トナカイの限界チャレンジ
「ねぇトナカイ」
「どしたんリリー?」
「トナカイの創造の力って、なんでも作れるんだよね?」
「うむ、大体のものは創れるのよー」
「例えば、生き物とかは作れるの?」
「頑張ったらできる気がするのよー? でも何となくアカン気がするから創らないのよー」
「そうなんだ。じゃあ、大きさはどのくらいのものが作れるの?」
「んー、あんまり試したことないのよー」
「トナカイ、気になることはー?」
「試すのよリリー! さっそく色々創ってみるのよ!」
「おー!」
「何を創るか決めるのよー」
「じゃあ、家とか」
「わかったのよー! よいしょーっ!」
「おぉー! 二階建ての家が出てきた!」
「家具とかもつけてあるから、すぐに住めるのよ!」
「すごいよトナカイ! ちょっと中を見てくる!」
「どうぞーなのよー」
「ふかふかなベッドに、お風呂、トイレ付きで、何より調理場がやたら立派だったよ!」
「むふー、トナカイがリリーと暮らすことを想定して創ったのよー。いろんな料理を作れるようにしておいた方がいいと思ったのよ!」
「!? ということは……この家はトナカイと私の、愛の巣ということに……ごくり」
「そんじゃ、このお家はそろそろしまうのよーいしょーっ!」
「あぁっ……」
「んー? どしたんリリー?」
「な、何でも、ないよ……」
「むふーっ、トナカイとリリーに、まだお家は早いのよ! もっといろんなところを旅して、いろんなものを見て、楽しいことを探すのよ!」
「うん……そうだよね!」
「うむ!」
「次はー、何を出したらええのん?」
「うーん、じゃあ適当にお城でも」
「リリー、飽きて内容が適当になってるのよぉ……」
「そ、そんなことないよ? ほんとだよ?」
「まぁいいのよ。よいしょーっ!」
「おー、何だかお城っぽい!」
「お城の中ってどうなってるのかよく分からなかったから、適当にお菓子を詰め込んでおいたのよー」
「えっ!? この中、全部お菓子が……うわっ、ほんとだ」
「ちなみに、賞味期限は無限大なのよ! 気候の変動にも負けない最強の保存食になるのよ!」
「無駄に高性能!?」
「まさか、こんなに大きなお城まで出せるなんて……トナカイの力ってすごいよね」
「むふー、でも創造の力に頼ってばっかだと、あんまり良くないのよ。自分でできることは自分でした方が、達成感とかあっていいのよ!」
「そういうところ、真面目だよねトナカイ。でも、確かに何でも簡単に出来ちゃったら、面白くないもんね」
「うむ!」
「……ん? 何かが向こうから走ってくるよ?」
「んー? そうなん?」
「急におかしな城が出現したぞー! もしや隣国の侵略行為か!? 野郎ども、追い返すぞ!」
「「おぉーっ!」」
「「……」」
「トナカイ……あれ、明らかに私たちを敵と思ってるよ」
「うむ、多分説明しても分かってくれないのよ。こんな時はー?」
「「逃げる(のよーっ)(よっ)!!」」
ある国の片隅に突如姿を現した巨大な城。
その中に人はおらず、見たことのない食料が大量に詰まっていた。
飢餓で苦しんでいたその国は、神からの贈り物だとたいそう喜び、国の者全員で仲良く分け合ったそうな。




