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リリーの逃亡

「つい逃げてきちゃった。あんな恥ずかしいところを見られるなんて……トナカイに会わせる顔がないよ。はぁ……」

「あら? 何で貴女がここにいるのよ」

「!? ……誰?」

「アクアよ! この前壮絶な戦いをした所でしょう!」

「あぁ……うん、そうだね。何か用?」

「用も何も、貴女が私の湖のほとりで、三角座りしてるんじゃないの」

「この湖、アクアの場所だったんだね……」

「……何だか覇気がないわね。どうしたのよ」

「実は……トナカイに、恥ずかしいところを見られて……逃げてきちゃった」

「恥ずかしいところを見られた!? な、ナニしてたのよ貴女たち!」

「私が目を覚ましたら、トナカイが……「な、何ですって!? 寝起きに襲われたのね……まさか彼がそんなことをするだなんて」……えっ? まぁ、トナカイいたずらっ子だから、たまに色々してくるけど」

「いたずらに女の子を……許せないわ! 私が締め上げてくるからそこで待ってなさい!」

「……なんだかうまく伝わってない気がする」

「で、彼はどこに?」

「うーん……あっち」

「それじゃ、行ってくるわ!」

「不安しかない」



「困ったのよ……リリーが逃げちゃったのよぉ」

「トナカイのいたずらが、まさかこんなことになるとは、想像もつかなかったのよぉ……」

「早くリリーを探しに行かないと「トーナーカーイー! 天誅!」へぶっ!?」

「まさか貴方がそんなことをするなんて……!」

「びっくりしたのよぉ……ん? 誰なん?」

「だからアクアよっ! リリーも貴方も、何で忘れてるのよ!」

「冗談なのよ。さすがのトナカイも、そこまで忘れん坊さんじゃないのよー。ってそれどころじゃないのよ! 早くリリーを探しに行くのよ!」

「そのリリーから話を聞いたわ! 貴方がまさか寝起きの女の子に手を出すような下衆い精霊だったなんて……私が更生してあげるから覚悟しなさい!」

「えっ……トナカイそんなあかんやつやったん? リリー、そんなトナカイが嫌になったん?」

「無理矢理されたら、いくら好意を寄せてる人でも嫌になるわよ」

「トナカイ、反省するのよ!」

「分かれば良いのだけど……何だか呆気ないわね」

「早速リリーに謝ってくるのよ!「待ちなさい! どう謝るつもり?」えっ、すまなかったのよーって謝るのよー?」

「そんな簡単に許すわけないでしょう!」

「そ、そうなんねぇ……どうしたらええのん?」

「そうね、まずは……誠意を見せましょうか」

「誠意がいるのん? わかったのよ!」

「やけにアッサリしてるわね……」



「……やっぱりトナカイの所に帰ろうかな」

「リリー!見つけたのよ!」

「と、トナカイ! 私を心配して探しにきてくれたんだね!」

「トナカイが悪かったのよ! これを受け取るのよ!」

「トナカイ……ん? これ何?」

「誠意なの「なーにやってるの!」へぶっ!?」

「リリー、少し彼を借りるわよ!」

「えっ……う、うん」



「まずは正座」

「トナカイ、なんか間違ってたん?」

「間違いも何も……なによこれ」

「誠意なのよ!」

「このお金が誠意なの? 確かにお詫びの印としてお金を出すこともあるでしょうけど……何か違うでしょう!」

「そうなん? 昔じいちゃんから、『誠意誠意と言ってくる輩は、実際金を求めてるんだよ。それに気づかないと面倒が増えるから気をつけろよ!』って聞いたのよぉ」

「確かにそう言った場面はあるでしょうけど、今回は違うのよ!」

「そうなんねぇ……あ、もしかしてアクアに払うべきなん?」

「いらないわよ! ……もう、誠意って言うのは、素直な気持ちで真摯に謝れば良いのよ」

「そうなんねぇ……」

「もし何か添えて謝るなら、せめてリリーが求めているものを用意しないと」

「リリーが求めてるもの……心当たりがあるのよ!」

「今度は大丈夫そうね」



「……さっきのは何だったんだろう」

「リリー!」

「トナカイ! あ、あの……私「すまなかったのよ!お詫びにリリーが求めてる愛の結晶を頑張って用意するのよ!」……えぇっ!?」

「何でそうなるのっ!」

「もきょっ!?」

「……リリー、もう少し彼を借りるわよ」

「えっ。うん」



「……」

「トナカイなんで地面に埋まってるん? またなんか間違えたん?」

「散々弄んだ相手に対して、愛の結晶を作ろうだなんて……どう考えたらそうなるの!?」

「ついさっきリリーが、一人芝居でトナカイ人形に、そんな感じのことを言わせてたのよ」

「……えっ?」

「トナカイが人形とすり替わってたから、トナカイを使った一人芝居になってたんけど」

「んん? トナカイ人形?「これなのよ」……瓜二つじゃないの」

「トナカイ会心の出来なのよー」

「……えーっと、リリーは一人芝居しながら、愛の結晶うんぬんを言っていたの?」

「うむ。トナカイにそれを見られたから、もうだめだーって言って、リリーが逃げちゃったのよ」

「えっ? じゃあ、リリーが言っていた恥ずかしいところって言うのは「たぶんリリーの一人芝居なのよ」……そ、そうなの? 私はてっきり、トナカイが寝起きのリリーをひん剥いたのかと……」

「トナカイ、そんなことしないのよ?」

「そ、それじゃリリーをいたずらに……あれ? 冷静に思い出すと、いたずらっ子とか言っていたわね」

「トナカイ、たまにいたずらしてたのよ。反省してるのよー」

「それじゃ、全部私の、勘違い……?」

「……エロ精霊だね」

「なっ!?」

「話は聞かせてもらった。アクアの逞しすぎる想像力が、今回の悲劇を生んだんだね」

「確かに少し勘違いしたけれど……そもそも貴女が、湖のほとりでしょげていたから、心配してあげたんじゃないの!」

「うっ……そ、それはありがとうだけど」

「貴女だってトナカイ人形に愛の結晶とかなんとか言ったんでしょう! 大方いつもそんなこと考えているだなんて……そっちの方がエロリリーじゃないの!」

「なぁっ!? 違うもん! いつもじゃないもん!」

「ところで愛の結晶って、どんなものなん?」

「「えっ……」」

「ちょ、ちょっとリリー!こっちに来てちょうだい!」

「……何?」

「彼はあれ、本気で言ってるの?」

「たぶん本当に知らないんだと思う。トナカイだもんね……私がやらかした恥ずかしいことは結局、トナカイに伝わってなかったんだね」

「そ、そうみたいね……」

「いっそトナカイに、事細かに教えてこようかな……」

「何言ってるのリリー!? やけにならないで!」



 なんやかんやで、いつもの関係に戻ったリリーとトナカイであった。

 この後しばらくアクアとリリーは顔を合わすたびに、エロ精霊、エロリリーと呼び合ったそうな。


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