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二代目 つなげればなんだかおいしそうかもしれない

 おしむらくも逝ってしまった、故ウィンナーの志を継ぐキャラクターが完成した。お前の事は忘れない!

 今度はちゃんと服を来ているタイプのイカしたやつだ。髪の毛は無いが、獣耳もついていない。ハゲは関係ないでしょ! 蒸れるんだから仕方ないでしょ!

 これで、ドラゴンも文句はなかろうというものだ。

 きっとあれだよ、ドラゴンはふんどしが嫌いだったに違いない。全く、ドラゴンはわがままなやつだ。


 キャラ作成をしていて時間がたったせいか、僕はいくぶん穏やかな気持ちになっていた。

 これなら、最初のように全てを捨てて爆走することもなかろうたい、というものだ。

 では新しい僕、『あらびき』で行きます。


 意識が落ちていく感覚。

 ゲームだけでなく、フルダイブすると味わうことになれこれには、いつになっても慣れない。


 意識が戻ると、そこは故ウィンナーだったころに見た初期地点。

 町の中心付近だろう、噴水の前である。


 サイドチェスト。


 幾分冷静になった僕は、今度は町中を歩こうかと考える。いきなり外を見たいからと爆走したのも、今では反省点になる。

 どういうふうに移動しようか。

 考えながらも、改めて思う。やっぱりやたらとリアルである。

 水の感触も心地よい。冷たさもいい塩梅で、これがデータであるなど、信じられないほどのクオリティである。

 やっぱりいろいろ法的にぶっちぎっている気がする。これ、インしすぎるとリアルに影響が出てしまうレベルなんじゃないだろうか……?


 ダブルバイセップス・フロント。


 それでも、やっぱりそこは僕が考えるべきことではないのだろう。

 問題があろうが、僕は僕で、楽しんでやるだけだ。そう決めたはずだ。


「うわー……何あの人、ぶっ飛んでるわ……」


「なかなかのレベルだ」


「死にすぎて壊れてしまったかもしれないな……」


「焼き肉食べたい」


 改めてこのゲームを楽しむことを決めていると、なんだか見られているような気がする。


 あ、目があった。奇遇ですねこんにちは。


 サイドトライセップス。


「ぶふっ」


 何故か吹き出された。何故だろうか。

 まぁ、このままでいても仕方がない。

 適当に歩きまわってみるという方向で行こう。まずは北から回ろうか。


 そう結論づけて、とりあえず僕は噴水から出て、張り付く上着を脱ぎ捨てた。

 子供服サイズは失敗だった。さすがにリアルすぎて締め付けがキツイのだ。それでも破れないのだから、大したやつである。

 まぁ、もともと小さすぎて胸筋にのっかてるだけみたいな状態だったもんな。

 下も短パンが食い込みすぎている。脱ぐに限る。ああ、結局ふんどしスタイルに。ドラゴンがいないし、別にいいかな。外に出るときまた着れば。


 細かいことはさておき。

 さぁ、情報を集めよう。

 まずは、この町に何があるか把握していこう。



 これからあらびきの冒険が幕を開けることになる。




 そう思っていた時期が、僕にもあった。


 毎度!

 キャラ作成および選択空間だよ!

 と、憤慨を表すためにくるくると回りながらジャンプしてみる。


 なんでだろうか。

 何がいけなかったんだろうか。


 僕は何をどこで間違えてしまったのだろう。

 人間は間違えてばかりだ。

 いつだって、人生は理不尽な選択を迫る。

 いつだって、人間はその価値観によって争う。

 少しだけ、ほんの少しだけ譲りあう精神とひと握りの優しさを持てば、世界はもっと平和になるのに。


 何が言いたいかといえば。


「逮捕されるとか、おかしいと思います」


 ということだ。

 しかし、死亡理由がいまいち理解できなかったので、ログを確認する。


 ※ 貴方は獄中死しました。

 ※ 警備兵ジャスティン『うわー……ないわー……』

 ※ 警備兵2(アイリーン)『変態死すべし』


 どういうこったよ。

 百歩譲って、捕まるまではいい。良くないけど、良いっていうことにしておく。大人の男には余裕というものが必要である。僕学生だけども。


 でも、そのまま死亡っていうのはどういうことなの?


 牢屋に入れられ、しばらく放置された、と思ったらこの状態だ。

 どうやって死んだのかもわからない。死んでしまったのか、あらびきよ。僕の知らぬ間に。

 警備兵2の発言からすると、警備兵2に殺されたのかもしれない。

 それでいいのか警備兵。それが事実なら、警備兵2のアイリーンは降格処分でも受けるが良い。そんなことするから2なんだよ。お前には一生二番手であるように呪いをかけてやる、今。呪われよ、呪われよアイリーン。


 本当に死亡理由がわからない。

 一体、何がいけなかったというのだろうか。

 サイズの合わない服を着用していたことか?

 それとも、どこを見ているのかわからない目に、ベロンと心なしか湿った舌がタレているイカした馬マスクがいけなかったのか?

 筋肉が嫌いな警備兵だったのか?

 腕毛にすね毛に全ての毛をなしにして、更に表面がテカテカに見えるようにしたのが悪かったのか?


 だって、キャラ作成で全部選択できるものなんだよ?


 もしかして、噴水の中でポージングしていたのが悪かったのだろうか……

 筋肉は正義のはずだ。水も滴るいい筋肉だったはずだ。水面から生える筋肉、それはまるで水の筋肉精霊。貴方の落としたのはこちらの上腕二頭筋ですか? 正直者にはこのたくましい金のプロテインをプレゼント!


 いや、待て。噴水ポージングが致命的な原因ではないかもしれない。前回のことを考えると、服を脱ぎ捨てたというのが悪かったのかもしれない。

 服は脱ぎ捨てるもの。その思考こそが罠だったのかもしれない。でも、ふんどしは履いていたよ?

 世界は肌色に厳しい。

 それは、『レッツゴー異世界』でも同じなのかもしれない。


 おかしいなぁ。他のゲームでは捕まらなかったんだけどなぁ。

 笑顔も忘れなかったというのに。あぁ、マスクつけてたから笑顔は見えなかったか……



 お墓が二つになってしまった。

 ごめんよ、ごめんよ、あらびき。

 僕は君を生かしてあげられなかった。

 力のない僕を、どうか許して欲しい。


 それにしても、古参プレイヤーってお墓だらけなんじゃないだろうか……

 むしろ墓地でしょうか。今回初めて気がついたけど、お墓が洋風とか和風とかいろいろ選択できる。そんなケアは必要ない。もっと別のところに力をいれるべきだろう。


 お墓を見ていると、気分が落ち込む。

 ああ、そういえば、お墓の方のメッセージを見れば、死亡理由はわかりやすいのかも。


『死ねば、人生は終わりである。

 あらびき ここに眠る。


 ☓☓☓☓年☓月☓日 獄中にてアイリーンから毒を受け、死亡』


 アイリィィィィン!

 やはり貴様だったか!

 警備兵が! 毒なんぞ! 使ってんじゃあねぇ!


 苦しむ間もなく死亡するって、どういうレベルの毒だよ……なんでそんなもの持ってたんだアイリーン……そんなに筋肉がニクかったのか……呪いは正解だった。呪われよ、呪われて毛という毛がメートル単位で伸びよ。もじゃってなってもじょってなればいいんだ、アイリーンなんか。

 気を取り直したいところだが、ああ、そうか……またキャラ作成から、か……

 どういうキャラ作成をするべきだろうか。

 どんなゲームなのか、二回もインしたのに全くわからない。


 ドラゴンがいるのはわかった。そこはさすがにファンタジーシミュレーションというだけある。姿は見てないんだけども。

 あと、今回は他の人も見ることができた。ウィンナー時も見ていたはずだが覚えていない、不思議だ。

 武器が存在するのを確認した。

 鎧を来ていた人もいた。

 やっぱり、キャラ作り直し以外は既存のVRMMORPGに近いのだろうか……?

 いや、既存のVRMMORPGの兵士の皆さんは、捕まえた奴とはいえ毒を流したりしないはずだが。


 あんなに五感再現されていると、体感できる時間、死ぬレベルの怪我なりをすると確実に現実に影響が出る気がするのだが……身体能力も異常すぎれば、また影響は大きいはずだ……そのための五感制限なのだし。

 そのへんは、これから試してみるしか無い。

 今の処、自己診断ではあるが、焼かれたことの影響も毒の影響も出ていない。まぁ、感じる前に死亡したから参考にはならないか、これは。


 とりあえず、三度目は極端マッチョ系は控えるべきなのだろうな。正義は死んだ。

 あと、テンションを上げるのもよくない。テンションを上げるための行動も抑え気味にするべき。捕まるから。

 よくよく戒めることが必要だ。注意一秒キャラ一消(一気に消滅)である。

 おもしろそうなキャラ素材があっても手を出さないことも気をつけねば。

 またドラゴンやアイリーンに殺されるような愚は、さすがに控えたい。

 ゲームを始めた頃の初心に帰るべきだ。

 普通にプレイすることが飽きだしてから、どうにもキャラがおかしくなってきている気がする。気のせいかもしれないけれども。


「そうか、そうだな。溶け込むことが必要なんだ」


 一人で喋っていると物悲しい空気になる。


 はやく中で喋れる人をつくろう。それがいい。

 ちょっと個性を消し、僕は溶けこんでみせる。

主人公が初めてしゃべったセリフ

「逮捕されるとか、おかしいと思います」


主人公力ちからがたりない。

そしてサイドトライセップスはなんだかちょっとかわいさを覚える。

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