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リリーの料理レッスン その二

「ねぇトナカイ」

「どしたんリリー?」

「そろそろ、次の段階に進むべきだと思うの……」

「……そう、ねぇ。わかったのよ! 準備してくるから、ここを通る人でも数えながら待っているのよー!」

「えっ、こんな森の中を人が通るの……行っちゃった」



「千二百五十六、千二百五十七……なんでトナカイが行った後から急に人通りが増えるの!?」

「ただいまなのよ!」

「あ、トナカイおかえり! ……あれ? 急に人がいなくなった」

「多分それ、この近辺で散った人たちの霊なのよ。そんなことより準備ができたのよ! こっちなのよー!」

「うん……えっ? 今の全部、幽霊? 幽霊だったの!?」



「……なんだか、この前の訓練場より豪華になってない?」

「リリーがたまごを作るための場所だから、頑張ったのよ!」

「なっ!? と、トナカイ? それどういう意味「ささ、早く中に入るのよー」……えっ? そういうこと、なの?」



「「……」」

『卵の山』

「……ですよねー。うん、なんの勘違いもしてなかったよ? ホントだよ?」

「どしたんリリー? 若干顔が赤いのよー?」

「何でもないから、気にしないで。あと、言葉は略さずに全部言わないとダメだと思うの」

「ふむ? よくわからないけど、気を付けるのよ! それじゃ、頑張って玉子焼きを作るのよ!」

「うん、頑張る!」

「まずはー、卵を割るのよ!」

「えいっ!」

「おー、一発成功なのよ! もう卵割り名人なのよ!」

「えへへ……」

「次はー、調味料を入れてかき混ぜるのよー!」

「これなら出来そう!」

「うむ、そんな感じでいいのよー。それじゃ、次は……卵を焼くのよ!」

「ごくり……とうとう、料理っぽくなってきたね」

「フライパンを熱してー、こうしてああして、ほいっ! ささ、リリーもやってみるのよー」

「フライパンを熱して……あっ」

「リリー? フライパンは、そんなに強く握りしめなくても大丈夫なのよ?」

「うん、ちょっと力加減を間違えたね。取っ手が取れちゃった……」

「気を取り直して、もう一度やるのよー!」

「うん、頑張る!」



「「……」」

「トナカイ……私、挫けそう」

「だ、大丈夫なのよリリー! 訳の分からないことをしなかったら、普通に作れる……はずなのよ!」

「そ、そんなに変なことしてないもん」

「……早くフライパンを温めようとして、ブレスを吐いたり」

「うっ!」

「焦げるのは熱過ぎるからだよね、とか言いながら氷魔法をかけたり」

「はうっ!」

「その他いろんな、工夫という名目でやったこと、もう一回振り返ってもいいのよ?」

「トナカイがいじめる……反省してもうやってないもん!」

「うむ、落ち着いてやればできるのよ!」

「……反省した後、言われた通りやったのに、卵が弾け飛んだけど」

「あれはトナカイにもよく分からない現象なのよ!」

「料理って、不思議なことが起こるんだね。もう一回、やってみる!」

「うむ! 応援してるのよ!」

「すぅ……はぁ……いきますっ! フライパンを熱してー!」

「そうよ! 余計な工夫をせず普通にやるのよ!」

「こうしてああして!」

「うむ! 焦らずに卵を焼くのよ!」

「ほいっ!」

「「……」」

「「できたー!」」

「やったよトナカイ! ついに玉子焼きを完成させたよ!」

「しっかり見ていたのよリリー! これでリリーも料理人もしくは料理ドラゴンなのよ!」

「うん! これから毎日玉子焼きを作って、トナカイに食べさせてあげるね!」

「リリー、さすがに毎日玉子焼きは、飽きると思うのよー」

「えへへ、確かにそうだよねー」

「さて、それじゃ早速、食べるのよー!」

「「いただきまーす!」」

「「……」」

「……と、トナカイ?」

「……リリー、これって」

「「超辛ーー!!」」



「辛さで死ぬかと思ったのは、生まれて初めて……」

「びっくりするほど辛かったのよ!」

「頑張って作った玉子焼きが、なんでこんな事に……」

「リリー……もしかして、あの小瓶の中身を入れなかった?」

「え、うん。ちゃんと言われた通り、あれと、それと……あれ、なんだか瓶の色が、違う」

「これは、塩に似ているけど全くの別物なのよ! その名も『デス辛子の粉末』よ!」

「なんでそんな物を置いてるのよトナカイィィ!」

「この調味料は、死ぬほど辛い反面、うまく使えばとーってもおいしいお料理ができるのよ!」

「そうなんだ……でも、私が作る玉子焼きには、関係、ないよね?」

「うむ! リリーがこれを使うのは、まだ無理なのよ!」

「じゃあそんなもの置かないでよぉぉ!!」

「済まなかったのよぉぉ……」



 次に作った玉子焼きは、ちゃんと美味しくできていたそうな。




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