トナカイの武器
「ねぇトナカイ?」
「どしたんリリー?」
「トナカイが戦う時に使ってる棒なんだけど」
「ふむ? トナカイの棒がどしたん?」
「ちょっと見せてほしいの」
「ええよ。はい、どうぞー」
「ありがとう! んー、見た感じ普通だね?」
「その棒、じつは高性能なのよ?」
「そうなの? トナカイの強さの秘密が、この棒に……ごくり」
「むふふ……リリーには特別に、棒の秘密を教えてあげるのよー」
「いいの?」
「うむ! ……じつはこの棒ねー」
「うんうん、この棒は?」
「とーっても頑丈なのよ!」
「えっ……そうなんだ。 トナカイって頑丈なもの好きだよね」
「うむ! すぐ壊れたら悲しいもんね!」
「確かにそうだけど……この棒の秘密って、それだけなの?」
「まだあるのよー! あとはねー、この棒は……」
「この棒は?」
「相手に与えるダメージ量を調節できるのよ!」
「おおー、なんだか凄そう!」
「むふー! リリーの暴走を止める時にすごく役立つのよー!」
「うっ……最近はそんなに暴走してないもん」
「後はねー、長さを変えたりもできるのよー」
「いろんな機能が付いているんだね。あれ? これを使ったら動きが早くなるとか、強くなるような機能はないの?」
「ふむ? そんな機能は付いてないのよー」
「戦うトナカイって、ものすごく動きが早いけど……あれはトナカイ自身の早さなんだね。他には武器、持ってないの?」
「ないこともないんけど……実際に使ったことはないのよー」
「何で?」
「使う必要がないのよー。その棒があったら、何とかなるのよー」
「確かにそうかもしれないけど……どんな武器なのか気になる!」
「うーん……まぁいいのよ。少しだけ見せてあげるのよー」
「いいの!?」
「うむ、ほんとに特別なのよー」
「ありがとう!」
「はい、これなのよー」
「これは……槍?」
「うむ、トナカイの武器適性って、ものすごーく偏ってるらしいのよー。剣でも斧でも、使ったらなんでか自分にささるのよねぇ……」
「ほとんどの武器の適性がないって言ってたもんね」
「代わりに棒と槍はとっても得意なのよ!」
「そうなんだね」
「でもねー、振り回して当たったらアカンことになるから、使わないのよー」
「トナカイ、優しいもんね。戦ってもほとんど相手を傷つけないよね」
「傷つけても傷つけられても、全然楽しくないのよ?」
「うん、それはよく知ってる。トナカイに出会うまでは私……」
「よしよし……リリーはトナカイがいるから、もう辛い思いはさせないのよー」
「うん、トナカイ……」
「リリー……」
「「……」」
「リリー、どさくさに紛れてトナカイもふもふしてるの、バレてるのよ?」
「て、てへっ」
せっかくのいい雰囲気も、自ら壊してしまう残念なリリーであった。