リリーとトナカイ人形
「「……」」
「参りましたーなのよ!」
「やったー! ついに、ついにトナカイに勝った!」
「リリーは強かったのよー」
「いつもと違う内容の勝負だったのが、私に有利に働いたね!」
「うむ、これはなかなか難しかったのよー」
『紙相撲』
「私の絶妙な台トントンで、うまく倒せた!」
「まさかあんな動きをするとは、さすがのトナカイもびっくりなのよ!」
「……こほん、それじゃご褒美を、くださいっ!」
「うむ、約束のトナカイ人形貸し出しなのよ!」
「やったー!」
「明日の適当な時に返すのよー」
「分かった!」
「うふふ、トナカイと瓜二つだなぁ。もふもふ感もなかなか……いい!」
「何となく隠れてリリーを観察するのよー。リリーがトナカイ人形を持って喜んでるのよー」
「せっかくだから、普段できないようなことをしたいなぁ……何がいいかな」
「リリーが何か考えてるみたいなのよー」
「あ、そうだ! あれをしよう。トナカイを横に置いてっと……」
「リリーがトナカイ人形を寝かしつけてるのよー」
「トナカイと添い寝ー! えへへ……トナカイ、私が寝たらすぐ抜け出して、どこかに行っちゃうんだよね……ちょっと、寂しい」
「そうなんねぇ。トナカイ寝ないから、リリーが寝ると暇なんよねぇ。でも、今晩はリリーが起きるまで横にいてあげることにするのよー」
「トナカイもふもふ……とても、もふもふだなぁ……すやぁ」
「リリーは寝つきがとっても良いのよー……あっ! ちょっとしたいたずらを思いついたのよ!」
「……んー、よく寝た。起きても隣にトナカイがいる……えへへ。といっても、人形なんだけどね」
「んー、それにしてもトナカイにそっくりだなぁ……今にも動き出しそう」
「さて、次は何しようかなぁ……」
「と、トナカイといい雰囲気になったときのシミュレーション、とか……ごくり」
『リリー、そろそろリリーとトナカイの、愛の結晶を作るのよ』
「と、トナカイ……とうとうその気に……!」
『うむ。リリーをトナカイ色に、染めてあげるのよ……』
「トナカイ……っきゃー! なんちゃって、なんちゃって!」
「……」
「冷静に考えると、ものすごく恥ずかしいことをしていた気がする……」
「誰も見てなかったよね? 万が一にでも誰かに見られていたら……即座にこの世から消さないと私が死ぬ。悶え死ぬ自信がある……」
「愛ってすごいのねぇ。結晶ができちゃうのねぇ」
「!?」
「あっ、しまったのよ」
「こ、この人形……喋った!?」
「「……」」
「ぴゃぁぁあああ!? と、トナカイぃ!?」
「ちがうのよー。ただの人形なのよー」
「な、なんだ……ただの人形かぁ……って納得できるわけないじゃん!」
「ばれてしまっては、しょうがないのよー」
「いつから!? どこまで!?」
「添い寝する所らへんからなのよー」
「だよねー! そこしか入れ替わるタイミングないもんねー! ……ということは、さっきの一人芝居も?」
「うむ、最前列で見てたのよ」
「ぴゃぁぁぁもーだめだー! よりによってトナカイに見られるなんて……うわぁぁぁん!」
「り、リリー!? かつてない速さで逃げていっちゃったのよ……」
トナカイのもとから逃げ出したリリー。
二人はこれからどうなってしまうのだろうか。




