ほろ酔いリリー
「うふふ……トナカイーっ」
「どしたんリリー? なんだかすごく機嫌が良さそうな……お酒の匂いがするのよ?」
「さっきねー、そこの町で買い物してたんだけど、その近くにスイーツの店があったのー」
「ふむふむ、それでー?」
「一番人気のスイーツっていうのを買って食べてみたら、あたまがふわふわーって」
「そのお菓子、どんだけお酒を使ったのよ!?」
「あ、そーだトナカイの分も買ってきたよー。はい、どーぞ」
「むふー、ありがとなのよ! ……これ、そんなにお酒入ってないのよ? リリーはこれで酔ったん?」
「それでねー、そのあと飲み物を買って飲んだら、もーっとふわふわー「多分それなのよー!?」うふふ、トナカイ、元気だねー」
「リリーはお酒を飲むと大胆になるのよ……昔を思い出すのよぉ」
「そんなことよりトナカイぃ……すりすり……」
「リリーがいつにも増して甘えん坊さんなのよぉ」
「えへへ……トナカイってとっても、もふもふだよね」
「うむ、トナカイはもふもふなのよー」
「わたしねー、トナカイのもふもふ、大好きだよー」
「リリーはもふもふが大好きなのねぇ」
「うん。でもねー、もふもふなら何でもいいってわけじゃないんだよっ」
「そうなのねぇ。こだわりがあるのねぇ」
「うん。もふもふでー、トナカイじゃないとだめなのー」
「そうなんねぇ。リリーはトナカイが好きねぇ」
「うん。トナカイ好きー」
「お酒を飲んだリリーは、素直なのねぇ」
「いつも素直だもん。わたし、いつも素直だもん!」
「むふー、そうなんねぇ。それじゃ、お酒を飲んだら甘えんぼさんになるのねぇ」
「うん、ふわふわーってして、トナカイにくっつきたくなるの」
「リリーは割といつもトナカイにくっついてるのよ?」
「いつものと今のはちがうの!」
「そうなん?」
「うん、いつものは『もふもふー』って感じでー、今のは『むぎゅー』って感じなの」
「ふむー? いまいち違いがわからないのよー?」
「もー、トナカイはトナカイなんだからぁ……」
「うむ、トナカイなのよー?」
「いいもん、トナカイなんて知らないんだから……」
「ありゃ、リリーがすねちゃったのよ? 今日のリリーは甘えたりすねたりで、忙しいのねぇ」
「ふーんだ」
「でも、トナカイにくっつくのはやめないのねぇ」
「わたしがトナカイにくっつくのは、いいんだもん」
「そうなんねぇ」
「うー……トナカイおはよう」
「おはようなのよリリー。なんだか顔色がよくないのよ?」
「ちょっと頭が痛くて」
「ふむー、そうなんねぇ。トナカイ特製のお薬をあげるのよー」
「ありがとう。あと、昨日のことなんだけど」
「昨日? あー、リリーってばトナカイにぎゅーっとくっついたまま、寝ちゃったのよー」
「き、記憶がないんでございますの」
「そうなん? そんなこともあろうかと、昨日のリリーの様子をこの魔道具で、ばっちり記録しておいたのよ!」
「ええっ!? いつの間に!」
「むふー、冗談なのよー」
「もうっ! びっくりしたじゃない!」
「本当は冒険者ギルドから渡されたお仕事用の魔道具が、たまたま動いてただけなのよー」
「あんな姿を記録されてたら恥ずかしくて……えっ? それって」
「うむ、記録自体はばっちりなのよー!」
「トナカイそれ消してぇぇ!」
「むふー、トナカイを捕まえられたら考えてあげるのよー」
「いやぁぁぁ!!」
酔ったリリーの恥ずかしい記録は、元の姿に戻ったドラゴンリリーのブレスによって、無事この世から消し去られた。
ちなみにこの後、備品紛失で冒険者ギルドにこってり絞られた二人であった。