冒険者のお仕事 その六
「いやー、ものすごい風なのよー」
「うん。家とか飛んでいってるもんね」
「この地方では年に何回かこんな風が吹くから、お家とか壊れてもすぐ直せる設計にしてるらしいのよー」
「そうなんだね。若干の諦めを感じるね」
「この風に耐えようと思ったら、お城並みの堅牢さがいるのよ。土地によっていろんな違いがあって、面白いのよー」
「そんな違いを探すのも、また一興ってやつだね……あっ、家はともかく、人は大丈夫なの?」
「大丈夫なのよー。みんなこの時期は地下室にこもるらしいのよ!」
「……最初から地下に全部作ってしまったらいいんじゃないの?」
「……リリー?」
「うん?」
「例えばトナカイの角が風に飛ばされてなくなったら、どう思うん?」
「えっ……ちょっと違和感あるかも?」
「つまり、そういうことなのよー」
「うん……んー? わかったような、そうじゃないような……」
「そんじゃそろそろ、お仕事をするのよー!」
「わかった!」
「ちなみに、今回のお仕事は、『いい加減この強風をなんとかしたい』ってやつなのよ!」
「そりゃぁ、家を吹き飛ばすような風なんて無い方がいいよね」
「トナカイ的には面白くていいんけどねぇ」
「トナカイだったら、飛ばされて喜んでそうだもんね。無邪気で可愛いところがあるよね」
「面と向かって言われると、ちょっと恥ずかしいのよ……とりあえず、風の発生源を調べるのよー!」
「吹いてくる風に向かっていけばいいのかな?」
「きっとそうなのよ! そんじゃ、行くのよ!」
「おーっ!」
「すごい風だよね」
「うむ、時々色んなものが飛んでくるのよー」
「家の破片、石ころ、牛、女の子と、本当に色々飛んでくるよね」
「ちなみに牛と女の子はキャッチして安全なところリリースしてきたのよ!」
「危ないもんね」
「およ? あれが原因っぽいのよ!」
「こんな所に古びた祠があるね。誰も手入れしてなさそうだけど……おぉっ!? 突風が!」
「多分ずーっと昔に忘れ去られた祠なのよー。この祠の主が風を起こしてるみたいなのよー」
「忘れられて怒ってるのかな?」
「うむ、ちゃんと祀ったら多分大丈夫になるのよー」
「じゃあ、早速やってみようよ」
「うむー!」
「トナカイ特製のお菓子をお供えするのよー!」
「トナカイのお菓子はおいしいから、きっと気に入るね」
「むふー、あとはお祈りするのよー」
「トナカイと私が末永く幸せになりますように……」
「リリー、それはなんか違う気がするのよー」
「そうなの?」
「トナカイ、お祈りに詳しくは無いんけど、神様的なのんからしたら、何かをお願いされるより、感謝された方が嬉しい気がするのよ!」
「なるほど。それじゃ、何となく感謝しておこう。ありがたや、ありがたや……」
「リリーが雑な感じで感謝しだしたのよ……もいっこお菓子を増やしとくから、機嫌を直して欲しいのよー。リリー、そろそろ帰るのよー」
「うん! 強い風、もう吹いてないね?」
「うむ。きっと、もう大丈夫なのよー」
強風に悩まされていた町の人々が忘れ去られていた祠を大事にするようになってから、全てを吹き飛ばすような強い風が吹くことはなくなったそうな。




