助手、ぐだぐだ言ってないで世界を救ってこい
「我輩は異世界転生ものが大嫌いである。
なにが転生。なにがニューゲームだ。バカめ。
たとえやり直したところで
たとえ世界を救ったところで
たとえ理想のハーレムを作り上げたところで
ナニを成そうが徹頭徹尾、皿まで喰ろうても貫徹、逃避に過ぎぬ。
世界から逃げ出した。ただ笑顔なだけの哀れな逃亡者である。
失笑。
やり直したいなどと考えるなバカめ。貴様の世界だろうが」
不遜にして不敬にして不躾。それが『先生』の第一印象だった。
庭で焚かれた橙色の火中、火の粉を吐き出しながら破ぜていくのは一冊の真新しい文庫本。
色彩豊かな表紙は無惨に黒ずみ、丹精吐き出して綴られた頁は灰片となり宙に舞う。
自らの受賞作を『駄作』と焼き捨てる先生は、唖然と立ち尽くす木偶の坊に向き直り、語りかける。且つ、圧制的に嗤う。
「カカッ、貴様が我輩の担当編集者か。ふむ、いまいち冴えぬ………………しかしまぁ、初めての『助手』だ。文句は言うまい」
最初から求めるのはエゴであろう。と、俺を置き去りにして勝手に納得する『先生』は
「我輩は、四ノ宮な…あぁ、こっちのほうがよいか?」
不遜にして不敬にして不躾。とどのつまり
「我輩は明智 桃禍ッ!!弱冠14才にして、文学賞の金賞を頂戴した神天才よ!」
凄まじく尊大で
「ーー助手よ。我輩を支えることを赦そう。誠心誠意、その無駄な躯をすり減らすがよいわ」
糞生意気な美少女だった。