トナカイとリリーのダンジョン探索 その五
魔物との戦いで埃っぽくなった体を綺麗にするため、うっかり大量の水を出して流される、トナカイと被害者リリーであった。
「……ひどい目にあった」
「かなり奥まで流されたのよぉ」
「勢いよく流されたおかげで、途中の魔物との戦闘を回避できたね。代わりに服は中までびちょびちょだし、お宝とか素材とか全然回収できなかったけど」
「すまなかったのよ! お詫びに服を乾かしてあげるのよ!」
「えっ……こ、こんなところで脱げだなんて、トナカイったら大胆にも程があるよ!」
「リリー? トナカイ、別に服を脱いでとは言ってないのよー。だから外したボタンは付け直すのよ!」
「えっ……うん、わかった」
「そもそもリリーの服は首輪が用意してるのよ! つまり魔法的なあれだから、よく考えたらリリーが念じればすぐ乾くのよ!」
「あ、そっか。んー……おー、乾いた」
「むふー、とっても便利なのよ!」
「うーん……でもダメだよトナカイ。服は乾いたけど、体が濡れてるからまたぐっちょりだよ!」
「そうなんねぇ。そんじゃ、トナカイが風の魔法でぶわっと乾かすのよ!」
「待ったー! またうまく制御できなくて吹き飛ばされる未来しか見えないよ!」
「そう言われると、そんな気がしてきたのよー。そんなら、服をタオルっぽいのんにしたらどうなん?」
「なるほど、それならできそうな気がする……おー、できたよトナカイ!」
「うむ、真っ白なタオル生地のローブなのよ。なぜかリッチな見た目に見えるのよ!」
「この服が真っ白で綺麗だし、体を拭くための服なんて貴族くらいしか使わないから、そう見えるんだと思うよ。普通は水浴びしたら、綺麗な布で拭いて終わりだもん」
「ふかふかなベッドとグラスに入ったお酒を用意したら、更にそれっぽくなる気がするのよ……というわけでベッドとお酒を用意したのよ!」
「思いついてから用意するまでが早すぎるよトナカイ! というか創造の力は普通に使えるんだね」
「そう言われてみると、創造の力は特に制限された感じがないのよ!」
「便利だね……」
「せっかくベッドを用意したから、しばらく休憩するのよ!」
「うん。あっ、そういえばもふもふが途中だよ!」
「むふー、さっきのお詫びにいっぱいもふもふしてもいいのよー」
「えへへ……それじゃ遠慮なくベッドの上でもふもふしよっ!」
「本当にリリーはもふもふが好きなんねぇ。目がキラキラしてるのよー」
「もふもふ……あぁ、もふもふだよぉぉ……」
「もう何も聞こえてなさそうなのよ」
目の前にある、この先にボスがいますと言わんばかりの大きな扉そっちのけで、休憩するリリーとトナカイであった。




