40.森林大陸出発
「本当に、ありがとうございます!」
「ありがとうございます、妹を助けてくれて!」
俺は二人に頭を下げられ、少し困惑している。
向こうで大の大人に頭を下げられたことなんかなかったし。
「気にしないでください、こちらも取引として解呪ポーション(最上)をいくつかいただきましたから」
最初は妹さんの分一本だけ残してあと出来た分すべて渡そうとしてきたからな。
そりゃ全力でお返ししたよ。
「そうですか。ところで勇者様はこの後はいったいどちらに行かれるご予定で?」
「先にこのポーションを必要としている知り合いの元に届けようと思います。それからはまだ未定ですね」
「そうですか。それなら次は獣大陸に行ってみてはどうでしょう」
「獣大陸ですか?」
「はい。実は三か月前にこの街に魔物の軍勢が押し寄せてきたのです。ですがたまたまこの街に来ていた方がそれをたった一人で追い返してしまいました」
魔物の軍勢をたった一人で、か。
まさかそこまでの人物がこの街にいたとは。
世界は広いな。
「その方が次は獣大陸に向かうとおっしゃっていたのです。今もまだいるかは分かりませんけどまだ行ってないようでしたら行ってみるのもいいかと思います」
「ありがとうございます。では次はそこに行ってみます。ポーションの件、ありがとうございました」
宿に戻ってくるなり俺は布団に突っ伏した。その上にいた物体を床に落として。
「――――いったっ!?」
あー体が重い。
まず最初っからがおかしいんだよ。
「お前、何故俺についてきた。はっきり言わなくても邪魔なんだが」
「何するんですかこの泥棒!あなたが私の部屋を奪ったりするからです。というか何であなた人間の男になってるんですか!最初あったときは確かに女エルフだったはずなんですけど!?」
「夢だ。悪夢だ。黒歴史だ。忘れろ。忘れなければ貴様の千割を殺す」
「千割ってオーバーキルが過ぎる!」
全くうるさい奴だ。
さっさと魔王城に帰ってゆっくり休みたい。
もしこいつがそこまでついてきたらハウラルに押し付けよう。ハウラルまじ便利。
「それでお前マジ何なの。迷惑だから帰ってくれ」
「いやです。というか無理です。あなたが精霊神であるうちは」
「だから俺についてくるって?」
「そうですよ」
「じゃあさっさと寝かせてくれ。それと明日の十二時の馬車でこの街出て帰るから」
そう言うと俺はベッドの上で寝た。
目が覚めると目の前が真っ暗だった。
どうやら転生――したわけじゃない。というかなんだこれ。
何か柔らかいものが頭の上に載っていて、重い。
《魔力操作》で目の前の何かに運動エネルギーを加え横に押す。
それは勢いよく転がっていき、床へとヘッドダイブした。
「――――いったっ!?」
それ昨日も聞いた。
「あなた何するんですか!?こんなか弱い乙女に!」
「自分を女神と呼ぶ奴は乙女だとしてもか弱くは無い。さっさと準備してくれ、後……二時間だ」
「そんなこと言ってるあなたはどうなんですか。見たところ何も持っていないようですけど」
「そんなことは無い。ただ《異次元空間》にほとんどしまってるから持ち物がないだけだ」
「分かりました急ぎますから待ってください!」
そうして俺たちがつく頃には行きでもお世話になった御者の魔族の男が俺たちを待っていた。
「すまないな。待たせたか?」
「いやいや、まだ待ち合わせまで時間はたっぷりありますよ」
「そうか。それは良かった」
どうやら待ち合わせには間に合ったようだ。
やはり他人に合わせて動くのは身に合わないな。
「そいつはお連れさんですかい」
「まあ、そんなところだ」
「まあこちらとしてはしっかりと護衛してくれればそれでいいんですけどね」
「大丈夫だ。いざとなったらこいつを餌にする。それなりにタフだしちゃんと帰ってくるだろう」
「ちょっとそれ酷くないですか!?」
全く、行きは間違いなく楽しかったはずなのにこいつがいるだけでここまでテンションが落ちるとは。
もしかしてこいつ悪魔なのか。神の名を騙る悪魔なのだろうか。
そうしている内に時刻となり、相乗り馬車が出発する。
「では帰りますよ。我が魔大陸へ!」
「へえ、魔大陸――って、魔大陸ってあの魔大陸!?」
「どの魔大陸かは知らないが、これから行くのは魔王城のある魔大陸だぞ」
「うそですよね!魔大陸ってあれですよ!神と同等のレベルの生き物が二桁も住んでいる!」
「へー知らなかった。ちなみに俺たちがこれから行くのは魔王城だから」
「ファ!?」
そうして俺たちの乗った相乗り馬車は魔大陸へと進んでいく。
これにて四章、終幕です。
おかしい、当初のヒロインはメイリッサのはずだったのに……。
次回は幕間をはさんで五章に入ろうと思います。
幕間って書くの苦手なんだよなぁ。




