トナカイとリリーのダンジョン探索 その四
「進むごとに、魔物が強くなっている気がする」
「うむ、力を一割程度に抑えられてるから、さすがのリリーも苦戦してるのよ!」
「ま、まだまだ余裕なんだもん……あれ? そういえばトナカイ全然戦ってないじゃん!」
「むふー、とうとうばれちゃったのよ!」
「もぉぉ! 私ばっかり戦ってトナカイがさぼってるなんてずるい! 次から交代で戦ってよね!」
「わかったのよー」
「ピギャーッ!」
「魔物がきたのよー。これをトナカイが倒せばいいのねー。ほいっ」
「ピギャッ……」
「なんか弱い魔物だったね。 じゃ、次の魔物は私が倒すね」
「任せたのよー」
「グルルァァァッ!」
「はい、リリー頑張るのよー」
「ちょっと強敵だね。せいっ!」
「グルァッ……」
「さすがリリー、危なげない戦いなのよー」
「ふふっ。このくらい、ドラゴンの敵ではないんだよっ」
「頼もしいのよー。そんじゃ次の魔物はトナカイが倒すのよー」
「うん、よろしくね」
「ピヨォォ!」
「また魔物が来たのよー。そんじゃトナカイが倒すのよー。ほいっ」
「ピヨッ……」
「すごく弱い魔物だったね。 それじゃ次は私の番ね」
「うむ、頼んだのよ!」
「ギャォォオオ!!」
「はい、リリー頑張るのよー」
「なんで私のときばっかり強そうな魔物が出るの!?」
「リリー? ドラゴンにとって、このくらいの魔物はー」
「いや、確かにそうだけど! 倒せないとかそういうのじゃなくて……なんだかなぁ」
「リリーとでっかい魔物が、いい勝負をしてるのよー」
「くらえドラゴンクロー!」
「ギャォォ!!」
「……ふぅ、やっと倒せたよ」
「お疲れなのよー」
「ちょっと倒す順番交代! 次も私が倒す!」
「わかったのよー。そんじゃ任せたのよ!」
「ガオォォ!!」
「……なんとなくそんな気がしてた」
「そんじゃ、よろしくなのよ!」
「うん。もうあんまり深く考えないことにする」
「ガルルァッ!」
「ふっ! せいっ!」
「でっかい魔物の猛攻をうまく避けながら反撃してるのよ!」
「隙あり! --ッ!」
「ガフッ……」
「リリーのドラゴンブレスが魔物をとらえたのよ!」
「弱体化が地味に辛いね。ちょっと疲れてきちゃった」
「お疲れなのよー。ここらでちょいと休憩するのよー」
「うん。頑張ったからもふもふして!」
「むふー、リリーは甘えん坊さんなのよー。はい、もふもふー」
「えへへ……はっ! ちょっと待った」
「んー? どしたんリリー」
「連戦で体がちょっと埃っぽくなってる。このままじゃトナもふを堪能できないよ!」
「そうなんねぇ。そんじゃ水の魔法で洗い流すのよー」
「うん、お願い」
「ぐーっと魔力をこめてー、えいっなのよ!」
「!? トナカイ、ちょっと水の量がおかしい!」
「……どうやら魔法を制御する力も弱まってたみたいなのよ!」
「ぴゃぁぁ!? 流されるぅぅ……」
「これが本当の、洗い流すってやつなのよぉぉ……」
ダンジョンの罠というより、自ら窮地に陥ったトナカイたち。
大量の水とともに、ダンジョンの奥へと進む(流される)二人であった。




