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トナカイと黒トナカイ

「今日もいい天気なのよー。ちょっと雨が降ってるけど、トナカイ的にはいい天気なのよーん」

「今日もいいことがある気が……何か落ちてるのよ!」

「さすがのトナカイも、そろそろ気づいてるのよ! この黒くて魔力がこもった石は、拾ったらあかん系のやつなのよ!」

「と、言うわけでこの石はそっと、地面に戻しておくのよ!」

「……やっぱりなかったことには、できそうにないのよ!」

「石がどんどん大きくなって形が変わってるのよ……ん? この形は!」



「と、言うわけなのよ」

「トナカイ……今度は拾う前にダメだって気づいてね?」

「うむ、善処するのよ!」

「で、隣にいる黒いトナカイが、石から変化したものなの?」

「うむ、トナカイにそっくりなのよ!」

「見た目はトナカイだけど……全然喋らないね?」

「うむ、寡黙なトナカイなのよ!」

「じゃぁ、もふもふさはどうかな?」

「リリーが黒いトナカイをもふもふし始めたのよ」

「……んー、うーん」

「どしたんリリー?」

「何だか硬い」

「そうなん? 元々石みたいだったから、きっとそのせいなのよー」

「次トナカイね。もふもふ……はふぅ、やっぱりこうじゃないと」

「リリーはトナカイのもふもふが好きねぇ」

「うん。トナもふが最高」



「次は性能テストだよ!」

「黒トナカイ、普通に付いてきてるんけど、嫌なら断ってもいいのよ?」

「……特に嫌そうな素振りはないから、大丈夫だよきっと!」

「そうなんねぇ。そんじゃそろそろご飯の時間だから、みんなでご飯作るのよ!」

「おー!」



「そんじゃリリーは野菜を切るのよー」

「わかった! 洗練された私の包丁さばきを受けるがいい! とりゃー!」

「リリー、まな板は野菜じゃないのよ? 急がなくていいから、落ち着いてゆっくりやるのよー?」

「…….わかった」

「黒トナカイは肉を切って鍋に入れるのよー」

「トナカイは皆を見守るのよー。リリー、その爪はしまうのよー。落ち着いて包丁を使うのよー」

「ぐっ……バレてた」

「黒トナカイはなかなかの手捌きなのよ!」

「ま、負けた……」



「「いただきまーす!」」

「なかなか美味しくできたのよ!」

「うん、カレーは美味しいねー」

「黒トナカイもいっぱい食べるのよ!」

「黒トナカイはけっこう器用だったね。トナカイ程じゃないけど」

「うむ、ちょっと失敗しても諦めない、頑張り屋さんだったのよ!」

「次は何をして遊……テストしようかな?」

「残念ながら、黒トナカイの残り時間はあんまり無さそうなのよー」

「……えっ?」

「料理しながら黒トナカイを調べてたのよー。黒トナカイは、コアになってる石の魔力が切れたら、石に戻るみたいなのよー」

「えぇ……そうなんだ。せっかく仲良くなったのに……どうにかならないの!?」

「なるのよ?」

「そっか……さすがのトナカイも……えっ?」

「魔力が尽きなかったらずっとこの形を保っていられるのよ」

「そうなんだ」

「黒トナカイは、どうしたいのん?」

「トナカイ、黒トナカイは喋れないんでしょ?」

「全然喋らないけど、喋れないとは言ってないのよー」

「……もっと、遊びたい」

「おおー、喋った!」

「そんじゃ、トナカイの改造、はーじまーるのよーん!」

「……えっ? ……!?」

「黒トナカイがトナカイに体を弄ばれてる……ごくり」

「完了なのよ! 周囲から魔力を取り込む器官と、食べたご飯を魔力に変換する器官を組み込んだのよ!」

「普通に生活してたら大丈夫ってことだね!」

「うむ、いい仕事をしたのよー」

「……ありがとう」

「うむ、これからは好きに生きるのよ!」

「……うん!」



 トナカイたちと一通り遊んだ黒トナカイは、二人に感謝の気持ちを伝えてから、去っていった。

 二人きりの生活に割って入るのは、黒トナカイ的にダメだったのだ。

 去っていく黒トナカイの背中を見送りつつ、若干の寂しさを覚えるトナカイたちであった。

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