンラインチャットサーバーを立ち上げようと考えているんだ。スマホではLIMEでもコミュニケーションは取れているが、より親睦を深めるために専用のチャットはどうだろうか? マシンの使い方の練習にもなるだろうし、チャットなら大きな負担には繋がらない。この寮のネットワーク設備やシステムに関しては私が管理しているから安心していいさ。準備ができたらすぐに学園側に要請しておくよ」


 一度白熱すると一気に進めてしまう行動力には目を見張るものがある──僕は関心しながら玲さんの考えを皆にも再度確認してみる。


「って玲さんは言っているのだけど、みんなはどうかな? 僕は共有チャットには興味があるし、賛成だよ。LIMEとは違うけど、仲を深めるにはいい素材になると思う」


 それぞれが頷いて賛成するけど、まだ入寮したばかりの姫城さんは不安そうな表情を浮かべていたら御崎さんが『大丈夫よ』と彼女の肩に手を乗せて言葉をかけて不安を解消してあげていた。



 さりげなく他の人に気を遣って優しくできるのが御崎さんのいいところだなあ。僕も見習いたい。


 全員の意思確認をしてから玲さんはすぐに学園側に連絡して『聖蘭寮』に最新型のパソコンの導入が決まった。

 パソコンに詳しい玲さんがネットワーク関連の準備を進めて自分のマシンをオンラインに接続してすぐに専用のオンラインチャットルーム「Wave Form」が開設された。

 由来は電子上の波形を意味する英語らしい──電子の波がシグナルになってそれぞれのパソコンから電子空間にアクセスされるっていうイメージ。実に玲さんらしいくて秀逸なネーミングセンスだな。



 部屋に戻ってから僕は、玲さんに教えてもらったアドレスから開設されたばかりの専用のチャットにアクセス──もういくつかのルームが作成されていて、管理人兼サーバーの運営の玲さんがLIMEとは違うアイコンですぐにトークを始めた。

 皆の部屋にPCが導入されるまでの間は僕と玲さんの個人的なやり取りがメイン。早く相倉さんたちにも参加してほしいなあ。

 夜寝る前まで玲さんとチャットを続けて「おやすみなさい」と別れの挨拶を済ませてもすぐには寝ずにさっきまでのチャットの内容を振り返っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ