冒険者のお仕事 その二
「暑いね、トナカイ」
「そうねぇリリー。火山の中だもんねぇ」
「今回の依頼は……『マグマの中に落ちた剣を取ってきてほしい』だっけ」
「そうなのよー。数日前に、この火山の中で急に発生した強い魔物と、たまたまこの近くにいた冒険者たちが戦ったらしいのよ」
「ふーん、そうなんだ。で、落としたの?」
「そうらしいのよー。なんとか魔物を倒したんけど、その後地面が崩壊しちゃったらしいのよー」
「ここ、かなり大きな穴が開いているけど……その冒険者たちは、大丈夫だったの?」
「残念ながら一人落ちて死んだらしいのよ」
「えっ……急に重い話になったね」
「他のパーティメンバーは必死に逃げて、なんとか無事に帰ってきたらしいのよ。そんで、死んだ冒険者の家族から、形見として剣を取ってきてほしいっていう依頼がきたのよー」
「そっか。早く持って行ってあげないといけないね」
「うむ、さっそく探すのよ!」
「ところでトナカイ、どうやって探すの?」
「えっ」
「……えっ?」
「リリー、ドラゴンやん?」
「うん、ドラゴンだよ?」
「ドラゴンって、マグマに潜ったり泳いだりするのよね?」
「えっ、潜らないし泳がないよ?」
「……えっ? そうなん?」
「誰から聞いたのその情報」
「えーっとねー、この前寄った街で、紙芝居をしてたのよ」
「そうなんだ」
「うむ、そのお話の中で、『マグマの中から恐ろしいドラゴンが姿を現した!』って言ってたのよ!」
「えっ。うん、そうなんだね」
「つまり、ドラゴンはマグマとかへっちゃらなのよ!」
「……トナカイ、それただのおとぎ話だよ。確かに多少マグマを浴びたくらいじゃ死なないけど、熱くてそんなに長いことつかっていられないよ!」
「そうなんねぇ。それは衝撃の事実なのよぉ」
「私がマグマに潜れないってことがわかってもらえたみたいだけど、それじゃこの依頼どうするの?」
「しょうがないから、トナカイが潜ってみるのよー、ほいっと!」
「ええっ!? 大丈夫なのトナカ「あっちゃぁぁ!?」燃えてるよトナカイぃぃ!」
「いやー、思った以上に熱かったのよ!」
「岩が溶けるほどだもんね。もう、無茶しないでよ……」
「すまなかったのよ! よく考えたら、トナカイ森の精霊だから、火はあんまり得意じゃないのよ!」
「うん、というかマグマが得意なのって、あんまりいないと思うよ?」
「困ったのよー、このままじゃ、剣を探せないのよー」
「困ったね」
「こういう時は、仕方ないから創造の力を使うのよー。ほいっ!」
「トナカイ、その棒みたいなもの、何?」
「これはねー、トナカイ特製のおてて付き棒なのよ!」
「おてて付き棒? ほんとだ、手がついてる」
「うむ、これを使って、マグマの中を探るのよ!」
「なるほどー」
「それじゃ早速探すのよー! どれどれー……なんかあったのよ!」
「おー……剣じゃないね。ただの石だね」
「うむ、はずれなのよー。もいっかーい……ほいっ!」
「これは、バケツ? なんでこんな物が……」
「不思議ねぇ。んー……おっ! これは大物なのよ!」
「大物の時点で違……トナカイそれドラゴンだよ!?」
「あー、剣じゃないねぇ」
「マグマの中で過ごすドラゴンなんて、ほんとにいたんだね……」
「びっくりねぇ。それじゃ、改めて探すのよー」
「……トナカイ、このドラゴンが『この前上から落ちてきた人間は、キャッチして山の麓にリリースしといたよ?』だって」
「なんとっ!?」
「もう剣は、いらないかもね?」
「うむ。それじゃさっさと、帰るのよー」
「うん。お邪魔しましたー……えっ?」
「どしたんリリー?」
「このドラゴン、トナカイ特製の棒が欲しいみたい。『背中の痒いところに手が届きそう』だって」
「ええよー。はいどうぞー」
「喜んで持って行ったね。それじゃ、帰ろっか」
「うむ!」
トナカイ達が帰ると、火口に落ちて死亡扱いだった冒険者とその仲間たちが、無事を喜び合っていたそうな。
ちなみにトナカイが釣り上げた石とバケツは、非常に珍しい宝石と魔道具だったが、二人はそれを知る由もなかった。




