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リリーと玉

「……トナカイ、相談があるの」

「どしたんリリー? 何だか顔色が悪いのよ……今回は何を拾ったのん」

「えーっと……これ。さっき暇つぶしで潜ってたダンジョンの、宝箱に入ってたの」

「ふむ、今回もすごい魔力が込められた玉なのよー」

「やっぱり、そうなんだ」

「うむ。んで、今回は何が憑いてるのん?」

「今回はね、特に何も憑いてないんだけど」

「そうなん?」

「代わりに強力な呪いがかかっているみたいで、どうやっても手から離れないの」

「えっ……」

更にね、持ち主の魔力を吸い取るみたいで、私からどんどん魔力を……ねっ?」

「ねっ? じゃないのよ! それはアカンやつなのよ!?」

「という訳で何とかしてトナカーイ!」

「うむ、ちょっと見てみるのよー、ふむふむ……」

「どう?」

「これは、とーっても面倒なことになってるのよ!」

「そ、そうなの?」

「うむ、リリーの魔力って、すんごく多いのよー」

「いやー、それほどでも……えへへ」

「照れてる場合じゃないのよ! そんで、その玉がリリーの魔力をどんどこ吸い続けて、ものすごい量の魔力を溜め込んでる状態なのよー」

「そうなんだ。それって、だめなの?」

「うむ、このまま魔力を吸い続けたら……」

「ごくり……吸い続けたら?」

「この玉が限界を超えて、パーンってなるのよー」

「えっ、パーンって弾け飛ぶだけ? なーんだ、心配して損した。べつにこれが弾け飛んでも、いいんじゃないの?」

「ちょっ!? 魔力を送ったらアカンのよリリー! パーンってなったら、辺り一帯消し飛ぶのよ!」

「それを早く言ってよトナカイぃぃ!? それ、弾け飛ぶだけ、じゃないじゃん!」

「玉はパーンってなるだけなのよ? ただそのとき、ついでに辺りを消し飛ばすくらいの衝撃波が出るのよ」

「こわっ!? ど、どうしようトナカイ!」

「落ち着くのよリリー! そういう時はいつもの反省ポーズなのよ! この台に乗ってー、片膝上げてー、両手はぴーんと斜めにはいっ!」

「わかった、はいっ!」

「「……」」

「トナカイ? これ、別に反省のポーズじゃなくても、よかったよね?」

「落ち着いたみたいで良かったのよー。そんじゃ、何とかしてみるのよー」

「うん、お願い」



「ぬーん、これは厳しいのよ」

「と、トナカイ? なんだかこの玉、ぷるぷるし出したんだけど……」

「それは、限界が近いってことなのよー。トナカイの目算によるとー、あと数分で、パーンなのよ」

「だめじゃん!? このままじゃ、トナカイまで消し飛ばしちゃう……こうなったら、出来るだけ遠く離れるしか、ない!」

「あっ、リリー待つのよ!」

「来ないでトナカイ! もう、こうするしかっ!」

「もうあんな所まで行っちゃったのよ。こんな時に身体能力の高さを発揮しないで欲しいの、よっと!」

「へぶっ!?」

「足元がお留守なのよ」

「痛いよトナカイ! 顔から地面に着地しちゃったじゃん!」

「リリーはたまに人の話を聞かないから、困ったちゃんなのよ。略して困リリーなのよ!」

「……あれっ? さっきまで持ってた玉がない!?」

「リリーが探しているのは、この金の玉ですか? それとも、銀の玉ですか?」

「魔力が溜まりすぎの玉だよ! あと口調が変わってるよトナカイ!」

「正直者のリリーにはこの、金の玉と銀の玉をあげるのよー」

「ありがとう……ってそうじゃなくて!」

「リリーを転がした時に、こっちに玉が飛んできたのよー」

「トナカイの手に玉が!?」

「多分、トナカイの方が魔力多いから、トナカイに乗り換えたのねー」

「どれだけ欲深い玉なの!? もうパーン寸前でしょ!」

「結果オーライってやつなのよー。これをー、トナカイのチャックにはいっ」

「手から離れるの!?」

「これ、持ち主から離れないってだけで、おてて限定じゃなかったみたいなのよー?」

「そうなんだ」

「トナカイのチャックの中なら時が止まってるから、パーンってなる心配がないのよー」

「なるほど」

「ちなみに、万一パーンってなっても、リリーとかトナカイを消しとばす程じゃないのよ?」

「そうだったんだ……早く言ってよトナカイ!」

「危ないことには変わりないのよ。これはこのまま、トナカイの中にしまっておこうねぇ」



 この、破裂寸前の玉が後に、意外な活躍を見せるのだが、そんなことを当時のトナカイたちが知る由もなかった。


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