トナカイとリリーのダンジョン探索 その八
ダンジョンの最果てで大量のガーディアンに囲まれるトナカイたちであった。
「ガーディアンども、あいつらを始末しろ」
「ものすごい量のガーディアンなのよ!?」
「この部屋が無駄に広いのって、たくさんのガーディアンを召喚するためだったのかな?」
「この状況でお喋りとは余裕だな。だが、その余裕はいつまで持つんだろうな?」
「リリーは弱体化で動けない、トナカイはリリーを抱えて片手しか使えない、相手のガーディアンは百ほどなのよ……」
「ほぼ一対百っていう、ちょっとありえない状況だよね……やっぱり私を置いて戦った方がいいと思う。すごく残念だけど」
「んー、リリーには申し訳ないけど、そうさせてもらうのよ! その代わりトナカイが一肌脱ぐのよ!」
「何だ、やっぱり着ぐるみだったのかそれ」
「そういう意味じゃないのよ!? トナカイの本気を見せる時が来てしまったのよ!」
「トナカイが本気って、例えばドラゴンに変身して戦ったりとか……ごくり」
「リリー、そんな期待した目で見ても、トナゴンに変身はしないのよ?」
「えっ……そっかぁ」
「後でトナゴンに変身してあげるから、あからさまに落ち込まないで欲しいのよぉ」
「わかった、トナカイ頑張って!」
「……ここから先はあんまりリリーに見せたくないから、目隠ししておくのよ!」
「えぇっ、せっかくトナカイが活躍する場面なのに見れないなんて!」
「とりあえずリリーの安全を確保しておくのよ。お部屋の端の方にベッドを置いてリリーを寝かせてー、破片とか飛んで来たら危ないから透明な壁も置いてー、ああしてこうして、ほいっ!」
「……なぁ、いつまで待たせるんだ?」
「もうちょいだけ待つのよ! ……これでいいのよ!」
「……お前は一体何者なんだ。というか、俺様の部屋の隅に居住スペースみたいなもんを作んなよ」
「心配しなくても終わったら撤去するのよ」
「はっ、終わった時にはこの世からおさらばしてるだろうさ!」
「最後に、トナカイの武器を変えるのよーいしょっと」
「ごつい槍だな。それが本当の武器か」
「この槍は危ないからめったに使わないのよ。今回だけ特別なのよ!」
「せいぜい足掻け!」
「蹴散らしてあげるのよぉぉ!」
「戦いが始まったみたい……トナカイは詰めが甘い。こんな目隠しなんて、少し小さくなったら簡単に外れるのにね」
「いまだに体はほとんど動かないけど、頑張れば首とかは少し動かせるから、なんとか戦闘シーンを見れるはず!」
「おぉ……トナカイが槍を使って戦ってる!」
「うわぁ、トナカイの前にいたガーディアンたちの足が飛んだ……あれ、足払いの槍バージョンだよね。えげつない攻撃……」
「次はガーディアンの首が飛んだ。トナカイの槍、凶悪な威力だね……並の人間が見たら、ちょっと怖いかもしれない。この光景を、私に見せたくなかったんだね」
「でも私はトナカイの生涯のパートナーだから、この程度でトナカイを敬遠することはないんだよ!」
「……戦うトナカイ、強くてかっこいいなぁ。こんなのを見せられたら、惚れなおしちゃうよね」
「私だけが知ってるトナカイの勇姿だね……えへへ」
「……なんて呑気なこと言ってるぞ?」
「リリー……トナカイ、恥ずかしさで悶えそうなのよぉぉっとー!?」
「油断してんじゃねぇよ! ガーディアンはまだまだ残っているぞ?」
「弱体化のせいで、全力で戦ってなんとか倒せてる感じなのよ……ちょっと楽しくなって来たのよぉぉ!」
「まだ余裕があるな。それじゃ、もっと増やしてやるよ!」
「まだ増えるん!? こうなったら力つきるまで暴れるのよぉぉ!」
「まさに乱戦って感じだね。トナカイが死とは無縁の精霊じゃなかったら、心配でここまで落ち着いて見ていられなかったと思うよ」
「そういえばトナカイって、戦ってるときあんまり技名とか言わないよね。名前がついてないのかな?」
「……そうだ、私が何か技名を考えてあげよう。きっとトナカイ、喜ぶよね!」
「トナカイが大きく槍を振り回した! えーっと、トナ回転!」
「足払いで倒れた相手に上段から槍を叩きつけた! んー……トナぺちーん!」
「槍を片手で引いてぐっと溜めてからのー、突き出し……槍が伸びた!? えーっとー……伸びるトナ刺し!」
「……ふぅ、我ながらいい感じの技名だね」
「トナカイの精神的ライフはもうゼロなのよぉぉ!?」
「少しだけ同情するぞ」
「これ以上新しい技名を付けられる前に終わらせるのよ! トナカイ必殺広範囲どーん!」
「お前らのネーミングセンス、同レベルじゃねぇか!? それより一振りで全てのガーディアンを破壊するとは……もう魔力が残ってねぇな。まさかダンジョンマスターとなったこの俺様が負けるとは」
「厳しい戦いだったのよ……主に精神的になんけど」
「もうダンジョンを維持する魔力も残ってねぇ。後は崩壊して消えるだけだ」
「そうなんねぇ」
「……最後にひとつだけ言わせてくれ」
「うむ、しっかり聞いておくのよ」
「リア充、滅びろ!」
「何となく清々しい感じだったのが台無しなのよ!?」
「やかましいわ! せめてお前らを道ずれに崩壊してやる……うおおおぉぉ」
「あっ、ダンジョンコアだけ残して消えちゃったのよ……最後まで厄介だったのよぉぉ!?」
崩壊するダンジョンのコアに無理やり魔力を注ぎ、なんとか崩壊の危機を脱したトナカイであった。
ちなみに、大量の魔力をコアに注いだため、トナカイがダンジョンマスターとして再設定され、新たなダンジョンとして生まれ変わるのだが、それはまた、別のお話。




