リリーの厄日
「あっ、トナカーぁぁあ!?」
「いたた……何でこんな所に穴があいてるの」
「リリー、どしたーん?」
「トナカイに駆け寄ろうとしたら、穴にはまった……」
「ちょっと待つのよー。トナカイが救助するのよー」
「大丈夫……自分で登るからぁっ!?」
「ありゃー……穴が崩壊したのよー。大丈夫なーん?」
「と、トナカイ……やっぱり助けて」
「まっかせるのよーっ……あっ、足が滑ったのよぉぉ」
「ぐぇっ!? トナカイが降ってきた……ひどいよトナカイぃ!」
「すまなかったのよー。後でナデナデしてあげるのよー」
「うん……じゃあ、許す」
「とりあえずリリーを抱っこして穴から抜け出すのよ!」
「トナカイに抱っこされてる……えへへ」
「なんとか穴から脱出できたのよー」
「何だか今日は、いつにも増して失敗というか悪いことが起こってる気がする」
「ふむー、そんなら、ちょいと占ってみるのよ!」
「えっ……トナカイって、占いとかできるの?」
「うむ、占い師トナカイな気分なのよ!」
「気分だけなんだ……」
「そんじゃ、準備するからここで待ってるのよー」
「わかった」
「!? 急に雨が降ってきた!」
「……あれ、もう止んだ。流れ雨だったみたい……」
「って周りほとんど濡れてないじゃん! 何でピンポイントで私にだけ!」
「……!?」
「敵襲!? 矢が飛んできた!」
「……あ、あれ? 付近に生き物の気配がない。この矢、風に流されて飛んできたのかな……」
「雨が降って、矢が降って、次は魔法でも飛んでくるのかな……なーんて、さすがにないよ……ね?」
「リリー「ひゃうっ!?」……どしたんリリー? 何で上向いてビクビクしてるん?」
「と、トナカイぃぃ! さっきから私に向かって色んなものが飛んでくるよぉぉ!」
「ふむー? あっ、その金槌はトナカイの手が滑って飛んでったやつなのよ。すまなかったのよー」
「えっ……ま、まぁ許す。金槌くらいはかわいいものだった」
「他に何が飛んできたん?」
「雨、矢から始まって、火の玉、氷の塊、雷、金槌、隕石、女の子「ちょーっと待つのよー! 隕石まではともかく、最後の女の子って何なん!?」私が聞きたいよ! 『落ちる場所、間違えてしまいました。えへへ……』って、申し訳なさそうにしながらどこかに行っちゃったよ。あと、どれも普通は飛んでこないからね?」
「リリー……最近呪われたり恨みを買ったりしたん?」
「そんな覚えはないよ!」
「とりあえず準備ができたのよー。調べるのよー」
「うん……」
「今日はどうされたのよー?」
「何だか色んなものが私に飛んできたり降ってきたり、悪いことばかり起きて……」
「ふむー、そんじゃ、占ってしんぜようなのよ!」
「お願いしま……ま、待ったー!」
「どしたんリリー?」
「まさかとは思うけど、占い用ハルバードとか物騒なもの、出さないよね?」
「……」
「トナカイ?」
「そんなもの出すわけないのよー。リリーは心配性なのよー」
「……トナカイ、さっき背中のチャックにしまったの、これだよね?」
「!? リリーのカバンから、占い用ハルバードが出てきたのよ!」
「私のカバンはトナカイと繋がってるの、忘れたの?」
「ありゃー、そうだったのよ!」
「「……」」
「そんじゃ、占うのよ! 危ないから動いちゃダメなのよ!」
「えっ……ハッ!? いつのまに簀巻きに! ぴゃぁぁあああ!?」
「……ハッ! あ、あれ? さっきのは、夢?」
「残念ながら夢じゃなかったのよー」
「……」
「ありゃ? リリーがすんごく、不機嫌なのよ」
「トナカイなんか知らないもん……ふーんだ!」
「リリーが拗ねちゃったのよ……すまなかったのよー。今度からハルバードは控えめにしておくのよ」
「使わないとは言わないんだ……で、占い? の結果は?」
「バッチリなのよ! 今日のリリーの運勢は……」
「運勢は?」
「十年に一度あるかないかの大凶なのよ!」
「そんな気はしてた……何とかしてよトナカイ!」
「うむ、これは時間が過ぎるのを待つしかないのよ!」
「そ、そんなぁ……」
「と、言うわけでリリー、小さくなるのよ!」
「えっ? こ、こう?」
「うむ! よいしょっと」
「!? と、トナカイ、私を抱き寄せてどうするの……?」
「今日一日、トナカイがリリーを守ってあげるのよ!」
「と、トナカイ……ありがとう!」
「むふー、リリーは甘えん坊さんなのよー。トナカイのおなかにポケットをくっつけたから、そこで一日大人しくしてるのよー」
「うん。トナカイに守られてる……えへへ」
トナカイに抱かれてご機嫌なリリーであった。
しかし、この後魔王級の魔物が目の前に沸き、トナカイと魔物の壮絶な戦いを最前列で見ることになるとは、今のリリーは知る由もなかった。




