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冒険者のお仕事 その五

「今日は冒険者のお仕事をするのよ!」

「うん。私たち一応冒険者なのに、あんまり冒険者っぽいことしてないもんね」

「うむ、たまには働かないと、冒険者じゃなくて遊び人になっちゃうのよ!」

「それはそれで、特に困らなさそうだけど……」

「あかんのよリリー! 働かざるもの美味しいご飯を食べられないっていう格言があるのよ!」

「そ、それは困るね……頑張って働く!」

「うむ、でもどうせ働くなら、何か面白そうなお仕事がいいのよー!」

「うんうん、面白そうな仕事を探しに行こう!」



「……というわけで面白そうな仕事、ない?」

「冒険者ギルドに来られて、いきなりそんな事を言われましても……しばらくお待ちくださーい」

「今回は特に泣きついて来ないのよ!」

「……もしかしてトナカイ、この職員に泣きつかれたかったの?」

「リリーの目が怖いのよ……別に泣きつかれることを期待してるわけじゃないのよ!」

「それならいいけど……あっ、私が泣きついてあげてもいいよ?」

「だからトナカイ、泣きつかれて喜ぶ趣味は「うわーんトナカイぃぃ! モッフモフだよぉぉ!」……リリーはたまに人の話を聞かないのよぉ」

「お待たせしまし……何やってるんですかぁ!?」

「トナカイに泣きついてる」

「そ、そうですか……泣きつくっていうのは、こうするんですよ? こほん」

「えっ?」

「報酬がやたらと安い割に危険なので誰も受けてくれない依頼があるのですぅぅ! お二方のお力をどうかぁぁ! もふもふぅぅっひょーい!」

「さすが本職は貫禄が違ったのよ……」

「もぉぉおお! 結局いつも通りじゃん! うわぁぁん今日は私だって泣きつくんだからぁぁ!」

「収拾がつかなくなってるのよぉぉ!?」



「……というわけでお仕事をもらって来たのよ!」

「今回の仕事は『村の警備をお願いします』だよ」

「何でも、月に一度盗賊が団体で来るらしいのよ!」

「そうらしいね。物騒な世の中だね」

「盗賊を追い返すか、捕らえるか、殲滅するかは自由らしいのよ」

「捕らえたら冒険者ギルドから追加で報酬が貰えるんだって。頑張って捕らえるよ!」

「うむ! どっちがいっぱい捕らえられるか、勝負なのよ! トナカイに勝ったら何でも一つお願いを聞いてあげるのよー!」

「おーっ! これは勝たなければ……!」



「村の奴らめ、冒険者を雇ったらしいじゃねぇか! 舐めた真似しやがって!」

「お頭! あんな貧乏村が雇える冒険者なんてたかが知れてやすよ! 身ぐるみ剥いでやっちまいやしょう!」

「そうだな。見せしめとして、冒険者どもは……なぶり殺しだ!」



「ん? 村の入り口に何か立ってるな。あれが冒険者か? やけに小せぇが……女の方は奴隷商人に高く売れそうだな。あのふざけた格好のやつだけ殺せ!」

「ひゃっはー! とりあえず死んどけや!」

「おじょうちゃーん! 大人しくしてれば生かしておいてやるぜぇ? ぎゃはは!」

「トナカイ、あれ本当に捕まえるの? あんまり触りたくないんだけど……」

「捕まえるって言ったのリリーなのよ! あんまり好き嫌いしちゃダメなのよ! 我慢して捕まえるのよー」

「それ、ここで使う言葉じゃないと思う……」

「おらぁぁ致命傷ぅ!」

「見切ったのよ!」

「トナカイ……見切るっていうのは、相手の攻撃を見極めてギリギリ避けたりするときに「こっちに来いや!」よっと、こんな感じで避けながら言うんだよ?」

「そうなんねぇ。向かって来る剣を見てるだけじゃアカンのねぇ」

「何だこいつ!? 剣が刺さってるのに痛がりもしねぇ!?」

「こう見えてもトナカイ精霊なのよ。剣が刺さったくらいで死んだりしないのよー。ほいっ、足元がお留守なのよー」

「ぎぇっ!?」

「あ、この剣、返すのよー……あっ」

「ぎゃぁぁっ……」

「すまなかったのよー。手が滑って顔すれすれの場所に突き立っちゃったの……もう聞いてないねぇ」

「舐めやがって! 全員でかかれ!」

「やたらと人数が多いのよ! ざっと数えて百はいるのよ!」

「トナカイ、さすがに盛りすぎだよ? 三十くらいしかいないよ?」

「むふー、ちょっとオーバーに言っちゃったのよ!」

「おらぁ死ねぇぇ!」

「 ほいっ、よっ、よいしょーっ」

「ぐえっ!?」

「かはっ!?」

「のふっ!?」

「トナカイが一人ずつ気絶させてる。トナカイが戦ってる姿はいつ見てもかっこいい……ハッ! 見とれてる場合じゃなかった! 急がないと負ける!」



「「……」」

「もうほとんど倒しちゃったのよ」

「まだ勝負は終わってないよ! あれを捕まえたら私の勝ちねっ!」

「リリーはしょうがない子なのよー。それでいいのよー」

「てめぇら、やってくれたなぁ……久々にキレちまったぜ」

「何だかボスっぽいのんだけ、雰囲気が違うのよ!」

「うん。もしかして変身したりとか」

「俺の本当の姿を見せてやるよ……グルルァァ!!」

「あ、あれは…….!?」

「なんとっ!?」

「「わんこ!?」」

「狼じゃこらぁぁ! コケにしやがって……この姿を見て生き残ったやつは、今までいねぇぞ!」

「さっきまでのやつらとは全然違う! 比較的早い!」

「うむ、比較的早いのよ!」

「減らず口が! いつまで! 持つだろうなぁぁ! グルルァァ!」



「まぁまぁ楽しめた。それじゃサヨナラ」

「ギャゥゥン!?」

「最近の人間は、わんこに変身するのねぇ?」

「人間って、不思議だね?」

「さ、早く簀巻きにして、ご飯を食べるのよー」

「うん!」



 盗賊の頭がなぜ変身できたのか、それは裏の組織が絡んでくるのだが、今の二人がそれを知る術は、なかった。

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