トナカイの遊び道具
「リリー、ちょっとこっちに来るのよー」
「どうしたのトナカイ?」
「こんなん作ったのよー!」
「これは……帽子?」
「うむ、これは夢の中で遊ぶための魔道具なのよ!」
「おー、すごいねトナカイ!」
「頑張って創ったのよー」
「自作なんだ、これ……」
「ちなみにとっても頑丈なのよ!」
「おー……いや、これ頑丈さ、いるの?」
「リリーがどんなに寝相悪くてのたうち回っても、壊れないのよ!」
「それはすごい……トナカイ、それ暗に私の寝相が酷いって言ってない?」
「そんなことはないのよーん。ただの例えなのよーん」
「それならいいんだけど……何だかなぁ」
「ささ、そんなことより、早速試すのよー!」
「わかった」
「で、とりあえずかぶってみたけど、これからどうしたらいいの?」
「寝るのよ」
「……えっ?」
「夢の中で遊ぶための魔道具なのよ? 夢を見ないと始まらないのよー」
「そりゃそうだよね。頑張って寝る」
「うむ、トナカイが子守歌を歌ってあげるのよー」
「わーい!」
「トナカイの子守歌はまだまだ続くのよーん」
「トナカイ、やっぱり子守歌はいいや」
「んー、そうなん?」
「うん、なぜか目が冴えた」
「ありゃー? そんじゃ、膝枕をしてあげるのよー」
「わーい!」
「リリーは甘えん坊さんなのよー」
「うん、トナカイにだけ甘えるの」
「むふー、なでなでなのよー」
「んー。んふふ……すやぁ」
「寝るの早いのよ!? トナカイの子守歌を一時間聞いても寝なかったリリーが、膝枕で十秒かからず寝たのよ」
「ここは? そっか、私寝たんだった」
「むふー、魔道具は無事に発動したのよー」
「どこからともなく、トナカイの声がする」
「魔道具を通してリリーに話しかけてるのよー」
「そうなんだね」
「夢の世界ではねー、自分の願い通りのことが起こるのよー」
「さすが、夢だね!」
「ちょっと何かしてみるといいのよー」
「してみるって、どうやって?」
「願うだけでいいのよー」
「わかった。んー……」
「リリーは食いしん坊さんなのよー。食べ物がいっぱい出てきたのよ!」
「ち、ちがうもん! ぱっと思いついただけだもん!」
「むふー、そういうことにしておいてあげるのよー。試しに食べてみるといいのよー」
「うん、いただきまーす! はむっ……おいしい!」
「むふー。 夢の中だからお腹いっぱいにはならないんけど、いくらでも出て来るから好きなだけ楽しむといいのよ!」
「うん! 他にはどんなことができるの?」
「んーとねー、空を飛べたり、力持ちになったり、すんごい魔法を使えたりするのよー」
「おー……魔法以外は、起きててもできることばかりだった」
「そういえばそうなのよー。とにかく何でもできるのよー」
「これは面白いね!」
「うむ! そんじゃご飯の時間になったら起こすから、それまで遊んでるといいのよー」
「うん!」
「現実では使えない魔法も、ここでは使える。楽しいなぁ」
「でも一人なのはちょっと味気ない。そうだ! トナカイを出せばいいんだね」
「トナカイ参上なのよ!」
「このトナカイは夢のトナカイなんだよね?」
「うむ、このトナカイは空想上の存在なのよ!」
「ということは、私の思い通りに……ごくり」
「うむ、リリーの好きなことなんでもしてあげるのよー」
「好きなことを、何でも……」
「リリー、トナカイの大事なパートナーなのよ。愛してるのよー」
「はうっ! トナカイが私を抱きしめながら愛の言葉を囁いてくれる……えへへ」
「好きなだけトナカイを抱きしめていいのよー」
「うん! ぎゅー……」
「よしよし……リリーはいい子なのよー」
「えへへ……トナカイぃ……」
「さて、そろそろリリーを起こすのよ!」
「トナカイぃ……えへへ」
「とっても幸せそうなのよ。ちょっと起こすの可哀想な気がしないでもないんけど、夢ばかりじゃなくて現実も見ないといけないのよ!」
「と、いうわけでリリー、起きるのよー!」
「んー……トナカイ、もっと私を抱きしめて」
「ふむ、わかったのよー。はい、ぎゅー」
「はふぅ……あれ? 何だかさっきと感触が違う」
「むふー、夢の中のトナカイをぎゅーってしてたんねぇ。夢は所詮夢なのよー。本物のトナカイには勝てないのよー」
「そっかぁ。ぎゅー……えっ」
「ぎゅーなのよー」
「トナカイ?」
「うむ、トナカイなのよ?」
「夢じゃなくて?」
「うむ、このトナカイは現実のトナカイなのよ?」
「……ぎゅー」
「リリーが考えることをやめたのよ。そんじゃ、そろそろご飯にするのよー」
「うん!」
「リリーがどんな夢を見てたのか、後で一緒に見るのよー」
「えっ……?」
「そういえば言うのを忘れてたんけど、この魔道具には録画機能がついてるのよー。いつでも見た夢を見直せる、素晴らしい機能なのよ!」
「!? ちょっと! その魔道具返して!」
「元々これはトナカイが作ったやつなのよーん」
「かくなる上は……証拠隠滅ブレス!」
「あっ!? トナカイ特製の魔道具にブレスが!」
「やったか!」
「なーんちゃって。とっても頑丈に作ったから壊れないのよー」
「なっ!? いやぁぁ! 消してぇぇ」
この後魔道具を巡って、壮絶な戦いを繰り広げるリリーとトナカイであった。




