リリーの料理レッスン その七
「さすがリリー、もう料理の腕はトナカイを超えたのよ!」
「えへへ……これからはトナカイに美味しいご飯を毎日作ってあげるからね!」
「とっても嬉しいのよ! こんなに料理上手で、可愛くて、しっかりさんで、強くて、ドラゴンなリリーとパートナーになれて、トナカイは幸せ者なのよー」
「と、トナカイったら……そんなに褒めても、なにも出ないよっ!」
「むふー、事実だからしょうがないのよー。そんな完璧なリリーとトナカイの子は、きっといい子に育つのよー」
「トナカイ!? さすがに子の話は早すぎると思う……で、でもトナカイが望むなら私……!」
「トナカイと幸せな家庭を築くのよ!」
「うん! トナカイ……」
「リリー……」
「えへへ……トナカイぃ……えへへ」
「リリー、朝なのよー? とっても幸せそうな顔をしてるのよ。どんな夢を見てるんかなぁ?」
「……」
「どしたんリリー?」
「何でもない。ちょっと今朝見た夢の内容が、冷静に考えると恥ずかしいなって思っただけ」
「どんな夢だったん?」
「一部だけ言うと、トナカイより料理上手になる夢だった」
「そうなんねぇ。リリーの方が料理上手になったら、二人でおいしいものをたっくさん作って、一緒に食べるのよ!」
「うん、頑張って練習する!」
「それじゃ、料理レッスン、スタートなのよ!」
「今日は、包丁を上手に扱う練習なのよー!」
「おー、何をするの?」
「ここに、ジャガイモがあるのよ。このジャガイモの皮むきが、今日の練習内容なのよ!」
「皮むきくらいなら、できそうな気がする!」
「そんじゃ、やってみるのよー」
「せいっ! ……あっ」
「リリー、力を抜くといいのよ。ジャガイモが耐えきれずにクシャッってなっちゃったのよ」
「うん……優しく扱う」
「……トナカイ、挫けそう」
「まだ早いのよ! 握りつぶしたジャガイモ数十個、削ぎすぎて豆粒ほどになったジャガイモ数十個、握りすぎて柄が壊れた包丁十数本なのよ。まだどれも三桁いってないのよ!」
「魚はさばけるようになったのに……なんでジャガイモは上手くいかないの!?」
「リリー、お魚とジャガイモは、全く別のものなのよ? ジャガイモが海とか川で泳いでたら、ちょっと面白いのよ?」
「そういうことじゃないよトナカイ! 私が言いたいのは、包丁の扱い自体があんまり上手になってないってことだよ!」
「ふむー、焦らなくても大丈夫なのよ。リリーは一歩一歩、確実に成長してるのよ?」
「そうかなぁ……うん、もう少し頑張ってみる」
「うむ、リリーは頑張り屋さんなのよ!」
「すぅ、はぁ……いきますっ!」
「応援してるのよ!」
「優しく握って! 包丁も優しく握って!」
「絶妙な力加減なのよ!」
「表面の皮をこうやってああやって!」
「かつてないほどの順調さなのよ!」
「ほいっ!」
「「……」」
「「できたー!」」
「やったよトナカイ! まだ食べる部分がいっぱい残ってるよ!」
「うむ、感動的なのよ!」
「今ならどんな野菜の皮もむける気がする!」
「リリーのやる気が満ちてるのよ! そんじゃどんどん行くのよ!」
「えっ「ニンジン、ダイコン、カボチャ、タマネギ、おまけにー、スイカなのよーっ!」多すぎるよぉぉ!?」
泣き言を言いながらも、トナカイから出された野菜の皮をむき続けるリリーであった。
ちなみに、一番簡単に皮をむけたのは、意外にもカボチャだったそうな。




