リリーとトナカイダンジョン その二
「トナカイダンジョンにチャレンジ中のリリー。この先で一体、何が待ち構えているのかーなのよ! 引き続き実況のトナカイと」
「解説のトナカイがお送りするのよ!」
「……誰に言ってるのそれ」
「「独り言なのよ!」」
「分身してそれぞれが喋るのって、独り言なの? まぁいいや……なんとか罠のエリアを突破したみたいだね。トナカイの罠は情け容赦が欠片も感じられなかった」
「こういうのは本気でやらないと面白くないのよ! この先は普通に魔物みたいなのが出てくるから、気をつけるのよー」
「わかった」
「魔物トナカイなのよ!」
「勝てる気がしないよ!」
「おーっと、リリー選手が弱音を吐いたのよー!」
「ちなみに魔物トナカイの強さはピンキリなのよ。よく観察して弱点を突けば、そこまで苦労せずに倒せると思うのよー」
「そうなんだ……よく観察したらいいんだね」
「ちなみにその魔物トナカイの強さは八くらいなのよ」
「それ、何段階中の八なの?」
「全十段階の八なのよ!」
「かなり強いやつじゃんそれ!?」
「ちなみに最大の十は、多分そこらに転がってる魔王並みなのよ」
「分かんない! いまいち強さが想像できないよトナカイ!」
「リリー、余所見をしてたらあかんのよー」
「危ないっ!? 動きが早い!」
「早く倒さないと、魔物トナカイが音につられてもっと出てくるのよー」
「くっ……弱点を探さないと! よくトナカイを観察して……分かった! 攻撃をする直前に変なポーズを決めてるけど、そこに隙ができるんだね!」
「……かっこいいポーズのつもりだったのよぉ」
「おーっと、魔物トナカイが膝をついてうな垂れたのよ! 魔物トナカイの精神に大きなダメージが入ったのよ! そこを逃さずリリーが攻撃しているのよーっ!」
「相手の心を的確に折るとは、なかなかやるのよ!」
「えっ……あれ、かっこいいポーズだったんだ。何だか、ごめんね? 傷つけるつもりは無かったんだけど」
「ごふっ!? もうだめなのよぉぉ……がくっ」
「「トドメを刺したのよーっ!」」
「気遣う言葉でトドメを刺すとは、なかなかやるのよリリー!」
「ち、違うもん! ほんとにそんなつもりなかったんだもん!」
「ちなみに、魔物はトナカイだけじゃないのよ!」
「久しぶりに呼ばれたと思ったら、魔物役とは……お前ら後で説教な?」
「何でこんな所に師匠が!? トナカイこれはさすがに無理だよ!?」
「特別ゲストとして、昔世話になった、山の上になぜかお菓子の店を構えてる元凄い人間っぽい、じいちゃんを呼んだのよ! ちなみにじいちゃんは倒せない系の敵役なのよ! 頑張って逃げるのよー」
「説明長っ!?」
「忘れたのか? 俺からは逃げられないんだぞ?」
「もぉぉ! 無理じゃん! 逃げても転移で戻されるじゃん!」
「じいちゃん、転移はなしの方向でお願いするのよ!」
「しょうがないな……それじゃ、進むのを邪魔する程度にしておいてやろう」
「そらそらぁ! ちゃんと避けんとシャレにならんダメージだぞ!」
「ぴゃぁぁ!? 師匠の攻撃が苛烈すぎる! しかも当たったら死にかねないよぉぉトナカイのばかぁぁ!」
「おふぅ!? 流れ弾に当たったのよぉぉがくっ」
「……お、おぉーっと! じいちゃんが殊の外張り切ってるのよぉぉ!」
「魔物トナカイ、じいちゃんの流れ弾でぜんぶ倒されちゃったのよぉ。でも、ダンジョンにあるものを使って有利に進めるのは、ありだと思うのよ」
リリーとトナカイの元気な姿を見てテンションが上がった店の男が、嬉々としてリリーを追い詰めるのであった。
リリーの運命はいかに!




