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初代 わかりにくい始まり

※ 超展開とかそりゃねーわ展開、設定がある可能性が大いにあります。


 視界が綺麗だと思える赤色に染まる。見ていられるのは短い時間だったが、ああ、きっとこれは炎なのだと――



 僕の意識は、自分の体が骨まで燃やされるのを感じるまでもなく消えていった。

 感じたことといえば、『あっ、やばっ! 熱っ!』くらいである。これは、油がハネたくらいの衝撃だった。その程度しか感じられなかったことは、きっと幸いであると信じる。全身に油ってキツイ、その事実は考えないことにしよう。

 じわじわ焼かれるのを、死ぬまで感じ取るよりもよほどいい。

 ヴァーチャルリアリティとはいえ、痛いのが続くのはごめんなのだ。

 痛いのが嫌、その考え方は多くの人に賛同してもらえるに違いない。

 イタイの嫌い党とか作ればきっと党員はこぞって増えるに違いない。




 僕が今やっているのは『ファンタジー世界シミュレーション チュートリアル版』と銘打たれたVRMMOである。

 その名も『レッツゴー異世界』である。ふざけている。明らかにふざけている。銘打ちかたもふざけているし、名前もふざけている。なんだ、なんなんだ。

 確かに、この死に具合は異世界かもしれないが。


 理不尽だとは聞いていた。

 一時期、リアルでも掲示板でも騒がれていたから。詳しい内容は無く、ただ理不尽理不尽ギャースカドンと騒がれていたから。騒がれるのは騒がれていたが、不自然にある程度まで騒がれると、沈静化からのまた騒がれる、というパターンが繰り返されるようになっていたが。最悪までは加熱しないが、氷のように冷めはしない。まるでバランスをとっているかのよう。


 誰かが操作しているかはおいておいても、そうやって名前だけは聞いていたから。

 難しいのかな、くらいは思っていた。


 でも、始めて、とりえあず外が見てみたいと町を出た瞬間に死亡するとは思わないだろうが……!

 戦闘? してないよ! 


 そうして、恐らくとはいえ死んだはずなのだが、なぜだかログイン時のキャラ選択空間に戻ってきている。死ぬたびにいちいちキャラ選択するような仕様なのだろうか。


 疑問に思いながらも、表示されていたログを見て、苛立ちは更に高まった。


 ※ 貴方は通りすがり(空)のドラゴンから放たれたブレスに焼き殺されて塵になりました。

 ※ 赤ドラゴン『見た目が気に入らなかった。今は反省している。けど、またやっちゃうかもしれない。そんな俺を許してくれとは言わない。反省しつつ、しかし許しを請わない俺、かっこいい』



 ファック! このトカゲ野郎!

 酔ってんじゃネーゾ!

 後ろに キリッ とかつきそうなセリフ吐いてんじゃネーヨ!

 あと、赤ってなんだ。レッドにしなさい、レッドに。統一しなさいよ。じゃなきゃ赤龍にしとけよ。



 という気持ちが全開だ。


 期待していた、理不尽といわれても、やはり期待していたのだ。

 『いろいろあるけど、なれると案外楽しい』と友人のような存在がいっていた。

 『理不尽にすぎることもあるけど、妙な処でゲームっぽいバランスがおもしろい』とか掲示板でかかれていた。

 だから、多少融通が効かないくらいのゲームなんだろうな―と思っていたのだ。

 戦闘が理不尽なら、生産にまわればよかろうたい、とか考えていたというのに。

 戦闘どころの話じゃあない。『きゃはっ!アタチ日焼けしちゃったのぉー!』とかいうレベルの話でもない。

 丸焼け丸焦げどころか塵である。風吹けば消える、そんな儚い存在と化したのだ。


 前もって情報を調べろ、と思うだろうが、ここの運営は気が狂っているとしか思えない情報規制を布いているのである。情報があっても、あんな通りすがりのドラゴンはどうしようもないと思うけども。

 いくら情報技術が昔よりも育っているからって、いや育っているからこそ、ここまでの規制なんて不可能に近いはずなのだが……


 現実に、多少の情報が外にでても、すぐに消されるのだ。深いアングラな部分は僕がいけないのでわからないが、普通に調べることができる範囲では出てこない。


 契約内容に『このシミュレーションで得た情報を、公式掲示板以外で晒すことを禁止する』

 と、いうような部分がある。

 最初は軽く見られていたらしい。むしろ、規約なんて読んでないというやつもいたという話。

 だが、ある日情報まとめ系のページを消されども作り、消されども作りとしていた奴が訴えられた。


 運営は本気だっ……!


 戦慄が走った瞬間である。


 だから、今はどこの掲示板でもなんでも、探り探りで婉曲的でわかりにくい情報しか残らない。

 攻略サイトなんてありゃしない。ネットを介して交換もできない。監視か、監視されているのか。おいこら運営、法を守れ。規約守らせる前に、法を守れ。

 集約すれば、ゲーム自体も内容も集約すれば

 『理不尽』

 この一言しか書けなかったのだ。


 その無駄な技術力を、なんて無駄な方向に発揮しているんだ……!!


 どうやってリアルタイムに調べているって証拠だよ。

 と思わず錯乱してしまうレベルで情報は消されていく。凄い、凄いとは思うが、はてしなく技術は無駄使いにしか見えない。


 それでもリアルでやっている人間がいるなら、直接聞けばいいはずなのだが、何故か『中でやっている奴は新しくやろうとしている奴に詳しく教えない』という流れができているらしい。不自然だよ、全員集合。

 いや、それでも全員というわけじゃないはずだから、前情報を知りつつプレイしている人間もいるのはいるんだろう、もちろん。きっと、多分。そうに違いない。じゃないとジャンルがホラーになりかねないだろう。

 僕は最初、プレイするつもりはなかったのだが、『あの理不尽は体感しておくべき』と友人がいうので、仕方がなくプレイしたのだ。それなら情報くらい渡せといったが、『渡すと理不尽度が下がる』と意味不明なことをいったのでかなりイラッとした。特に、そういったときのドヤ顔が。

 教えてくれる友人が欲しかった。

 しかし、僕にはドヤ顔する友人しかいなかったのだ。


 その結果がこれである。

 ブレスで焼死をプレゼントされた。

 キャラ作成二時間、プレイ時間五分というこのリアルがプレスでマインドがどんどこどん。

 やっていられない……

 とりあえず明日、友人の上履きの中にノリを敷き詰めるという提案が脳内委員会でされ、脳内委員会で満場一致で賛成された。


 さて、苛立ちはするが、これでやめるというのも癪なので、もう一度トライすることにする。

 と、ログを見た後は憤慨の踊りをしながら怒り狂うのに夢中で気が付かなかったが、アバターというか、目の前にあるはずの『もう一人の、BOKU!』こと選択できるはずのプレイキャラクターが見当たらない。


 うん? プレイキャラが消失した?


 何をいっているかわからないと思うが、僕も何が起きているのかわからない。

 プレイキャラが無くなっている。バグだろうか?

 おかしい、キャラクター作成画面になっている。キャラクターは一人しか作れないはずだ。僕の二時間の結晶はいずこへ? どこへ隠れたの?

 あ、見える範囲に何故か墓石らしき物体がある。最初はなかったはずだ。最初から墓石があるゲームなんていやだ。

 しかし……キャラクターが居ないくなって、墓石が追加されている? 嫌な予感がする。嫌な予感しかしない。

 いなくなって、いなくなって? なくなって?

 むしろ、これは亡くなっているというべきなのだろうか。


 え? 死ぬの?

 いや、確かに焼死したけど、そういうことじゃなくて。

 デスペナルティは?

 ペナルティくらって、リスポーンするんじゃないの?


 あ、何やらメッセージが墓石の上に?


 タッチして見る。


 『死ねば、人生は終わりである。

 ウィンナー ここに眠る。


 ☓☓☓☓年☓月☓日 通りすがりのドラゴンにブレスを吐かれて焼死』


 ウィンナー、それは僕のプレイヤーネームだったもの。


 え? 死んだら作り直しですか?

 ローグ気取りか!


 ウィンナーが焼きウィンナーにされてしまった。僕はボイル派だ。



 終わるわけにはいくまい。

 このままでは負けた気がする。

 誰にって、誰にって……誰だろう。

 運営?


 いいや、そう、あの、なんだ、あれだ。


 自分に負けた気がするのだ。

 自分にだけは負けてはいけない……


 よし、いいこと言った気がする。


 さて、反省点を考えよう。

 何故いきなりドラゴンに火を吹かれたのか。

 理由なく確率の可能性もあるが、今回は僕が悪い気がするのも事実だ。

 ドラゴンからのコメント? にもそれが表れている。


 そんなにドラゴンは、モヒカン獣耳半裸マッチョが気に入らなかったのだろうか?


 いや、もしかしたら初期装備に指定できたふんどし一丁の祭り男ルックがいけなかったのかもしれない。

 なんか、周りの視線もおかしかった気がするし。それは、気にしすぎとは思うんだけど、可能性はあるよね。


 ということで、次のキャラはもうちょっと、世間でいうまともだといわれるだろう風につくろう。そうしよう。


 しかし、『ありえない』リアルさだったなぁ。

 五感制限されていない気がする。法をぶっちぎっている気がするんだが……

 いいんだろうか。いいんだろうな。

 実際、こうして潰されていない以上、いいんだろうとしかいいようがない。

 ふんどしの感覚とか、超リアルでしたよ。

 走ると上半身が風を切る感覚も。


 しかし、理不尽連呼されるこんなものが、世間では人気になっているという事実に狂気を感じる。

 ゲームは進化してきた。

 VRという技術も進化してきた。

 機械もなんもかんも進化してきた。

 あれか、いろいろゲームが出すぎて、一周回ってクソゲーが面白くなってきてしまっているのだろうか。

 今のゲーム世代は言うなれば、徹夜開けの妙なハイテンション状態なのだろうか。


 それ、長すぎるときっと冷静になったとき死にたくなるな。


 それでも、僕は僕なりに楽しんでいこう。

 なんだかんだ、僕はこの生まれた時代が好きなのだから。


 そういや、今何年だっけ?

連載してみる。

亀でも頑張る、頑張りたい、頑張れるといいなぁ、とか思いたい。

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