助手、ぐだくだ言ってないで世界を救ってこい
「異世界転生。とは、つまるところ前世の記憶を受け継いだまま別世界で第二の人生をチートするというご都合主義糞ジャンルである」
「異世界転生小説で賞を取った人の発言ではありませんね先生」
「世に数えきれぬ程に出回っておる異世界転生モノ……その多様さたるや、正に千差万別よ」
「人気のジャンルだからこそ、オリジナリティが求められますからね」
「だが、千の作者、万の作品があれど必ず共通するものがあるのだ」
「共通、ですか」
「『主人公』がいて『他者』がいるということだ」
「それは……まあ、異世界モノに限った話ではありませんが…そうですね。そうでなければ、作品として成り立たないでしょう」
「この『他者』とは、『会話、意思共有が可能な生物』であり、必ずしも人である必要はない。むしろ、純粋な人間であるケースのほうが少数であろうな」
「舞台は『異世界』ですからね。導入の重要なファクターとして、亜人や精霊を『他者』として登場させるのは珍しくない手法です」
「それを踏まえて考えるが、この場合『主人公』は我輩(と、おまけの助手)。文句はない。ナイスキャステイングである。問題は『他者』だが」
一息。
「……………いると思うか?我輩達以外が。この世界に」
砂塵。砂丘。蒼空。残骸。
其れが視界に移る全てである。
白楼たる砂の雪原は絶えることなく。舞い上がる砂塵と、飄々とした風だけが耳朶を打つ。