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七夕とトナカイ

「トナカイ、どうしたのそれ?」

「今日はねー、なんか願い事を書いて木に飾る、お祭りの日らしいのよー」

「この時期のお祭りってもしかして、七夕のこと?」

「うむ!」

「七夕ってね、確か短冊にお願い事を書いて、笹に飾るんだったと思うけど」

「うむ! ……えっ? 笹なん?」

「トナカイそれ、もみの木……」

「これに飾ったら、あかんのん?」

「クリスマスに飾る木だよ?それ」

「「……」」

「季節を先取りなのよ!」

「さすがに早すぎるよトナカイ。元あったところに返しておいで」

「わかったのよぉ」



「と、いう訳で持ってきたのよ!」

「大きいね」

「うむ、一番大きいのを選んできたのよ!」

「ちょっと光ってるし」

「うむ、一本だけ光ってたのよ!」

「……せっかくトナカイが頑張って取って来たから、言うのをやめておこうかと思ったけど、やっぱり言うね」

「どしたんリリー?」

「トナカイそれ……竹、だよ?」

「えっ、なんか違うん?」

「うん。トナカイ森の精霊なのに、見分け方知らないの?」

「トナカイの生まれた森、竹とか笹はなかったのよー」

「そうなんだ」

「リリーは物知りなのねぇ。物知リリーなのよ!」

「えへへ、それほどでも……ところでトナカイ、その竹、光ってる節があるじゃない?」

「うむ、あるのよー」

「もしかして、そこにお宝が詰まってたりとかしないかな?」

「ふむふむ、試しに斬ってみるのよ! ていっ!」

「「あっ……」」

「と、トナカイ何とか「トナカイ特製の回復薬を食らうのよ!」……おぉ、治ったみたい」

「ギリギリの所で刃を止めたから、そこまでひどい怪我じゃなかったのよー! それよりなんでこんな所に、ちっこい子が入ってるんかな?」

「不思議だね。この大きさはどう見ても人間じゃないよね。見た目人間の子供だけど」

「うむ、人間よりはるかに、持ってる魔力量が多いのよー」

「そうなんだ。魔物でもなさそうだし……あっ、目を開けた」

「「……」」

「かわいい子なのよー」

「うん、小さくてかわいいね。さっきの後遺症もなさそうでよかった」

「うむ……ん? 空からこっちに、何かが近づいてくるのよー」

「明らかに、こっちに向かって来てるよね?」

「この子が何だか怖がってるみたいなのよ」



「やっと見つけたぞ。姫をこんな所に匿っていたとは……おい、そいつをこちらに渡してもらおうか」

「この子が怖がっているみたいなのよ。とりあえずどちら様なのか自己紹介してもらった後、適性試験と面接をするのよ!」

「チッ……面倒だな。ならば、殺して奪い取るまでだ」

「よくある悪者のセリフなのよ。もう少しアレンジしてどうぞなのよー」

「トナカイ、きっと語彙力がないんだよ。許してあげなよ」

「やかましい! とりあえず死ね!」

「甘いのよ」

「ナイフが頭に刺さっても死なないだと!? まさか残像か!」

「いや、本物なのよ」

「仁王立ちしてないで、ちょっとは避けようよトナカイ……その子が怖がってるよ」

「ふざけやがって……消し飛ばしてくれるわ!」

「すまなかったのよー。はいリリー、パスなのよー」

「ちょっとトナカイ、子供を投げちゃダメだよ……この子、投げられて喜んでるね」

「馬鹿め! 俺が一人だといつ言った!」

「あっ! あかんのよ!」

「焦っても遅い! そこの小娘はもう終わり「死ぬがよい」……何だと!?」

「あちゃー、リリーがやらかしてるのよ……トナカイ特製の回復薬を以下省略なのよ!」

「ついカッとなってやった。後悔はあんまりしていない」

「リリー、簡単に殺めようとしたらあかんのよ? 反省のポーズしたらきっと、落ち着くのよー」

「くっ……厄介な相手のようだ。おい、一旦引くぞ!」

「……帰っていったのよー」

「さっきこの子のことを姫って言ってたし、いきなり襲ってきたから、多分ややこしい状況なんだろうね」

「そうなんねぇ。どうしようねぇ?」

「面倒だけど……このままだとこの子が可哀想だから、少しだけ関わってあげようよ」

「ふむ、わかったのよ!」



「あれから一週間ほど経ったね」

「うむ、驚きの連続だったのよー」

「だったのよー!」

「まさかこの子が、こんなに早く育つとは思わなかったね。不思議だね」

「トナカイと同じくらいの背丈になったのよ!」

「なったのよ!」

「なぜかトナカイの言葉を真似するようになったし」

「むふー、懐かれてる感がすごいのよー」

「すごいのよ!」

「明らかに悪者っぽい人が逃げた後、月の使者? とかいう人が来て、この子の保護を依頼されたけど」

「もうそろそろお迎えに来る頃合いなのよー」

「なのよ!」

「むふー、元気な子なのよ。なでなでしてあげるのよー」

「えへへ、もっとなでなでしてー」

「……トナカイ、私もなでなでして、いいんだよ?」

「リリーも甘えん坊さんなのよー。はい、なでな「なでなでがーど!」……割って入って来たのよー」

「!? ぐぬぬ……どうやらこの子とは、私の場所をかけた戦いをしなければならないらしい」

「リリー、大人気ないのよー……でも、残念ながら時間みたいなのよー」

「「!」」

「姫様、お迎えにあがりました。なんとか対抗勢力を無力化しましたので、もう危険はございません」

「やだ! トナカイとリリーといっしょにいる!」

「元々お迎えが来るまでの約束なのよー。残念だけど、お別れなのよー」

「まだ私とのトナカイ争奪戦が終わってないから、それが終わってからでも……」

「リリーも寂しいのねぇ。また、こっちから会いに行くのよー」

「トナカイ殿、さすがに我らの星までは遠すぎて難しいかと思われますが……」

「問題ないのよー。この子にこれを渡しておけば大丈夫なのよー」

「わぁっ! きれい!」

「トナカイ特製の指輪なのよー。これを持ってたら、どこにいてもトナカイたちが飛んでこれるのよー」

「ありがとうトナカイ! ぜったいすぐきてね!」

「よしよし。元気で暮らすのよー」

「またトナカイと会いに行くから、そのとき決着をつけるからね?」

「うん……トナカイとリリー、ありがとう! 大好きだよ!」


 平和になった月の国へと帰っていった姫君。

 心のどこかで、トナカイの言った事が別れのための嘘であると思っていた姫君が、本当に現れたトナカイたちに驚き、喜ぶのはもう少し先のことである。

ちなみに、七夕は竹でやったそうな。

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