トナカイのリリー観察
「最近、リリーの残念な子具合が加速してるんじゃないかと、トナカイ心配なのよ……」
「と、いうわけでトナカイと一緒じゃない時のリリーを観察して、見極めるのよ!」
「リリーは……いたのよ!」
「今日はトナカイが何かで忙しいから、一人で依頼をこなすことになっちゃった……寂しい」
「さっさと依頼をこなして帰ろう」
「んー、特に残念な子っぽくはないのよ。もう少し様子を見るのよー」
「あ、リリーさんじゃありませんか! いつものもふも……トナカイさんはいずこに?」
「今日は忙しいらしい。だから私一人で仕事をすることになった」
「あらー、そうなんですねぇ。それでは、そちらのボードから依頼を見繕ってくださいねー!」
「わかった……それじゃ、これ」
「はいー、『馬車の護衛をお願いします』ですね。これは隣町までの護衛依頼ですねぇ」
「ちゃちゃっと、終わらせてくる」
「はーい、それではよろしくお願いしますねー」
「……リリーが普通なのよ! トナカイと一緒の時だけ残念な子になってるんねぇ……ちょっと安心したのよ」
「というかギルドの受付の人もいつもより普通なのよ! トナカがいるときはいっつも泣き付いてくるから、普通にお仕事してる姿が違和感あるのよ!」
「あなたが依頼主だね。隣町まで護衛をする、リリーだよ。よろしく」
「とても幼く見えますが……冒険者の方々を見た目で判断することはできませんね。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
「ここで待っているから、準備ができたら呼んでほしい」
「承知しました。もうしばらくお待ちください」
「普通に仕事をしてるリリーはかっこいいのよ! こう、できる冒険者って感じなのよ! 見た目小さい女の子なんけど!」
「はぁ……トナカイが隣にいない。寂しい」
「どうされましたか? 先程から頻繁に溜息をつかれているようですが」
「何でもない。気にせず馬車を進めてほしい」
「ご無理はなさらないよう、お願いしますね」
「ありがとう」
「何だか、リリーを一人にしてることに、罪悪感が沸いてきたのよぉ……でも、今から急に合流するのもなんか違う気がするのよ」
「リリー、お仕事頑張るのよ!」
「ひゃっはー! 荷物と女を置いていきな! 命は大事にしないといけないぜぇ?」
「……野生の盗賊が飛び出してきた。知らなかったの? 馬車とリリーは急に止まらないって」
「ぐべぇ!?」
「ぎゃんっ!?」
「おぉ……とんでもない強さですね。ありがとうございます!」
「仕事だから気にしないで。先に進んでほしい」
「さすがリリー、盗賊では歯が立たないのよ! 戦うリリーはかっこいいのよ!」
「「グルル……」」
「今回は忙しい……せいっ!」
「魔物すら軽くあしらうとは……とてもありがたい!」
「ふふ、私はチームの中でも最弱の存在……上には上がいる」
「なんと……」
「……えっ、リリー何言ってるのん? チームってトナカイとリリーの二人しかいないのよ?」
「あんまり褒めると、リリーの中の残念な子成分が顔を出すんねぇ……覚えておくのよ!」
「……何となく視線を感じる」
「リリーさん、ありがとうございました。被害なく無事に目的地に到着しました!」
「うん、良かったね。それじゃ、私はこれで」
「またご縁があればよろしくお願いしますね!」
「無事にリリーがお仕事を終えたのよ! そしてリリーの生態が明らかになったのよ!」
「良かったね。これでリリー専門家になれるね」
「うむ! リリー専門家に……!?」
「トナカイ、どういう事なのか、説明して、くれる、よね?」
「リリーが急に、背後に現れたのよ! どうやって「このカバン、とっても便利だよね」……あっ、そうだったのよ! リリーのカバンはトナカイと繋がってたのよ!」
「事と次第によっては許さないんだからぁぁ!」
「むひょぉぉ!? まずは話し合うのよリリー!?」
「問答無用ー!」
「さっき説明を求めてたのに、聞いてくれないのよぉぉ!?」
リリーの残念な子疑惑を検証するための尾行と、素直に話してしまったトナカイは、しばらくリリーに口を聞いてもらえなかったそうな。




