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新たな精霊登場

「今日もいい天気なのよー。何かいい事が起こる気がするのよー」

「いい天気だねぇ……誰かがこっちに向かって、走ってくるよ」

「やっと見つけた!」

「ん? リリー、お客様みたいなのよー?」

「トナカイの知り合い?」

「トナカイ、知り合いはそんなにいないのよ……なんだか悲しい気持ちになってきたのよ」

「それ、この前聞いた気がする。トナカイには私がついてるから大丈夫だよ?」

「うむ! リリーとは、ずっと知り合いなのよ!」

「えっ、知り合い止まりなの? ……それは、ちょっと複雑な気持ちになるんだけど」

「むふー、トナカイとリリーはパートナーなのよ!」

「もうっ! トナカイはすぐ私をからかうんだから……」

「ちょっと貴方、どういう事よ! 意を決して、湖から離れて探しにきたのに、別の女を作ってイチャコラしてるなんて!」

「ありゃ? トナカイの知り合いなん?」

「!? 私を忘れるなんてひどい! 私を傷物にしておいて……」

「!? と、トナカイ? どういうこと?」

「トナカイあんまり覚えてないのよ? んー、どこかで会ったことがある気もするのよー」

「本当に忘れたの? 私を強引にねじ込んで、貴方色に染めておいて! 用が済んだら忘れてしまうのね……」

「……トナカイ? ちょっと、お話、しよっか?」

「リリーの目の光が消えてるのよ!? とりあえずその爪はしまうのよぉぉ!」



「「……」」

「トナカイ、なんで首から下、地面に埋まってるん?」

「それでは、今からトナカイの裁判を行います。証人、前へ」

「はい。私は精霊のアクアと申します。彼は……うぅっ」

「有罪」

「いくらなんでも早すぎるのよ!? せめてもう少し事情を確認して欲しいのよ!」

「……それでは、続きをどうぞ」

「はい……ある晴れた日、私はロープに閉じ込められて……あんなことやこんなことをさせられて」

「有罪」

「待つのよ! 言い回しが微妙なのよ! トナカイがあれこれしたわけじゃないのよ!」

「なるほど……もう少し詳しくお願いします」

「はい、以前ロープに封じ込められて、持ち主の命令に従わされていました。人を傷つけたり、物を壊したりさせられて……そんなある日、彼にロープから解き放って頂きました」

「そういえばそんなことがあった気がするのよー」

「ただ、精霊は生まれた場所から出ると存在を維持できないので、ロープから解き放たれた瞬間、消えそうになりました。そのとき、彼に掴まれて無理やりねじ込まれて……彼色に染められて……」

「有罪、極刑」

「だから判断が早すぎるのよぉぉ! あとアクアの言ってる事が色々端折り過ぎなのよ!」

「情状酌量の余地がなさそうだけど……もう少し詳しい説明をお願いします」

「はい、消えそうになったとき、頭を掴まれて彼が出した人形にねじ込まれました。人形の中は彼の魔力に満ちていたので、私は何とか存在を維持できたのですが……そのときに彼の魔力が、私に混ざってしまったのです。もうこれは彼色に染められたと言っても過言ではありません」

「なるほどそうだったんですね……有罪」

「結局有罪なん!?」



「すまなかったのよー。結局トナカイの魔力、残っちゃったのねぇ」

「そうよ! これは貴方に責任を取ってもらわないと!」

「わかったのよ!」

「えっ……トナカイ、責任を取るってまさか」

「頑張ってトナカイの魔力を取り除くのよ!」

「!? い、いやそれは別にいいかなって……」

「「……」」

「アクア、だったっけ? あなたまさかトナカイを……」

「そ、そういう貴女は一体誰なのよ! やけに彼と距離が近いけど」

「さっきまで延々と仲良く裁判してた二人が、急に険悪な感じになったのよ」

「「(トナカイ)(貴方)は黙ってて!」」

「わかったのよ……もうしばらく地面に埋まって大人しくしてるのよぉ。よいしょっと」

「私はリリー、トナカイのパートナーだよ」

「な、何ですって!? 彼のパートナー……」

「トナカイ、そんな所で埋まってないでほら、腕出して」

「えぇ……分かったのよー、はい」

「お揃いの腕輪……くっ、もっと早く動くべきだったわね……」

「私とトナカイの間に入り込む余地はないから、諦めて帰るといいよ」

「そんな簡単に諦めるわけないでしょ! こうなったら、私と勝負しなさい!」

「二人とも落ち着くの「「(トナカイ)(貴方)は黙ってて!」」……トナカイの出る幕がないのよぉ」



 以前トナカイが助けた水の精霊アクアが、トナカイとリリーの前に立ちはだかった。

 リリーとアクアの果てしない戦いが始まろうとしていた。


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