リリーのおしゃれ
「ねぇ、トナカイ」
「どしたんリリー? 遊んでほしいん?」
「いや、そうじゃないけど……なんて言うか、何か気づかない?」
「んー? なんかあったん?」
「いや、何もないけど……」
「んー? そうなん? なんかソワソワしてるけど、何もないん?」
「うーん、何もないことも、うー……」
「今日のリリーはなんだか歯切れが悪いのよー」
「うー……やっぱりなんでもない」
「ふむ? あっそういえば」
「なになに!? 何か気づいた?」
「今日のお昼ごはんはリリーが好きなお肉料理にする予定なのよ!」
「やったー! 楽しみだなー……それだけ?」
「うむ、だからお肉を買いに行くのよ!」
「うん……わかった」
「なんだか元気がないのよ? 大丈夫なん?」
「うん、気にしないで」
「むふー、今日はいいお肉をたくさん買えたのよ! トナカイの腕がなるのよ!」
「うん……よかったね」
「リリーにおいしいご飯を作ってあげるのよ!」
「うれしいなー」
「……あっ、ところでリリー、気になってんけど」
「! なに!? 何かに気づいたの!?」
「うむ、そういえばリリーの、味付けの好みを聞いてなかったことに気づいたのよ! 濃い味と薄味、どっちが好みなん?」
「……どっちでもいい」
「そ、そうなん? じゃぁ、どっちも作るのよ!」
「うん……」
「あ、トナカイ少し寄るところがあるから、先に宿に戻っておいてほしいのよー」
「うん、わかった」
「はぁ……やっぱり、トナカイはトナカイだもんね。気付かなくても、しょうがないよね……」
「ただいまなーのよー」
「おかえりトナカイ」
「ん? リリー、ちょっと」
「! 何!?」
「髪に……」
「!! 私の髪がどうかしたのっ!?」
「蜘蛛の巣がついてるのよー。取ってあげるのよ!」
「えっ……うん、ありがとう」
「どこでついたんかな? 不思議ねー」
「うん、そうだね……ところで、何か気付かなかった?」
「んー? なんかあったん?」
「……何でもないもん。別にいいんだもん」
「ふむー? 今日のリリーはご機嫌ななめさんなのねぇ」
「そんなことないもん」
「おなか一杯なのよー」
「うん、おいしかった」
「今日もトナカイ、頑張って作ったのよぉ」
「……トナカイ、私を見て何か気付かない?」
「ふむ? そういえば、今日はあんまり元気がないのよー」
「うん……やっぱり何でもない。もう寝るね?」
「うむ、おやすみなのよー……あっ、そうだ」
「何?」
「リリーにこれをあげるのよー」
「これは……?」
トナカイ特製の髪留めなのよー! 二つあるから、今日みたいな髪型にも使えると思うのよ!」
「!? トナカイ、私の髪型がいつもと違うことに気付いてたの?」
「いつも後ろで一つにまとめてた髪が、今日は左右に分けてまとめられているのよ! リリーはオシャレさんなのよー」
「そっか、気付いてくれてたんだ……もうっ、もっと早く言ってくれればよかったのに」
「それはすまなかったのよ!」
「気付いてくれてたから、許してあげる。あと髪留め、ありがとう! 大事にするね!」
しばらくの間リリーは、トナカイからもらった髪留めを使って、様々な髪型にチャレンジした。