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トナカイにお小遣いをあげたら その二

 冒険者となって世界を旅するドラゴン娘リリーと、森の精霊トナカイ。

 面白いものや新たな発見を求めて、今日も旅を続けるのであった。

「リリー、さっきフリーマーケットってところで、おっちゃんからこんなのを買ったのよ!」

「トナカイ、子供みたいにはしゃいでかわいい……こほん、何それ?」

「ここをぽちっと押すとねー、ぴかーって光るのよ!」

「……うん、光ってるね。キラキラして綺麗だけど、それ、何?」

「さらにー、ここをぐいってひねるとー!」

「おー、伸びたね。倍くらいの長さになったね……で、それ、何?」

「あとはねー、えーっと……ここを押すとぴかーって「トナカイ、もしかして、それが何なのか知らずに買ったの?」……うむ、トナカイ、これが何なのか聞いてないのよー」

「トナカイはすぐ無駄遣いするんだから……私がしっかりしないと。で、それいくらだったの?」

「トナカイのお小遣い全部なのよ!」

「ぜ、全部!? この前も似たようなことがあったような……トナカイ、それを売りつけてきた人、今どこにいるか分かる?」

「なんか向こうの方に走っていったのよ! いくらで売ってくれるのか聞こうにも言葉が通じないから、お財布ごと持ってるお金を渡して見せたら、急に用事を思い出したーって言いながらすたたたーって」

「盗られてる! それ、買ったんじゃなくて盗られてるよトナカイ!」

「そうなのねぇ。トナカイ、うっかりしてたのよー」

「トナカイ……ちょっと取り返してくるから、ここで待っていてね」

「わかったのよ! ここで大人しくしてるのよ!」



「これ、どうやって動いてるんかなぁ? ……気になったら、調べるのよ! どれどれー、ふむふむ……ここから魔力を供給してるのねー……ここを、こうしてー、トナカイ特製の部品を創ってー、ここに組み込んでー……」

「はぁ、なんとか取り返せた。トナカイのお財布に、探知機能が付いた魔道具を仕込んでもらっておいて良かった。もっと分かりやすいように、今度は火柱を上げる機能でも付けてもらおうかな……ただいま」

「おかえりなのよー! リリー、そのロープでみのむしみたいになってるおっちゃん、どしたん?」

「つい魔が差してしまったんですー! 命だけはー!」

「トナカイからお財布を盗っていった悪い人。とりあえず捕まえてきたの」

「そうなのねぇ。そんなことより、これを見るのよ!」

「……うん? さっきの光ったり伸びたりする何か?」

「うむ! トナカイがさっき改造したのよ! ここを押すとー……あ、危ないからちょっと下がっててね」

「えっ、危ない?」

「ぽちーっ!」

「……さっきまでそこにあった大岩が消し飛んだね。何それ魔法? 魔法が出るの?」

「光が出る方向と出力をいろいろしたら、こうなったのよ! さらにー、ここをひねるとー!」

「すごい勢いで伸びたね。少し先の木に刺さったみたいだけど、どこまで伸びるの?」

「持つ人が込める魔力量次第なのよー。普通の人だったらたぶん、おうちの屋根くらいまでは伸びると思うのよー」

「トナカイが魔力を込めると?」

「やってみないとわからないけど、たぶんあの山のてっぺんくらいまでは伸びると思うのよ」

「そうなのね。高いところに引っかかったものを取るときに使えるの、かな? 私は飛べるから、いらないけど」

「何よりトナカイが改造したことで、とても頑丈になったのよ! すぐ壊れたら悲しいもんね!」

「うん、やっぱり丈夫なのがいいよね。ところで、結局それ、何なんだろうね?」

「あっ、せっかく持ち主がそこに転がってるんだから、聞けばいいのよ!」

「そういえばそうだった。ねぇ、これ結局何なの……死んでる」

「リリー、それ、多分気を失ってるだけなのよ。仕方がないからここに置いていくのよ」

「ここ、町から少し離れてるけど、近くに魔物はいないから多分大丈夫だね」

「トナカイが岩を消しとばしたあたりから、魔物の気配が色んな方向に散っていったのよ。ちょっとびっくりしたみたいねぇ」

「岩が急に消し飛んだら、たしかに驚くよね……じゃあ、いこっか」

「うむ! きっとこの先に何か面白いことが待っているのよ!」

「あれ、トナカイ? そのよく分からないもの、置いていくの?」

「トナカイ、これ買ってなかったみたいだから、おっちゃんに返すのよー。つい色々改造しちゃったから、お詫びにお金も少し置いていくのよー」

「もう……トナカイがそうしたいならいいけど、そもそもトナカイ、お金盗られた側だからね?」

「トナカイは、過去に囚われないのよ! どんどん前に進むのよー!」



 しばらく経ち男が目を覚ますと、そこに奇妙なぬいぐるみと、見た目にそぐわぬ腕力を持つ少女の姿はなかった。

 だが地面に刺さった、伸びて光る棒状のおもちゃだったものと、自身の体にきつく巻かれたロープが、先ほどの光景が真実であると告げていた。

 人が通りすがるまでの間、男は自身の行いを深く反省した。

 そんな男が、改造されたおもちゃを持ち、町を守る警備隊員として活躍するのは、もう少し先の話。


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