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トナカイの罠

「ん? この穴何だろう」

「あっ、リリー! 丁度いいところに!」

「トナカイだ! よいしょっと」

「あーっ!? 何でナチュラルに降りて来たん!?」

「えっ……何でだろう? 気付いたら降りてた」

「ありゃー、無意識ならしょうがないのよー」

「で、トナカイなんでこんな所に……って、落とし穴にはまったんだよね。トナカイ、うっかりさんなんだから」

「うむ、半分正解で、半分ハズレなのよ!」

「ん? どういう事?」

「じつは……この落とし穴、トナカイが作ったのよ! だからうっかり落とし穴にはまった訳じゃないのよ!」

「……えっ? なんで自分の落とし穴にはまってるの?」

「それはねー……話すと長くなるんけど、ええのん?」

「いいよ、私別に急いでないから」

「それじゃ、最初から話すのよー。トナカイねー、この前のダンジョンで、落とし穴にはまったのよー」

「うん、一緒に行ってたからよく知ってる」

「でねー、そのときふと思ったのよー。トナカイも落とし穴作ろうって」

「んー、なんでその発想に至ったのかよく分からないけど、トナカイだもんね。続けてどうぞ」

「うむ、そんで、落とし穴をさっき作ってたのよ!」

「ふむふむ」

「で、せっかくだから創造の力でもっとすごい落とし穴にしようと思って、色々やったのよ!」

「……なんだか嫌な予感がするけど、一応最後まで聞くね」

「簡単に出られないように、穴の表面をつるっつるにしてー、魔法を妨害する魔道具を仕込んでー、二時間に一回おやつが出るようにしたのよ! あ、ちなみにこのおやつは腐ったりしない優れものなのよ!」

「うん、色々おかしいね。なんでお菓子を出すようにしたの……それは置いておくとして、要するに、脱出するのがとても難しいって事なのね」

「うむ、さすがリリー、賢いのよ! でねー、穴の中で作業してたら、出られなくなったのよー」

「そうなんだ。そっか、穴の中で表面をツルツルにして、魔法を使えないようにしたから、登る手段を失ったのね」

「うむ、頑張ったら壊せると思うけど、せっかく作ったのにすぐ壊すのも、もったいないなーって思うのよー」

「ふむふむ、確かに少しもったいないかも?」

「でしょー?」

「……せいっ!」

「ちょっ、リリー!? さっきもったいないねーって話してたのに、何で壊そうとするのよ!?」

「えっ? だって、出られなかったら困るし」

「確かにそうなんけど……しょうがないのよ、諦めるのよぉ」

「そいっ! あれ……トナカイ?」

「どしたんリリー?」

「この壁というか穴の表面、ものすごく頑丈で、私の力では壊せそうにないんだけど」

「そうなん? さすがトナカイ、安心の堅牢性なのよ!」

「だめじゃん! 今回ばかりはその堅牢性が仇になってるよ!」

「そうねぇ。まさかの事態ねぇ」

「んー、どうしょう……地上までトナカイ二十体分くらいの高さがあるから、ジャンプで抜けるのは無理そうだし……」

「頑張って深ーくしたのよ!」

「そのおかげで、脱出手段がなくて困ってるの!」

「すまなかったのよぉ……トナカイやりすぎたのよぉ」

「うーん、実はさっきから翼を出そうと頑張ってるんだけど、うまくいかないんだよね。これも、魔法を妨害する魔道具のせい?」

「うむ、リリーの首輪は創造の力で作ったけど、動力は確か魔力なのよ!」

「うーん、困ったなぁ……あ、そうだ!」

「どしたんリリー? 何かいいこと思いついたん?」

「私がトナカイを穴の外に放り投げて脱出すればいいんじゃないかな!」

「なるほど! それじゃ、早速やってみるのよ!」

「トナカイを抱えて……もふもふ……はふぅ」

「リリー? 別にもふもふしてもええんけど、ここから出る試みも頑張ってほしいのよ?」

「……ハッ!? 無意識にもふもふしてた。恐るべしとなもふ」

「前も言った気がするけど、それ多分リリーだけなのよ?」

「こほん、それでは改めて……いっけえぇぇ!!」

「おおっ! これなら届くかも……あー、ちょっと角度がわるかったのよーぉうふっ!」

「あぁっ! トナカイごめーん! すごい勢いで側面にぶつかっちゃった」

「気にしなくていいのよー、もう一度チャレンジよ!」



「「……」」

「と、トナカイ大丈夫?」

「うーん、若干目がまわってるのよぉ……」

「トナカイ投げ、意外と難しい……」

「そもそもトナカイ、投げるためのものじゃないもんね!」

「でも、コツをつかんだ気がする。次は成功させるよ!」

「リリーって、割と器用だと思うのよ。それじゃ、頑張るのよ!」

「うん! このトナカイ、地上に届けっ!」

「おおっ!一直線に地上を目指して飛んで行ってるのよ!」

「「やったー!」」

「久方ぶりの地上なのよ! あとは華麗に着地してリリーを救助するだけなのよぉぉ」

「トナカイに、もう落とし穴とか作らないように言っておかなきゃ……」

「……あの、リリーさん?」

「どうしたのトナカイ、何だか口調が変わってるよ?」

「すんごく言いづらいんけど……さっきまでリリーと過ごしてた落とし穴の隣にも、落とし穴掘ってたのよ」

「ま、まさか……」

「うむ、隣の落とし穴に着地しちゃったのよ!」

「何やってるのトナカイィィ!!」



 幸いにも、トナカイがはまった落とし穴は改造前だったため、なんとか無事に脱出できた。

 その後リリーからトナカイに、落とし穴禁止令が敷かれたのであった。

 ちなみに、トナカイの落とし穴が、長年放置されている間に少しずつお菓子を貯めていき、ある家族の食糧難を救うのは、また、別の話。


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