リリーの修業
「ねぇトナカイ」
「どしたーんリリー?」
「私ね、修業しようと思うの」
「ふむー? そうなん?」
「うん。私ドラゴンなのに、あんまり活躍してない気がするもん」
「んー、そうなーん?」
「ドラゴンは強くなくちゃだめなんだよ! こう、誰にも負けない最強な感じじゃないとっ!」
「そうなんねぇ……リリー、強さの先に何を望むのん?」
「トナカイが急に真面目っぽい問いかけを……私はただ、誰にも負けない強さがほしいだけだよ!」
「強さとは、腕っ節だけで決まるわけじゃないのよ。身体的な強さはもとより、知識、経験、心……様々な要因が合わさってその人の強さとなるのよ」
「と、トナカイどうしたの!? 何だかおかしいよ!」
「何となくそれっぽいことを……言ってみただけなのよっ!」
「なーんだ。急に小難しいこと言うから、何か変なものでも食べたのかと思ったよ……」
「リリーは割と失礼なことを言うのよぉ……まぁいいのよ。それじゃ早速、修業スタートなのよ!」
「まずは定番の、滝に打たれる修業なのよ!」
「なんで滝に打たれないといけないのかな?」
「じつはよく知らないのよ! そんじゃ、滝の上から色々流すから頑張るのよ!」
「えっ? 流すって何を……!?」
「まずは岩なのよ!」
「これって、落ちてくるものを避ける修業だったの!?」
「うむ、きっとそうなのよ! 次は槍なのよ!」
「あぶないっ!? 何だかこっちに向かって落ちてくるんだけど!」
「そりゃそうなのよ。追尾機能をつけといたのよー」
「難易度高い!?」
「思った以上に激しかった……」
「さすがリリー、なんぼか刺さったけど、軽い怪我で済んでるのよ。ちなみにトナカイも、ちょっとやり過ぎたかなーって思ったのよ」
「……トナカイ、後でもふもふ一時間ね!」
「わかったのよー。そんじゃ、次の修業なのよ!」
「うん、何だか不安しかないよ」
「次はねー、飛んでくるものをギリギリでかわし続ける修業なのよ!」
「……さっきの修業と何が違うの?」
「さっきのは、上からしか来なかったのよ。今からのんは全方位から飛んでくるから、難易度が跳ね上がるのよー!」
「おぉ……すごく修業っぽい!」
「そんじゃ、いっくのよーん」
「うん!」
「まずは棒なのよー」
「よっ、ほっ! このくらいは余裕」
「十秒ごとに、倍に増えるのよー」
「っ! こ、これ増えるの早くない!?」
「更にー、次は槍も飛んでくるのよー! ほいっ!」
「うひゃっ!? 槍の飛んでくるっ! スピードがっ! 早いよ!」
「ちなみに今回の槍は、失敗しても少し刺さるくらいで死にはしないのよ!」
「少しは刺さるんだね……一つ刺さったら、体制崩れて全部刺さりそ……しまっ!? ぴゃぁぁいたたたっ!?」
「あー、どんどん槍やら棒が当たってるのよ。リリーがハリネズミみたいになってるのよぉ」
「ひどい目にあった……油断した」
「さすがリリー、回復が早いのよー。まだ修業するのん?」
「こ、今回はこのくらいにしておく……」
「うむ! また修業したくなったら、いつでも言うのよー」
「うん、次は頑張る!」
最強を目指すと言った割に、修業の頻度が少ないリリーであった。




