トナカイの七つ道具
「トナカイ七つ道具、特大ハンマーなのよ! よいっしょー!」
「トナカイ! それはだめなやつだよぉぉ!」
「「……」」
「もう少しで生き埋めになるところだった……」
「すまなかったのよー。まさかダンジョンの一室が完全に崩壊するとは思わなかったのよ!」
「洞窟とかダンジョンって、絶妙なバランスで成り立ってるから、柱一つ壊しただけで全体が崩れる……なんてこともあるらしいよ?」
「そうなんねぇ。次から気をつけるのよー」
「うん、よろしくね? ところでトナカイ」
「んー? どしたんリリー?」
「さっきの大きいハンマー、トナカイの七つ道具の一つなんだよね?」
「うむ、そうなのよー! 初めてダンジョンに入った時に、創ったのよー」
「私がガーディアンに、いいようにやられている時、それを使って天井から落ちてきたもんね」
「うむ。懐かしいのよー」
「あの頃のことを思い出すのは少し恥ずかしい……こほん。その七つ道具って、あとは何があるの?」
「あとは空席なのよー」
「えっ……七つ道具なのに一個しかないの?」
「うむ、残りは創るごとに登録されるのよー」
「そうなんだ。せっかくだから何か一つ作ろうよ」
「いいのよー。それじゃ、どんなんがいいか一緒に考えるのよー」
「「うーん……」」
「あっ、思いついたのよ!」
「どんなの?」
「これなのよ!」
「こ、これはもしや……」
「うむ、治療用ハルバードなのよ!」
「却下」
「……えっ」
「そのハルバード、前にお医者さんごっこで使ったやつだよね? 私はそれに、頭を飛ばされかけたんだよ?」
「リリー、よく思い出すのよ。 あれは『診察用』ハルバードなのよ。今回のは『治療用』ハルバード、全然違うのよ?」
「そうだっけ……? でも結局手元が狂って、患部もろとも消そうとするんでしょ? やっぱり却下」
「そんな事はないのよ! 治療ミスなんて一年に数回くらいしかしないのよ!」
「年に数回は失敗するんだ……とりあえず、七つ道具に登録するかテストして決めようよ」
「七つ道具登録試験なのねぇ」
「それではトナカイさん作、治療用ハルバードのテストを始めます」
「よろしく頼むのよー」
「まずは見た目から……減点」
「なんとっ!?」
「何で治療用なのに、威圧感が溢れ出てるの……」
「リリーは見た目に惑わされているのよ! 見た目は怖いけど、よく接してみたら優しくていいやつなのよ!」
「何その設定……こほん、次は性能を見ます」
「わかったのよ! はい、そこに寝るのよリリー」
「……えっ!? いつの間にか簀巻きになってる!」
「それじゃ、覚悟するのよ!」
「ストーーップ! 使う前の言葉からおかしいから!」
「えっ……ととっ! 急には止まれないのよー」
「ぴゃぁぁああ!! 緊急回避!」
「「……」」
「リリーがちっちゃくなって回避したのよ。そんなことができるんねぇ」
「あ、危なかった……!? ほらぁぁ見てよトナカイ! 私がいたところ綺麗に消し飛んでるじゃん! トナカイのばかあぁぁ!」
「すまなかったのよー。急に止めるから手元が狂ったのよー。ちゃんと使ったら大丈夫なのよー」
「ぐすっ……怖かったんだから」
「悪かったのよ。もうしないからトナカイの背中から一旦離れるの「やだ」……仕方ないのよー」
「というわけで、協力者を用意しました」
「何この状況!? 何で私縛られているのよ! このロープ、私の力をもってしても抜けられない!?」
「トナカイ特製の、捕獲用ロープなのよー。これはとっても頑丈だから、なかなか解けないのよ!」
「無駄に高性能!?」
「協力者のアクアさんには、後ほど感謝の気持ちを添えて記念品を贈呈します。消えてなかったら」
「ちょっと最後の一言! ものすごく小さい声だったけれど、聞こえていたわよ!」
「それではトナカイ、あれの性能テストを行います」
「わかったのよー。アクア、危ないから動いちゃだめなのよー」
「動きたくても動けないわよっ! ……ちょっと、その大きなものは何なの!? ま、まさか、それを私に? だめよトナカ「治療なのよ!」キャァァア!」
「「……」」
「最善を尽くしましたが……アクアさんはもう」
「リリー? アクア、気を失ってるけどちゃんと生きてるのよ?」
「なんとなく言ってみただけだよトナカイ。とりあえず消し飛んではいないけど……何が治ったの?」
「……あ、あら? 私、なぜこんな所で転がっているのかしら」
「迫り来る治療用ハルバードに対するトラウマなのよ」
「マッチポンプ!?」
残念ながら治療用ハルバードは七つ道具に登録されなかった。
代わりに捕縛用ロープがいくつかの機能を追加されて、第二の七つ道具に登録されたそうな。




