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トナカイの弱点

「ねぇトナカイ」

「どしたんリリー?」

「トナカイって、強いよね」

「ふむ? トナカイ強いんねぇ」

「だって負けたところ見たことないもん」

「そもそも戦うことがあんまりないのよー?」

「それはそうだけど……私はトナカイと戦って勝てたことないよ!」

「リリーはまだまだ伸び代があるから、大丈夫なのよー」

「むー、トナカイが余裕の発言……一回くらいトナカイに勝ちたい!」

「ふむー、戦って負けたらええのん?」

「ちっがーう! 手加減されて勝ってもうれしくないよ! 普通に戦って勝ちたい!」

「そんなら、頑張って修業するしかないのよー」

「うーん、修業はするけど……トナカイの弱点を突いたら勝てたりしないのかな?」

「それは分からないのよー?」

「と、いうわけでトナカイの弱点を教えて!」

「えっ……」

「何かないの?」

「うーん……トナカイの弱点、何なんねぇ?」

「それじゃ、早速調べよう!」

「うむ! 頑張ってトナカイの弱点を調べるのよ! ……んー?」



「というわけで、毎度おなじみの名医リリーです。次の方ー」

「失礼するのよー」

「どうされましたかー?」

「えーっと……トナカイ、弱点が分からなくて困ってるのよー」

「なるほどー、それは大変ですねー。それでは早速調べてみましょう!」

「よろしく頼むのよー」



「まずは、様々な食べ物を与えてみましょう!」

「それ、弱点じゃないような気がするのよー」

「えーっと、とりあえず辛いもの! 何か出してトナカイ!」

「んーと、ほいっ! デス辛子なのよ!」

「ありがとーう! それでは、食べてみましょう!」

「このまま食べるのは、あんまりオススメしないのよぉ……」

「「はむっ……」」

「やっぱり辛いのよぉぉ!?」

「きゅうっ……」

「リリーがあまりの辛さに倒れたのよ!? というか、トナカイの弱点探しなのに、なんでリリーも食べたのよ!」

「きゅぅぅ……」

「ってそんなこと言ってる場合じゃなかったのよ! こんな時は久しぶりに創造の力なのよ! トナカイ特製ポーション、これでも食らうのよーっ!」

「……はっ、川の向こうにお花畑とトナカイが見えた」

「それ、あかんやつなのよ! そしてトナカイはまだ生きてるのよ!」

「トナカイ……私の弱点は、辛いものだった」

「リリー……それは弱点とは言わないのよ? 最近リリーが残念な子になってる気がするのよ」

「そ、そんなことないもん……外ではちゃんとしてるもん!」

「そうなんねぇ……まぁいいのよー。次はどうするーん?」



「こほん、次は様々な魔法をかけてみましょう」

「ふむー、なんかそれっぽいのよ!」

「まずは定番、火の魔法!」

「むっひょぉぉ!? これはあかんのよ! 割とよく燃えてるのよぉぉ」

「……そっか、トナカイが森の精霊だって、すっかり忘れてた」

「トナカイ割と火に弱かったのよぉぉ! トナカイも、すっかり忘れてたのよぉ!?」

「はっ、このまま押したら勝てるのでは! トナカイ覚悟ー!」

「なんとっ!? このままではやられてしまうのよー……のわーっ」

「……勝った! トナカイに勝ったよ!」

「むふー、リリーに負けてしまったのよー」

「えへへ……でも次はちゃんと戦って勝てるように、頑張って修業する!」

「頑張るのよー」



 初めてトナカイに勝ったとはしゃぐリリーだが、いつのまにか、焦げ跡一つなくなっているトナカイに気付くことは、なかった。

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