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リリーの料理レッスン その六

「と、トナカイ……こんなの、入らないよ」

「物は試しなのよー。優しく包み込んであげるのよー」

「うん、よいしょ……!? だ、だめぇ……破れちゃうっ」

「落ち着くのよぉ。そんなに怖がらなくても、すぐに慣れるのよぉ」

「ん……あぁっ! だ、だめぇっ! 溢れちゃうよぉ」

「ふふっ、リリーは初々しいのよぉ」

「あっ……あーっ!」



「破れちゃった……」

「仕方がないのよー。まだ餃子の皮はたくさんあるから、いくらでもチャレンジできるのよー」

「具を入れすぎた……」

「最初はそんなものなのよー。何回も作ってたら、そのうち感覚がつかめるのよー」

「難しいね」

「難しいけど、できたての餃子はとーってもおいしいのよー」

「トナカイが作る餃子は、いくらでも食べられる気がするよね」

「むふー、リリーは食欲旺盛だから作りがいがあるのよー」

「そ、育ち盛りなんだもん! だからいっぱい食べるのはしょうがないんだもん!」

「そうなんねぇ。いっぱい食べて、いいのよー? でも今は、頑張って餃子を作るのよー」

「うん!」



「「……」」

「ねぇトナカイ?」

「どしたんリリー?」

「これ、絶対皮で包まないとだめかな?」

「包まなくても焼いたら食べられるのよ。でもせっかくだから、頑張って包むのよー」

「難しいよう……」

「まだ破れた皮の数は三桁いってないのよ!」

「辛うじてだけどね。あぁ、この皮が破れたら、私の料理人生が終わる……のかもしれない」

「そうなん? 次はドラゴン姿で作るのねぇ。そっちの方が難しそうなのよー」

「いや、そういう意味じゃなくて……冗談に変な返し方されると困る」

「むふー、そうなんねぇ」

「もうっ……それじゃ、いきますっ!」

「うむ、頑張るのよ!」

「ちょんと乗せて、ちょちょんと水付けて!」

「いい感じなのよー」

「ひょいっとしてふにふにっとして!」

「かつてないほど順調なのよ!」

「はいっ!」

「「……」」

「「できたー!」」

「やったよトナカイ! ついに餃子を包めたよ!」

「うむ、よく頑張ったのよー」

「私もこれで餃子マスターに……長い道のりだった」

「ここまで長い道のりだったのよぉ」

「これからは一つ一つ味わって餃子を食べることにするね」

「うむ、味わって食べるのは良いことなのよー。ところでリリー?」

「なぁに?」

「すんごく盛り上がってるところに言うのも、あれなんけど」

「うん?」

「餃子、まだ下ごしらえの段階なのよ」

「……えっ」

「これをたーくさん作って、その後焼くのよー」

「……」

「さ、あと百個は作るの……リリーが逃げたのよ!」

「餃子はまた今度覚えるー!」

「ありゃー、さすがのリリーも、ちょっと疲れたんねぇ。後はトナカイがつくっておくのよー」



 リリーが失敗した、餃子になり損ねた具材たちは、トナカイに美味しく調理された。

 後日改めて餃子作りにチャレンジしたリリーは、前回の失敗が嘘のようにうまく包めたそうな。


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