冒険者のお仕事 その四
「ねぇトナカイ」
「どしたんリリー?」
「一応確認なんだけど、今回の仕事って」
「ふむ?」
「この畑の見張り、だよね?」
「うむ! 何でも、最近畑の作物が食べられちゃう被害が出てるらしいのよー。そんで冒険者ギルドに依頼が来たのよー」
「うん、そうだよね。ギルドの職員がまた、泣きついて来たんだよね」
「そうなのよー。『こんな報酬が安い地味な仕事、誰も引き受けてくれないんですぅぅ! もう、いつも暇そう……じゃなかった、余裕のある生活をしてらっしゃるあなた方しかいないんですぅぅ! 肌触り最高ぅぅ!』って言ってたのよ」
「あの職員、しれっと失礼なこと言ってたよね。例のごとく、どさくさに紛れてトナカイのおなかに頬擦りしてたし」
「そうなん? いつも暇そうなのは、確かにそうなのよー」
「そうなんだけど……まぁいいや。今回私が言いたいのは、今回の依頼の詳細、あまり詳しく書いてなかったよね?」
「言われてみればそうなのよー。依頼書にも畑の見張りってことしか書いてなかったのよー」
「でさ、今私たちの目の前にある畑が、今回の対象だよね?」
「そのはずなのよー。そこの立て札にも、持ち主の名前が書かれているのよー」
「この畑って、どこからどこまでなの?」
「んー、トナカイの目がおかしくなかったら、あの山の手前くらいまでずーーっと畑なのよー」
「そっか。トナカイにはそう見えるんだね」
「うむ、リリーは違うん?」
「トナカイと同じようにしか見えない」
「そうなんねー。じゃ、間違い無いのよ!」
「「……」」
「「いくらなんでも広すぎ(なのよ)!」」
「いやー、確認不足で超広大な畑の、見張りの依頼を預かっちゃって……困ってたんですよねー。あの二人が快く引き受けてくれてよかったですねー!」
「……とか言ってそうな気がする。あの職員、そろそろ天罰が下ったりしないかな」
「まあまあ、落ち着くのよリリー。こんな広い畑を二人で守れるのはトナカイとリリーだけなのよ! 多分!」
「うーん……確かにそうだよね。普通の人間には難しいよね」
「うむ! という訳で、頑張ってお仕事こなすのよー」
「わかった」
「一日目なのよー。今日の作戦は、ドラゴンリリーを畑の真ん中らへんにおいてみるのよー」
「ギャウ!」
「「……」」
「効果てきめんなのよ! 動物の気配がどんどん散っていくのよ!」
「ギャゥ……」
「んー 、どしたん? あ、戻ったのよ」
「立ちっぱなしで何もしないから、暇でしょうがないよ!」
「そりゃそうなのよー」
「何日も立ち続けるのはちょっと……」
「そんじゃ次の作戦を考えるのよー」
「二日目なのよー。今日はトナカイがでっかくなって畑の真ん中に立つのよー」
「トナカイの頭の上に乗っていよう。あぁ……大きいトナカイも、もふもふ感は変わらないね」
「「……」」
「なんか、逆に動物たちが寄ってきてない?」
「多分、森の精霊の気配に惹かれて、いろんな動物たちが寄ってきたのよー!」
「だめじゃん! ……ギャウゥゥ!!」
「あー、びっくりしてみんな逃げちゃったのよー」
「ギャウッ! ……今回の仕事は畑を守らないといけないんだから、寄ってきちゃだめでしょ!」
「そういえばそうだったのよー。うっかりしてたのよー」
「もうっ……」
「最終日なのよー。よく考えたら、根本的な問題を解決しないとだめなのよー。追い払っても、しばらくしたらまた寄ってくるから、意味があんまりなかったのよー」
「最初に気づいてよトナカイ!」
「すまなかったのよー。そもそも畑の作物を食べるのは、周りにほかの食べ物がないからなのよ!」
「なるほど」
「というわけで、トナカイの力で食べ物豊富にするのよー! はいリリー、この種をあっちとかそっちにばら撒いてくるのよ!」
「わかった!」
「「……」」
「な、なんだか景色が変わった気がするね?」
「うむ、トナカイ特製の種は、でっかーい木が生えるのよ! いっぱい木の実をつけるから、動物たちも喜ぶのよ!」
「もうこの畑が被害にあうこともなさそうだね。ただ……」
「どしたんリリー?」
「ちょっと、大きすぎない? あの木、私の元の姿くらいの高さがあるよ?」
「んー、ちょっとやりすぎた感は、あるのよー」
「まぁ、特に問題ないよね?」
ある土地に、突如出現した巨大な木。
常に実をつける不思議なその木は、周囲に多大な恩恵をもたらしたそうな。




